第12話 勝利

異形のバコルは塵となり消えた。

それと同時に月火の髪色も戻った。


「勝った…のか?」

俺は自分の拳を見てそう呟く。

勝った…のか…


「兄さん!!良かった…よかったよぉ!」

陽火は泣いている。


「ごめんな…」

それだけ言い、俺は陽火を抱きしめた。

──帰還──

気づけば元の場所に戻っていた。

…あいつが死んだからか…

同情する気にはなれない。あいつは生を勝手に弄んだのだから。


「あらあら。バコルは死んだのね。」

突然声がした。


「「!?」」

誰だ!?

俺達が見た先には、灰色の髪を後ろに伸ばし、赤色の目でこちらを見ている美女だった。


「…はぁ、奴じゃ貴方には勝てなかったのね。無駄死にじゃない。」

俺はその言い方にカチンと来た。


「……あいつは確かに気に食わなかったしクズだった。だけど…人の死をそんな言い方するのはやめろ!!」

「同情してるの?」

「同情なんかではない!俺はただ…!」

「綺麗事を叫ぶくらい誰でも出来るわ。」

そいつは踵を返しこう言った。


「私達は『闇』よ。」

「…闇?」

「それが私達の組織名よ。貴方気に入ったわ。今この場では殺さないであげる。ちゃんとしたお墓を用意してあげるから。」

そう言って歩いていく。


「っ!待て!!」

俺はすぐに追いかけるが、あの女は消えた。


「闇…だと……」

俺の呟きは、夜の闇に消えていった。


──闇組織本部──

「…まさかバコルが敗れるとは…」

「ふふっ、あの子面白い子ね。」

「貴様ってやつは…まぁいい。我らの使命は、あのお方を復活させること…あまり勝手なことはするな。」

「……御意」

「次はお前が行け。絶対に勝つのだぞ?」

お前と呼ばれた人物は、ニィっと笑い、

「御意」と言い闇に消えた。

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