『おしとやかな文化系少女として高校デビューしたかったあたしは、可憐な先輩女子に惹かれて文芸部に仮入部した。しかしそこに先輩女子の姿はなく、無礼無骨な男子ふたり。これって詐欺じゃない!?』④ 鴫野亜実

 但馬先輩に言われるまでもなく、あたしが書くとしたら一人称しかありえないと思っていた。それが自分のことを書くのに最適だと思っていた。実際、あたしが読んだ多くのラノベが一人称で書かれていたから馴染み深かったのだ。

 こうしてあたしは鴇田とともにそれぞれのいきさつを小説に書きおこしている。途中何度も但馬先輩が覗き込んで何やら一言余計なことを言って煩わしかったが、どうにか完成するところまで来た。

 二日かけての成果がこの「小説」だ。小説と名乗るほどのものではない。しかし我ながら良くできたものだと感心している。さてこれを見て但馬先輩は何と言うだろう。さぞかし高尚なアドバイスをしてくれるに違いない。私は書き終えてわくわくしていた。

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