『僕が文芸部にいるワケ』② 鴇田量也

「文芸部は我が校では伝統ある部活よ。毎年優秀な部員が集まっている。生徒会役員を務める人材も多くいて、先代の生徒会長も文芸部でした。文芸部にいれば誰にも後ろ指差されないわ」

 何これ、何かおかしくない? 脳内もお花畑なの? せっかくの美人が……、と思いつつ、僕は何か断りを入れる文言を考えていた。

「あら、ごめんなさい、ひとりで喋っていたわ。あなた、お名前は?」

鴇田ときたです」

「トキタと読むのね。読めなかったわ」

 槇村先輩は僕の名札をしっかりと見ていた。それほど近寄ってもいないのに視力は良さそうだ。いや、ひょっとしたらはっきりと字が見えていたわけでもないのかもしれない。何かぐちゃぐちゃした塊のような字だとだけ認識していたのかもしれない。

「鴇田君は本はお好き?」

「まあ多少は読みますが」

「どんなジャンルかしら?」

「そんな、大したことないですよ。ラノベとかミステリーとか……」

決して純文学など読みはしない。だから文芸部など僕には合わないのだ。そう言おうとして右手で頭を掻いていたら、槇村先輩は僕の左手をさっと取り上げ両手で握りしめた。


ポーズ


「って、これ、ホントなの?」ノートパソコンの画面から目を離した鴫野が問い詰めるように鴇田を睨んだ。「妄想も大概にしたら良いわ!」

「だから小説だって」鴇田は額に汗をにじませた。

「まあ、良いではないか、次に進もう」但馬が嬉しそうに言い、先を促した。

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