悪癖と苦悶
なくて七癖、あって四十八癖とはよく言ったもので、私はどちらかと言うと後者のクセの強いタイプだと思っている。
しかも、その癖のうちの半分は悪癖だろう。
性格が悪癖に繋がったのか、悪癖が性格になったのかは定かではないが、相関関係の如く性格の癖も強い。
故に、何年も仲良く関係を続けてもらえる人は数えるほどしかいない。
嫌われる事に怯え、良い顔をする癖もある。だが、そんなものが長く続くわけもなく、次第に地が出てくる。そうして、人が離れていく。それは、リアルで顔を合わせない、オンライン上の関係において、如実に現れた。
文面しか見えない関係がいかに難しいか。
文面だけならばある程度繕える。ただし、そこに感情をあまり入れなければの話だ。
当たり障りのない言葉。相手が不快にならなさそうな言葉。相手にとって心地よい言葉。そして、良い感情を持った本心の言葉を僅かに混ぜる。
これを続けた結果、私はあっという間に疲弊した。もう無理だと思った。その頃には、崩れかけていた。手放したくなった。
そうして、ここ、カクヨムにやってきたと言うのに、今度は別の悪癖に苦しむことになった。思考の悪癖。
カクヨムは、小説家としてご飯を食べてる人も、小説家を目指している人も、小説を書くのが好きなだけの人も、小説を読むのが好きなだけの人もごちゃ混ぜだ。それは、素晴らしいと思う。一つのコミュニティだ。
私が作者になれるのは、私が産み出す物語だけ。当然、他の作品の作者にはなり得ない。故に、どうしてこうなったのか、何故こうしたのか、何が言いたいのか、と言った作品に対しての明確なビジョンを私が持つはずがない。
ところが、気になってしまうのだ。それはきっと5歳児よりもタチが悪いだろう。
「なんで? どうして?」
カクヨムは作者と読者の距離が近い。提供する側と享受する側の距離が近いことにはメリットとデメリットがある。これは、別のコミュニティにも言えることであり、私はそれを辛いほどよく知っていた。
それなのにも関わらず、私は作者の近くに行ってしまった。
やらかした。と、純粋に思った。悪癖が出たと。重箱の隅を突くつもりもなく、純粋な疑問。けれども、受け取るのは相手次第だ。
慎重に、慎重にと、コメントも書かないようにしていた。それが、慣れてきた途端に、悪癖の登場だ。
しかも、どうやら私の文章は固く冷たい、もしくは厳しい印象を与えるらしい。内面がよく出ていると喜べば良いのか。当然、誤解もされやすい。だが、不快にさせたなら誤解もなにもない。そこには、顕然たる事実しかない。あいつは、嫌なやつだと。申し訳ないと思うが、謝ることすら迷惑だろう。私が出来るのは、そっと離れることぐらいだ。
愛されることや好かれることが怖い。
嫌われると哀しいけれども、落ち着く。
人を信じることは愚かだと思うのに、信じてみたいと思う。だが、自分を信じることは出来ない。
話をしたい、仲良くなりたいと思っても、どうせ不快にさせるだろうと言う罪悪感。
苦しければ苦しいほど正解だと思い、楽だとズルをしている気持ちになる。
本当に勘弁して欲しい。
そうして行き着く答えは、沈黙こそが金だ。もしくは、適当な会話が最良手。
振られたら曖昧に答えて、程よく相槌を打つ。場が盛り上がる程度の話し方はわかるから、必要であればその役割はこなそう。
ただそれだけ。
こう書いて思うが、やっぱり苦しい。
抜け出せるなら抜け出したい。
大海に手紙を詰めた瓶を流すようなものかも知れない。
それでも、希ってしまうのだ。私は愚かだから。
良い知恵がある方よ、どうか私を助けてください、と。
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