竜王戦 第一局
美しかった。
とにかく美しかった。
誰も追いつけない、二人にしか見えない世界に彼らが居たように見えた。
AIが導入されて、私のようなズブの素人も筋が少しだけ見えるようになった。だからこそ感じる。確かに二人は戦っているけれども、これはAIとの戦いでもあるのではないかと。
パチリと小気味の良い音が鳴る。糸を張り詰めたかのような静寂の中、衣擦れと扇子を開け閉めする乾いた音のみが聞こえてくる。
歩が誇りを持って進んでいく。駆け回ろうとした馬は追い詰められて動きを止められた。
パチリ、パチリと駒を打つ間隔が次第に狭まっていく。
右側に映るAIの評価値がガラリと様変わりした。十五時間半を越える均衡の戦いが、たった数手で崩れる。残り三十秒……二十秒……十秒……と秒読みが始まれば、盤上は目まぐるしく戦況を変えていく。もう、終わりなのか。ずっと見せてくれ。
王と玉が都で向かい合う。
嗚呼、もうすぐ決着が着いてしまう。「一分将棋に入りました」と感情のない声が静かに部屋に響く。永遠に見ていたいとも願っても、それが勝負。
そうして、たった一言、この二日間の激闘の終わりを知らせる言葉が聞こえた。勝利のテロップが流れる。
気付けば、私はテレビの向こうに惜しみない拍手を送っていた。
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竜王戦を視聴していました。
あまりの素晴らしい名局に思わず書いてしまいました。豊島将之竜王、藤井聡太三冠。大変面白い一局をありがとうございました。
次戦も楽しみです。
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