羊頭狗肉

 鈍感力が大事だと、人一倍苦しんでいた彼女。大好きだった。大切だった。

 好きすぎて苦しくなって手を離した。

 いや、手を離されていたのかも知れない。


 十年前に私の一歩先を進んでいた彼女は、今何を思っているのだろう。

 何の経験も積まないまま十年経てしまった私に機会があれば教えてほしい。


 そんな機会があるか分からないけど。


 人の視線は好意ばかりではない。人の視線は銃口だと教えてくれたのは誰だったか。


 銃口を向けられるのが快感だと言う人もいた。私はそうはなれない。


 つらいと苦しいと無気力を噛み締めて生きていると言う人がいるなら、幸せで楽しくて行動力溢れて生きている人もいる。


 どちらも人生の一面なのかも知れない。

 何故生きるのか、未だに私は分からない。

 私の中身は空っぽだ。

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