第77話
「ルージュ、さっきはありがとう」
入学式が終わった後、教室に向かっているとシルビアが笑顔で言ってきた。
「私の事、勇気づけてくれたんでしょう?」
「あ~、はは。タイミング間違えちゃったけどね」
「そんな事ない、嬉しかったわ」
シルビアはそう言って笑顔を向けてくれるが、私はこれからの学園生活を思うと溜息ばかり出てくる。
「まぁ、過ぎた事は仕方ないわ!これからの授業も頑張っていかないとね!」
「ふふふ。そうね!」
クヨクヨしても仕方ない。
変な行動をとってしまった後の気持ちの切り替え。
これもこの数年で身に付いた事だ。
「おい、ルージュ。学園に来た本来の目的…忘れてないよな?」
耳元でサニーがそう言う。
「勿論よ。サニー…もし何か気付いたら遠慮せずにすぐ教えて」
「ああ、分かってる」
私が学園に通う事にした理由は、コイガクの主人公を見つける為なのだ。
そして呪いの事を話して、仲良くなって…
死亡エンドから逃れてみせる!
***
入学式から数日が経過した。
「ぜんっぜん!見つからないわね」
「そうだな。ルージュと同じ呪いなら俺が見て分かるはずなんだけど…」
「そもそも1クラスしか無いのだし、同じクラスにいない時点でどうしたらいいのか分からないわ」
クラスの人数はその年の入学者数で変わる。
私達の年は入学者がそれほど多くは無かった為、1クラスしか無いのだ。
主人公は私と同級生のはずだけど…
何故だか呪いを持つ子はいない。
「クラスの女子全員に話しかけてみようかな…でも30名近くいるのよね」
考えられるとすれば、ゲームとは違って主人公に呪いがかけられていないか
もしくは…そもそもこのクラスにいないという事だ。
「もしかすると学年が違うのかもしれないと思って、お兄様に会いに行くフリをしながら先輩方を観察してはみたけど…」
この国の王子であるオーウェンが入学すると聞いてか、昨年の入学者数がとても多かったのだ。
そのせいで私達の1つ上の先輩方は10クラスもある。
本来であれば私達と同学年のはずの生徒も、オーウェンとお近付きになりたいが為に1学年上に入学した人がたくさんいる。
…まぁ、それを知ったオーウェンが怒ったから不正は出来なくなったけど。
「それでも、そのせいで私達は1クラスしかないのに先輩方は10クラスなんだもの。笑えちゃうわよね」
「10クラス回ってみたけど…それらしき人物はいなかったもんな」
一応サニーと一緒に教室の前を通ったのだが…期待していた結果にはならなかった。
「まぁ、授業中でも無いしその時にいなかった生徒もたくさんいるから余計に分からないのよね…」
「というか、本当に入学してるのか?」
「う…いるはずよ。だって、この学園が舞台なのよ?」
サニーの問いかけに私はそう答えたが、内心ではその可能性も考えていた。
ゲームでは語られなかった事や、ゲームとは違っている事がたくさんあるのだ。
主人公が学園に通っていない可能性。
もしかすると、主人公なんていないという可能性だってあるのだ。
「でも油断は禁物よ!
これで主人公がいたら私の死亡エンドが確実になってくるんだから!」
そう熱く語るが、サニーは納得していないようだった。
「前から言ってるけどさぁ…
もし本当に主人公って奴がいたとして、そのエンディング通りにいったとしてもだぞ?
オーウェンやイッシュやアレンがお前を殺そうとするか?
俺にはどうしても考えられないっていうか…
そのエンディングに関しては選択死の呪いは関係ないんだろ?」
「そうね。呪いじゃなく本当に死ぬんだもの」
「なら余計に考えられないんだよなぁ。
あいつらがお前を殺すって事も、他の奴が殺すってのも…」
サニーの言いたい事はわかる。
私だってお兄様達が私を殺そうとするなんて、信じたくない。
でも…
「何が起こるか分からないじゃない?
用心するに越したことはないのよ」
そう言って私は自分の両頬をパンッと叩いた。
「よし!主人公は学園生活を満喫しながらも探すとしましょう!」
「そうだな」
不安な気持ちは大きいが、私は学園生活を満喫しながら探す事に決めたのだった。
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