第60話

「…それで?ルージュは、何故そんな事を?」


「特に意味はありません。三大貴族と言えど、仲の良いイッシュなら婚約者に出来ないのかなと疑問に思っただけです」


「そうか…さっきも言ったが、やはり三大貴族同士というのは避けたい所だが…」


私の様子が少しおかしい事に気付いた様子のお父様が、恐る恐るという感じでそう言ってきた。


「そうですか。なら、やはり婚約はしません」

「そ、そうか」

「はい。では、今日はもう自室に戻ります」

「え、あ、ああ…」


(え。あと1つ何か話したい事があるって言ってなかった?)

(言ってたな。多分ラウルスもお前が事に気付いて話すのをやめたんだろうな)

(はぁ…呪いが解けたらまたお父様の所に行きましょう)

(そうだな)


そんな会話を心の中でするも、自室に戻るまではずっと体の自由はきかなかった。

結局その日は疲れて、お父様の部屋に行くのは明日にする事にしたのだった。


「ねぇ、サニー?そう言えば、お父様の所へ行く前、何か言いかけてたわよね?覚えてる?」

「あ…ああ!そうそう!」


サニーは思い出したようにパチンと指を鳴らした。


「さっきの話だけどさ…」

「え、ごめん。何の話だっけ?」

「ほら、アレンに寄ってきた女に呪いの事伝えれば『とるぅーえんど』に辿り着けるんじゃないかって話!」


サニーは続きを話したそうにしていた。


「うん。でもそれだと学園の女性と全員確かめないといけなくなるから…」

「だから、そこだよ!考えてみたらさ、俺ってオーラで呪いが見えるじゃん!!」

「…!!」


そのサニーの言葉で、私も何を言いたいか分かった。


「そっか!そうだったわ!何で忘れてたのかしら!」

「だろ?」

「お兄様に好意を寄せている女生徒をサニーが見て、その中で呪われている人に声をかければいいのね!」

「そういう事だ!!」


私は鼓動が早くなるのを感じた。

きっと、サニーもだろう。


抱えている問題の具体的な解決策を見つけてしまったのだ。


「って事は…」

「ああ。ルージュ、お前は学園に通った方がいいだろうな」

「…そうね」


関わらない選択もアリかと思ったけど、確実にTRUE ENDに辿り着けるならその方が良いだろう。


「私、16歳になったらウッドスティック学園に通うわ!!」


そう意気込むのだった。


***


翌日になり、私はまたサニーを肩に乗せてお父様の元へと向かう。


「お父様って、本当に私のこの状況を思春期の病気か何かと思ってるのかしら?」

「まぁ、医者がそう言ったならそう思ってるだろうな」

「なんだか、実はそこが私はしっくり来ないのよね~」

「そうなのか?」


そう話したところで、お父様の部屋へとたどり着いた。


「お父様、失礼いたします」

ノックをし許可を得てから、部屋に入る。


「どうしたんだい?ルージュ」

「えっと…昨日のお話の続きがしたくて…」


私が何を言いたいか分かったらしい。

お父様はすぐに、優しい顔で私を迎え入れてまたソファに座るよう促した。


「そうだったね。昨日はもう1つの話をするのを忘れていたよ」

「え、ええ。私が話を早々に終わらせてしまったから…ごめんなさい」

「良いんだ、良いんだ!ルーはそんな事きにしちゃダメだよ!」


相変わらず、お父様は私に甘かった。


「それで、話の内容なんだけどね」

お父様は1枚の紙を私に見せてくれる。


「…?これは?契約書?」

手に取り上の一文を読むと、契約書のようだった。


「そうだ。ルージュ、もう12歳になったから、専属従者を雇おうと思ってね」

「…ん?」

「つまり、ルージュのお世話を色々としてくれる人を1人決めようと思ってね」

「そ、それって…今までのように皆にやってもらうのではダメなの?」


専属メイドという事だろうが、私に必要なのかが疑問だった。

今まで通りで何不自由ないと思うが…。


「勿論、今までの世話もしてもらうけどな。

これからルージュは貴族令嬢とのお茶会だったり、予定も増えていくだろうし。

やりたい事も増えていくだろう?

それを一緒に管理してくれる人…というかお手伝いをしてくれる人がいたら便利だろう?」


「うん…そうね」

私が生返事をしていた為、お父様は私がピンと来てない事を悟ったらしい。


少し考えた後、思いついたかのように言った。

「何でも相談できる人が、常に側にいるって…良い事だと思わないかい?」


「な…何でも…?」

私が目を輝かせると、お父様は満足そうに頷いた。


「そうだ。勿論、私やママやお兄ちゃんに相談するのも大事だけどね。

私達に相談出来ない時とか、一緒に悩んでくれる人…って大事だろう?」


お父様の言い方に少しだけ私も憧れが産まれた。

今はいらないと思ったが、学園に通う事になった時に一緒にいてくれる存在。

それは私にとってはとても大きい存在だ。


そう思っていると、異議を唱えたのは意外にもサニーだった。

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