第48話

その後、他の令嬢達は挨拶回りだったり用事があると別行動になる。

シルビアは私と一緒で自由行動らしく、私と一緒にいてくれた。


そして色々な話をする。

「シルビアさん…今まで本当にごめんなさい」

「ルージュ様、それはもう」

「ううん!そうじゃないんです!…今まで、私と会った時の為に話題を考えてくれていたと思うんです。それを私は遮っていましたから…それが本当に申し訳なくて…」


私がそう言うと、シルビアはクスクスと笑った。


「あの、良ければ…ううん。ルージュ=ホルダーとしてのお願いです。今後は私の事をルージュと呼んで頂けますか?」

思い切ってそう言うと、シルビアは少し驚いた表情をした後ニコリと笑った。


「嬉しいですわ!私の事もシルビアと、呼んで頂けますか?」

「ええ!シルビア!」

「それから、その…今のルージュさま…いえ、ルージュも素敵なんですが、少し寂しいと感じてしまいますので、話し方も前のようにして頂けませんか?」

「…!ありがとう、シルビア!なら、シルビアも今後は私と対等に話してくれる?」


私がそう言うと、シルビアはさっきよりも驚いた表情をした。

「そ、それは!さすがに失礼がすぎますわ!」


やっぱり三大貴族の名前はそれほど重いのかと思わず落ち込んでしまう。


「う…そんな可愛い顔…反則ですわ…はぁ」

シルビアがブツブツと1人で何かを言っている。

うまく聞き取れなかったが、私の態度が少し鬱陶しかったかもしれない。

私は慌てて謝った。


「ご、ごめんなさい!シルビアはそのままで良いから!」

「もう、大丈夫!私もルージュとは本当のお友達になりたかったんだもの!」


そう言って笑ったシルビアは何だか貴族っぽさが消えて、まだ子供なんだなと思えた。


「シルビア…良いの?」

「勿論!本当に嬉しいの。これからもよろしくね、ルージュ!」

「うん!こちらこそ!」


そう言って私達は手を取り合った。


***


「ルージュは、ちょっと気にしすぎだと思うわ」

「え?何が?」


シルビアとケーキを食べながら話しこんでいたが、急にそう言われて戸惑ってしまう。


「今までの事。確かに、ルージュって今まで貴族らしくは無かったというか…自由?という感じだったけど…」

「う…」


改めて言われて、思わずケーキを食べ進めていた手を止める。


「私達そこまでルージュに対して嫌な感情は無かったのよ?…正直に言うと、それよりもイッシュ様よ!」

「へ?イッシュ?」


そう聞き返すと、シルビアは少し怒りながらケーキを頬張った。


「私達がルージュと話してると、わざと話しかけてきてルージュを連れ去っていったでしょう?」

「え?いや、わざとって事は…」

「いいえ!絶対わざとよ!それに、私が以前その事に少し苦言を申し上げたら、頼んでもいないのに『お前らはこれでも食べとけばいいだろ』ってお皿にご飯を山盛りに乗せて渡したり…食べれる訳ないのに!!」


思い出してイライラしているのか、シルビアの手は次のケーキを既にとらえていた。


「シ、シルビア…?」

「…ハッ!私ったら我を忘れて…。ごめんなさい、ルージュ。あなたのご友人を悪く言うつもりは無いの。ただ、今までの仕打ちが結構酷かったから…」

「そ、そうなんだ…知らなかったわ」


自分の事のように恥ずかしくなり、私は思わず顔を赤くしてしまう。


「でもね、ルージュ。今日のイッシュ様を見てたらね…本当に変わったんだなって思うの。本当に紳士で、きっと将来はもっと素敵な男性になるのでしょうね」

「う…ええっ」

「あら、何を驚いてるの?ルージュだって、そう思うでしょう?」

「え…いや、私はあんまり考えた事無かったというか、何と言うか…」


私は更に顔を赤くした。

それを見てシルビアはクスクスと笑う。


「ルージュはまだイッシュ様とも王子様とも、良い友人なのね。…恋愛としては、どうなの?ルージュと仲の良い、お2人とも素敵じゃない?」

シルビアは少し考えた素振りを見せたが、それでも気になったようでグイグイと聞いてきた。


「ま、まだ私達10歳よ…?少し早いんじゃないかしら…」

どう答えて良いか困ってそう伝えると、シルビアは本当に驚いた顔をした。


「何を言ってるの!私達と同じ歳でもう婚約者がいる方はたくさんいるのよ!?私もまだだけど…そろそろ将来について考えなさいってお父様にも言われているわ」

「そうなの!?」


私の家族は今までも私を甘やかしてきた。

それは自分でも分かっているが…将来について言われた事なんて無い。


「あれ…でも、そう言えば…」

そうだ。確か、ゲームでの私は11歳でオーウェンと婚約を結んでいたはず。

それってもう…来年じゃない!


「ルージュ?考え込んで、どうしたの?」

シルビアにそう声をかけられて驚いてしまう。


「ええっ!何かしら?」

「だ、大丈夫?具合悪い?」

心配そうに顔を覗き込んでくるシルビアを見て、少し冷静になった。

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