第28話

「お前、呪われているな?」


サニーの言葉に私は思考が追い付かなかった。


「え…?え?」

「だ・か・ら!お前、今呪われてるよなって言ってるんだよ」

「どうして…」

私がそう言うと、サニーは何かに気付いたように頷いた。


「やっぱりな。人には言えない呪いなのか…厄介だな」

「どうして分かるの!?」

思わず声を荒げる。


「俺たち精霊は、人間の感情…いや、何て言えばいいかな。オーラみたいなものが見えるんだ」

「オーラ?」

「まぁ、そう思ってくれてて問題ない。俺たちはそれを見て、その人間の状況を把握する。説明が難しいんだが…まぁ、そんな所だ。それで、お前が呪われている事も一目見て気付いていた」


私はそれを聞いて、気付けばポロポロと涙を流した。

「な!?何で泣くんだよ!?」

「うえぇぇん!だって、呪いの事今まで誰にも話せなかったんだもん~。分かってくれる人がいるだけで、嬉しいのぉ~」

そう言って泣いた後、湧き出てくる疑問をサニーにぶつけた。


「この呪いの事、どこまで分かるの?」

「いや、正直呪われているという事しか分からん」

「そっか…原因とか、解消する方法とかは分からない?」

「俺には分からんな」

「そっか…」

少し期待してしまっただけに、落ち込んだ。

だけど、『俺には』という言葉に引っかかる。


「俺には、って事は…分かる方法があるの?」

私が顔を近づけて聞くと、罰が悪そうに顔を背けた。

「いや、まぁ。呪いってのは、基本的にはかけた奴がいるはずなんだ。呪いをかけた張本人が呪いを解くか、死ねば解消する」


私はその場にへたり込んだ。

「お、おい!?ルージュ!?」

「違うの、違うのサニー。私…嬉しいの」

「え?な、何でだよ」

「だって…だって」


ずっと、この呪いとは付き合っていかなければいけないと思っていたのだ。

ゲーム本編では呪いを解くなんてルートが無かった。

でも、自分で調べて動けば、解けるかもしれないって事だ。


「だって、これが呪いかどうかも分からないままだったのに、本当にこの選択死は呪いで、しかも解ける可能性があるなんて…」

「選択死?」

「あっ。私の呪い。勝手にそう呼んでただけなんだけど」

「ふーん。どういう呪いなんだ?」

「それは…」


私が説明しようとした時、部屋にノックの音が響いた。

返事をすると、入ってきたのはメイドの1人だった。

サニーはすかさず小鳥の姿に戻り、私の肩に乗る。


「失礼いたします。お嬢様にお手紙が来ていたので、お届けに参りました」

「お手紙?」

「はい。こちらです」

メイドが差し出した物を見ると、手紙と、便箋を開けるためのナイフが置かれていた。


「…おい」

突然、サニーが声を出した。

メイドが目の前にいるのに、声を出すなんて!

私は慌ててサニーの口を塞いだ。


「も、もうサニーったら鳥のくせに変な鳴き声なんだから~ホホホ」

「…ムグッ!違うって!ルージュ!」

「え?」

サニーの様子がおかしい事に気付き、目の前を見ると私には見慣れた光景が広がっていた。


「…これが、お前が言ってた選択死ってやつか?」

「…ええ。そうよ」

サニーも心なしか少し怯えているように見えた。


『A.手紙を開けるよう、メイドに命令する』

『B.手紙なんて要らないと、メイドを叱りつける』

『C.ナイフを取って、メイドに投げつける』


まじまじとその選択肢を見て、サニーは何かを考えているようだった。

「文字は読めるの?」

私がそう聞くと、サニーはハッとしたように返事をした。


「あ、ああ。問題なく読める。…それで、これをどうするんだ?この中から選んだら、どうなる?」

「その選んだ通りに事が進むけど…」

私はそう言いながら、じっとサニーを見つめた。


「な、何だよ?」

「ううん。やっぱり嬉しくて!まさか、選択死が出た時にお喋り出来る相手がいるなんて!」

少し涙を溜めつつも、笑顔でそう言うとサニーは少し複雑そうな顔をした。


「ま、まぁな。俺は精霊だからな!そ、それで?これからどうするんだよ?」

サニーの言葉に私は一気に現実に引き戻された。

「そうね…今回も物騒な選択ばかりで正直どれも選びたくはないんだけど」

「?なら、選ばなければ良いんじゃないのか?」

「え…」

当たり前のように言うサニーに私は驚いた。


「そんなの考えた事無かったわ…。でも、選ばなければ時間が進まないでしょう?コレが発動している間は私は動けないわけだし、ずっとこのままって訳にもいかないでしょう?」

そう言うと、サニーは頷いた。

「なるほど。お前はこの状態だと動けないのか」

そう言って私の周りを飛ぶ。

やっぱりサニーはキラキラして綺麗だと思った。


「よし!それじゃあ選びましょうか」

私は選択肢を見つめるが、もう選ぶのは決まっていた。

「また今回の選択も、あって無いようなものよね」

「どういうことだ?」

「だって、BとCを見てよ。ただ手紙を届けただけなのに、メイドが可哀そうじゃない」

「ああ…なるほど、確かにな」

「それじゃあ、押すわね」


そうサニーへ言って、私はAを押した。

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