第11回(後編) あとがき 2/2
何度かメインストーリーの完結と言っているように、最小限の話だけで結末まで一本の道を繋げたにすぎない感覚でもいます。
途中で省いた話や考えていた話はまだたくさんあります。いつかそれが形になることがあるかもしれません。ルーシーの事件簿みたいな探偵話もやりたかったですし、レリアと同格とされる名前だけ出た謎のLD術者もまだ扱っていません。この作品には今後も取り組む余地があります。
ですが、しばらくは筆を置いて休みたいです。ブロッサムの続きは少しずつ、不定期で取り組んでいきたいと思います。
あとがきの後編では、エピローグ「流星のゆくえ」の後のメテオたちの旅について少し構想を話したいと思います。いつか作品化する可能性があり、概要を予告風に書きました。
■ブロッサム:リザレクション
メテオ、シリウス、ガイアを統合した「星典」は、銀河が集中するある地点にたどりつく。そこには、クラスターコアの化身のみが集まって世界の救済を謳う組織「リザレクション」が存在していた。
銀河間での交流が発達したその宙域。しかし、移動技術の格差によって悲劇も起きていた。他の銀河を侵略する銀河があったためである。
リザレクションは、そんな宇宙を救済するために勇者となる人間を育成、それぞれの銀河世界に送り込み問題を解決させる「転生学校」を管理する組織。中央銀河に存在する首都世界では、無数の銀河からスカウトしてきた人材を育てていた。
転生者の育成をする転生者学校。その転生者にスキルを与える女神の組織。そういったものが、この世界の再生を掲げて活動していた。星典はそこで極めて高度にまとまったクラスターコアと認められ、リザレクションの顧問として迎えられることになった。
はじめて外部の組織に関わる星典。この時、星典の化身として転生学校の顧問に収まったのはイルであった。
かつて星典内部での魔法学校を成功させた人物である。彼女の参加によって救済はいっそう進むことになるといわれた。
しかし、イルは気付いていた。このリザレクション世界には決して明かすことが許されない暗部が存在することに。
勇者とはどう生み出されたものなのか。転生者に与えられるスキルはどうやって研究されたものなのか。超存在の委員会といういまだかつてない場で、イルはこの謎に挑んでいく。
そしてイルの魔法学校の生徒が一人、リザレクションの転生学校を卒業しようとしていた。
転生学校の若き新米教師となった彼女は、同年代の若い同僚教師との出会いから巨大な陰謀に巻き込まれていく。
■ブロッサム:メールシュトローム
復讐鬼によってリザレクションが崩壊し数千年。流出した転生技術の浸透によってより大きな銀河間戦争が起き、多くの世界が破壊されていた。長きにわたる大戦が終わる頃、ほとんどの銀河は戦う力を失っていた。
破壊された銀河が融合し、巨大ブラックホールが広大な空間を置いて存在する状態。残された世界はわずか。そんな中、積極的に活動を続ける勢力は少数であった。
リザレクションの生き残りで、疑似星典を名乗りガイアの教えを広め救済を願う若き女騎士が率いる「ヴィスィー」。かつての銀河間戦争で勝利した最も大きな軍の後継で次代宇宙に向けて遺産の管理をする「LN66W」。その計画を阻もうとする報復テロ集団「ラージュ」などの組織が、かろうじて残る少数の銀河を渡り歩いていた。
その混乱の時代。クラスターコア「フラウ」は、崩壊した世界の残骸を自らに纏う。そのジャンクバースをつなぎとめるのは鋼鉄の肉体を持つ少女。鉄の乙女座と呼ばれる疑似星典。少女は、無価値な残骸として捨てられたものだけで一つの世界を作っていた。
リザレクションが破綻し星典の教えも忘れられた宇宙の黄昏、そのジャンクバースの町に修理屋を名乗る一人の女性が訪れる。
彼女の名はシリウス。かつて銀河に希望を与え多くを救った星典の化身の一人。ジャンクバースに眠る数々の世界の破片を一つずつ手にとって直していく。
「わたしはただの修理屋だ。大したことはできない」
ウルフカットの紺髪、ロングコート。かつて憧れた誰かの姿に近くなったシリウスは、儚く小さな価値を復元し続ける。
静かなジャンクバースは様々な勢力の目論見によって争いに巻き込まれていく。古代の蒼き賢者は、忘れられた力をふるい脅威から小さな世界を守っていく。
やがて宇宙の崩壊、
■ブロッサム:メテオライト
世界にはついに静寂が訪れる。次の宇宙を迎えるべく進水した世代間跳躍船「LN66W」の図書室には、星典を携えた柩がいた。
宇宙のうちクラスターコアを形成できる部分は最大で五%程度、一%にも満たないというデータもある。これは再生を繰り返す宇宙の中でも常に一定の割合である。
そんな限られた存在の中でも特別なのが、単独でも宇宙の世代を超えることができる星典だ。全てを見てきた超存在である綺柩は、LN66Wの図書館への収録を断った。
柩は図書館の本を読みつつ、手に持っている小さなゲーム機と格闘していた。
「一人の時に退屈しないよう、仲間たちが作ってくれたゲームなんだ」
外見はレトロなゲーム機で、画面も原始的なもの。だが外見が全てではないことを図書館の司書は知っていた。それを手に持つこの少女の目にはおそらく、もう一つの現実と呼べる仮想現実が広がっているのだろう。
完成した星典は記憶を増やさなくなるらしい。一つの世代が終わろうとする今、ここでの出来事が星典にとって最後の永続記憶となるのだろう。
星典は周囲の探知によってまるで新しい記憶の蓄積があるかのように振る舞うという。そんな者こそが、本物の超存在と呼ばれるべきものだと司書は思う。この図書館にそのような本は一冊もなく、星典をここに収蔵できなかったことを惜しむばかりであった。
柩は、これまで旅してきた世界の中から五つの印象的な世界を語りだす。それは、彼女が遊ぶゲームの代表作のモデルでもあるという。
その言葉だけが、LN66Wの巨大なデータベースに記録される彼女個人の痕跡となる。
やがて船は宇宙収縮の巨大重力から逃れ浮上する。原初の卵に戻った宇宙が再誕する様子を、船は外から見る。
星典はその瞬間に真の意味で完成し、完全なものとなった。文明の手引書となった星典は船を飛び降りると、新宇宙の黎明の中へと飛び込んでいくのだった。
これらの話を三つあわせ、ブロッサム一章ぶんくらいの量を想定をしています。今回はこれに関連したちょっとしたおまけ絵もあり、今日中には近況ノートとXに投稿されているはずです。見てくだされば嬉しいです。
新キャラ「フラウ」と「ヴィスィー」の二人は、星典が完成する最後の一頁としてD機関に加わる新たな準超存在。フラウは繊細な少女で、ヴィスィーはリザレクション出身、独自の騎士団を率いずっとガイアを探している健気な女の子という感じです。
お届けできるとしても結構先になる気がします。さっき話した調査局のその後の話を先に書くことになりそう。
最後に。旧作「レムリア」に特別追加エピソード「アイのかたち」を掲載しました。
ブロッサム、レムリアの両方にとってのエピローグという位置づけです。どちらかというとレムリア寄りの構成ですが、話の内容はブロッサム寄りかもしれません。
レムリアシリーズがまだという方はぜひ読んでみてください。過去の作品なので今と少し違う文章ですが、ブロッサムに負けないくらいすごくお気に入りの作品です。
次は元旦にブロッサムを小さく更新します。またお会いしましょう。ありがとうございました!
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