第49話 元サヤ

まあ、一応謝っとくか?

あの女の人とは付き合って

無いみたいだし。



「ゴメン!一朗太は、他の女に

手だせない んだよね。 

今さっき思い出したの。

  ゴメンなさい。

  ヤキモチやいたみたい。」


「美奈。」


 それからはあんなにフラフラ

ヨロヨロしていた一朗太が前

みたいに元気に

なった。


 気力とは素晴らしい。

ヤル気とは素晴らしい。


彼の父親に、言われた色仕掛け

なるものを実践した。


「だって、子供OK のお達しがでたし‥

 一朗太は、32だし。


 20代の父親達と、

運動会の準備‥とか

 PTA …とか。


美奈の父親も体力的に苦労していた。

湿布はったり、年の差のある人達との付き合いとか。

彼は学生とつきあってるから

大丈夫か?

いやいや、20代と同じに

動かなきゃだし早い方がいい。


半信半疑!の色仕掛け!!

しかし彼は直ぐ落ちた。

チョロイ、チョロすぎ。




しかし美奈は知らない‥w

拒食症が一朗太の

虚言であることを。


双方のわだかまりの根元の自分を

痛めつけることで両親と美奈、

どちらも折れると考えたからだ。

勿論リスクもある。


美奈が自分よりいい男を見つけて

しまったら其処までだ。


一種の人生のかけ‥

どう転ぶか分からない。

怖かった、これが裏目に出たら俺は

人生の中の失望を味わい、

美奈を永久に失うだろう。



本当に鬱になり拒食症も本当に

なるかも知れない。



しかし今はスースとリズミカルな

寝息をたてて、それすらも愛おしい。


肌の心地よい暖かさに涙がでそうだ。

美奈はやっと二十歳、

こんな小娘にゾッコンになる

なんて、両親が反対

する気持ちも分からなくない。


美奈のサラサラした前髪を

撫でながら微笑んだ。


6時になると一朗太は朝食の

用意をした。

胃が小さくなり余り食べれないが

美奈には沢山たべさせたかった。


身体も

日にちが薬と言う言葉通り

一朗太はみるみる回復していった。




二人も順調に

交際が続いていた。


一朗太は大学へ復帰した。




一朗太のマンションには恵の姿は

スッポリ消えた。

待ち伏せや、大学凸もあったが

一朗太の気持ちがうごかない事に

あきらめたようだ。


恵が消えた代わりに出没したのは…。




     金曜日のよる。


「美奈様!これを付けませ。」

ウッワー!!

出ました。かっぽー着!


「これは可愛らしく

美奈様に似合うようにと、

奥様が縫われたのです。」


ああ、そっかぁ花柄の

ピンク色の割烹着

ポケット回りには白いフリルが付いて

可愛い。


後一枚は、茶色いクマちゃんの柄

作りは一緒だ。

あの日のサンドイッチを包んだ

クマちゃんの包みを後の義母様は

覚えていたのか?



美奈は料理は、からっきし

ダメダメ

だが裁縫は得意中の得意。


丁寧な縫い目も、美奈に合うように

着やすいようにとの心配りが嬉しい。



今日のメニュー



あの長寿番組のマーチが脳内で

ながれる。


     ぶり大根

     ほうれん草のお浸し

     ポテトサラダ

     卵豆腐

     お吸い物。

     おつけもの

デザートは?


     レモンケーキ♡ 

           ヤッタ



ぶり大根に取りかかる。

「大根は皮を向いて、くださいね。

 はいはい、そうです。」


大根をまな板に寝かして喜代さんが

パスッと大きめにきる。


「これくらいの太さで切りますよ。

 はい!!切って下さいね。」


喜代が食材を出していると

バンボンバンバンバーン



 ヒエエエエエ━━━━ს

「み、美奈様!

 大根はおさえて切りますよ。

 包丁は振り下ろしてはなりませー

ん。」

             ハアハア

「それに手は猫の手ですよ。」


 「ぶりを塩で、ちっちがいます

  そんなにまぶして、どうしますか

臭みをとるだけですのよ。

(怒)」


「大根はゆでてからブリと煮ますよ、

 ブリの塩をおと‥

ギヤーそのまま入れては

 ダメですってばー!!」


「坊ちゃまを高血圧にするつもりで

すかー!

 ハアハア

 いいですか?話を聞いて

くださいね!! 最後まで!!」


 「もう~ぶり大根なんて

食べなくても

  よくなくない?

  塩焼きでいいシー。」


美奈はくたびれてきて

ゴロゴロしたくなり椅子に

座り足をブラブラ

させた。


「ダメダメ!駄目です!!"

 いいですか?これぐらいで根を

上げて_どうしますか?


 一朗太様のご両親、祖父母様

 皆様方にお料理を振る舞う時

 レンチン料理は出せませんよ。

 恥です恥。「あーはいはい、り」」


小言のオンパレが再生されるなか

美奈は腰を上げまた千切りを

はじめた。


キュウリを切る。

スパーン…  スパーン…スパ、アブなっ

ウワッ爪切れた、ヤバッ!。


四時間かかった。

料理が終わる頃には喜代もグッタリ。


「では、また明日!ヨロッ 」


喜代はそそくさとドアを開け、

さささと出て行った。


美奈はベッドに、

どてえええーんと寝転ぶ。


喜代がマンションを出ようとすると

車のライトがパパパッと

ハイビームで合図された。



「一朗太坊ちゃま。」 

喜代は一郎太の顔を見るなり

叫んだ。 


一郎太も喜代を見て力がぬけた。  

 「喜代、ありがとう。

  くたびれたんじゃない?」


「坊ちゃま、考え直されましたら

どうです?

 これならまだ恵様の方が

何倍もましです。

 もう、ヒヤヒヤドキドキでー

 身が持ちません。」

喜代は溜まった鬱憤を一朗太に投

げかけた。



アハハハアッハハハ

一朗太はゲラゲラ笑っていた。

それを見た喜代は


『あらまあ!!坊ちゃまも笑われるのね!!

 ずっと使えてきてニコニコは

見たこと

 有るけど仰け反って笑うなんて

 初めてみた。』


そう思った。



   





       


          


        











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