第23話 加牟波理入道

 ~加牟波理入道かんばりにゅうどう……鳥山石燕の妖怪画集『今昔画図続百鬼』にある日本の妖怪、および日本各地の厠(便所)の俗信に見られる妖怪。『今昔画図続百鬼』では、厠に現れる妖怪として口から鳥を吐く入道姿で描かれ、解説文には以下のようにあり、大晦日に「がんばり入道郭公にゅうどうほととぎすと唱えると、この妖怪が現れないと述べられている。兵庫県姫路地方では、大晦日に厠で「頑張がんば入道時鳥にゅうどうほととぎす」と3回唱えると、人間の生首が落ちてくるといい、これを褄に包んで部屋に持ち帰って灯りにかざして見ると、黄金になっていたという話もある。一方で、この呪文が禍をもたらすこともあるといい、江戸時代の辞書『諺苑』では、大晦日に「がんばり入道ほととぎす」の言葉を思い出すのは不吉とされる。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~


 世の中には様々な性的嗜好を持つ人間が居る。


 痴漢が好きな奴、強姦が好きな奴、露出症、ロリータ・コンプレックス、小児性愛者、屍姦エトセトラ、エトセトラ……まあ、言い出すと枚挙に暇がない。そして、何より問題なのは、先に述べた癖の例は、漏れなく犯罪に通ずる物である所だ。


 彼奴等きゃつらとて、法に触れない普通の性的指向を持っていれば、生きていくのにどれだけ楽か。言い換えれば、人並みの人生のレールから足を踏み外してしまった、尋常ならざる哀れな連中と言っても過言では無いのだ。


 まあ、かく言う僕も此奴等こいつらと同類で、自分の場合は隠し撮りマニアの盗撮フェチ男であるのだがね。そして僕の場合、ムービーカメラ内に収められた女人にょにんでないと興奮しないし、絶対に写真ではなく動画じゃないと駄目なのだ。


 しかし最近では、これらの人間を病気であると定義し、考え方を改めようとする動きもある。そう、僕達のような変態性欲者ってのは、加害者でもあるが、同時に被害者でもある訳だ。


 そうか、僕らは病人なのだ。疾患なら仕方が無いよなって事で、習慣として、せっせと盗み撮りにいそしむ日々である。


 さてさて、路上や街中何かのパンチラや胸チラも悪くはないのだが、季節は夏の真っ只中であるからして、今最も熱いスポットは海水浴場なのである。


 あ? 「それは更衣室かシャワー室ですか?」だと? ノンノン。ったく、性に目覚め立てのかよ。


 盗撮の華と言ったら、かわやと相場が決まっておるだろうに。


 そんな訳で、ビーチ近くの公衆トイレに設置してきた複数の超小型CCDカメラをだね、今は自宅にてライブ配信で視聴中ってな現況よ。


 さあさ、いらはい、いらはい、おいでませ。本日も来るわ来るわ、何も知らずにあられもない姿を晒しに来る雌共がよ。


 あっ、因みに僕はですね、販売出来るクオリティの本格的映像を心掛けておりますもので、仕掛けたカメラには顔や全身、将又はたまた陰部までもバッチリ高画質で映る角度に配置してあるから安心してご覧あそばせ。


 ……うーん、それにつけても、今日は僕的にに巡り会えないな……。と言うのも、これには理由がありましての。


 いやね、何時いつもの僕のターゲットは、黒髪で清楚なお嬢様風ばかりチョイスするのだが、今日は趣向を変えて、全く真逆のタイプでと思っているものでね。誰だってそう言う気分の日はあるってもんだろう?


 そうね、出来るなら、いかにも遊んでいそうな外見のビッチ風ギャルだとベターかな。更に僕は面食いで、体付きよりも断然顔を重視するたちなのだけれども、今日に限っては不美人ふびじんでもオッケーよん。むしろドブス来いや(笑)。


 まあでも、この作業もフィッシングみたいなものでね、焦らずにじっくりと待ち続ければ、やがては活きのよい魚が釣れる訳ですわい。お次の方、どうぞ。


 すると、続きまして入室されたのは、健康的にこんがりと日焼けした褐色肌の水着ギャルが登場です。大分、毳毳けばけばしいメイクをほどこした黒ギャルだが、スタイル抜群のエロい娘だい。


 ほうほう、このが便座に座り込んで排泄に及ぶ訳ですか。むほほ、願わくば大と小をダブルでご所望する。


 くうう、もう辛抱堪らん。


 僕は自分の股間をまさぐりつつ、ティッシュ箱に手を掛けたその瞬間に、カメラのモニター画面が真っ暗になってしまった。


 おいいい! 何だよ肝心な時に!! 一体何があったってんだよ!!!


 すると、直ぐに映像は回復したのだが、そこには面と向かい、手を振り笑いながらカメラに喋り掛ける、先程のギャルが居た。


「おーい、めっちゃー? バーカ、っくの昔にバレバレだったっての。つうか、取り敢えずか、あーしに大金献上か考えときなよ。今からそっちに大勢の仲間達が行くんでヨロー♥」


 直後、家の呼び鈴が烈火の如く鳴り響くと、僕はその場で盛大なる粗相そそうをぶっ放していた。

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