第21話 河童

 ~河童……日本の妖怪・伝説上の動物、または未確認動物。鬼、天狗と並んで日本の妖怪の中で最も有名なものの一つとされる。体格は子供のようで、全身は緑色または赤色。頭頂部に皿があることが多い。皿は円形の平滑な無毛部で、いつも水で濡れており、皿が乾いたり割れたりすると力を失う、または死ぬとされる。口は短い嘴で、背中には亀のような甲羅が、手足には水掻きがあるとする場合が多く、肛門が3つあるとも言われる。川や沼の中に住む。泳ぎが得意。河童にまつわる民話や伝承には、「悪戯好きだがひどい悪さはしない」とか「土木工事を手伝った」とか、「河童を助けた人間に魚を贈った」「薬の製法を教えた」といった友好、義理堅さを伝えるものも多く伝わる。一方で、水辺を通りかかったり泳いだりしている人を水中に引き込み、おぼれさせたり、尻子玉/尻小玉(しりこだま)を抜いて殺したりするといった悪事を働く描写も多い。尻子玉とは人間の肛門内にあると想像された架空の臓器で、河童は、抜いた尻子玉を食べたり、竜王に税金として納めたりするという。相撲が大好きで、よく子供を相撲に誘い、相撲に負けた子供の尻子玉を抜くという伝承もある。好物はキュウリ、魚、果物。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~


 小学校の時までは特に目立つ事もせず、ただひたすらに平々凡々と毎日を過ごしてきたのだが、中学校に入学すると同時に不良グループに目を付けられてしまった可哀想な僕である。


 初めの内は所謂いわゆる、軽い揶揄からかいやいじりだけであったが、次第にそれもエスカレートし、今じゃ普通に殴る蹴るの暴行が定着してしまった。勿論もちろん、お昼ご飯のだって、当たり前のように支払いは僕持ちで毎日行われている。


 うむ、最早これは立派な虐めである。


 このままではいけないと、僕は楽しい夏休みに突入する前に、とっとと決着を付けようと腹を括った。


 そう、集団いじめの手っ取り早い解決方法は、中心的人物を屈服させれば大体終幕するのである。


 という事で、僕はのリーダー格にタイマン対決を申し込んだ。とは言え、腕っ節では勝ち目が薄いので、放課後のスクールプールにて、水泳競争一本勝負で白黒を付ける事を提案する。


 僕は物心がつく前からスイミングスクールに通っていたので、泳ぎには自信があったからね。


 勝敗の条件として、もしも僕が勝てば、今後一切自分には関わらないで欲しいと主張する。逆にリーダー格の方が勝った場合は、現行の上下関係をこのまま継続しても構わない。何なら一生奴隷になってやろうとも約束をした。


 あとは、他のお仲間をギャラリーとして連れて来られても鬱陶うっとうしいので、飽くまでこれは、一対一の勝負である事を強調する。


 徒党を組まなければ高確率で無力なのが、こう言った連中の標準的な特徴である。そこで、「一人じゃ怖くて何も出来ないのかな?」と軽く挑発してみたら、リーダー格は一生懸命に虚勢を張りつつ、「上等だよ。お前ごとき、俺一人でぶっ倒してやんよ!」と、あっさり煽りに乗っかってくれた。こやつは見た目も中身も典型的な札付きのワルだが、頭も悪くて本当に助かった。


 そうして、誰も居なくなった夕暮れ時の学校プールにいて、両陣営の命運をかけた一戦が開始される。


 両者がスタート台から水に飛び込むと、時を移さず僕はリーダー格を追い掛けて、その双脚そうきゃくを引っ掴み、そのまま羽交い締めにして水中深くへと引き摺り込んだ。


 この競り合いの勝ち負けに関係無く、リーダー格には僕への虐めはおろか、人生さえも辞めて頂こうと、はなから僕は心に決めていた。


 まぁ、精々もがき苦しみながら踏ん張れ。


 潜水での僕の息止め最高記録は10分強だ。

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