第19話 隠れ里
~隠れ里……日本の民話、伝説にみられる一種の仙郷で、山奥や洞窟を抜けた先などにあると考えられた。「隠れ世」などの呼称もある。『遠野物語』にも一例がある。貧しい家の女が小川に沿って蕗(ふき)を採っていく内に、道に迷って谷の奥深くにまで分け入り、豪勢な御殿を発見して中に入るが、人の姿が見えないので怖くなり逃げ出した。後日、小川の上流から赤い椀が流れて来る。その椀を使うと穀物をいくら使っても減らず、その家はやがて村一番の金持ちになった。当地では山中のこの種の家をマヨヒガと呼び、この話の女は「少しく魯鈍(ろどん)」で「無欲にて何物も盗み来ざりし故」に椀が流れてきて富を得たという。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~
僕はホテル型旅館で働く従業員です。
例に漏れずこの業界も人手不足でして、特に僕が務めている所では、色んな役目を掛け持ちしていたりするのです。
フロント係は勿論のこと、仲居さんとお食事の準備もしますし、大浴場の準備やお布団敷き迄やりますよ。
これが祝日や連休の時なんて猫の手も借りたい忙しさです。
そして、そんな時は泊まりでの業務になる事もあるのです。
夜中の十二時くらいに仮眠を取り、深夜三時には起きて、まずは大浴場の清掃からです。
お風呂掃除専用の長靴に履き替えて、モップ掛けに桶の整頓、シャンプー・ーリンスの補充に……って、今日はちょっと寝過ごしてしまって、他にも業務は多岐に渡るのに、時間が無いったらありゃしないよ。
ええい、もう
んまあ、お客さんは大抵まだ眠っている時間ですし、こんな細かい事に気が付く人も居ないでしょうからね。
はい、でもこんな日に限って、今まさに、珍しくお客さんと廊下で遭遇しちゃったのですね。うんうん、世の中そんなもんですってば。
「おおい、従業員さん! あんた一体何やっているんだよ!」
「あっ、この長靴の事ですよね? すみません。急いでいたものですから、つい履きっ放しで出て来ちゃいました」
「いや、そこじゃなくて! てめえ、足以外は素っぽんぽんじゃねーか!」
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