第16話 提灯お化け

 ~提灯お化け……日本の妖怪の一種で、提灯の妖怪。「ちょうちん」(提灯)「化け提灯」「お化け提灯」「提灯小僧」などとも呼ばれる。江戸時代以後に作られた草双紙やおもちゃ絵、かるた(『お化けかるた』など)に姿が見られるほか、明治・大正時代以後も玩具や子供向けの妖怪関連の書籍、お化け屋敷の演出などに見られる。古い提灯が上下にパックリと割れ、その割れた部分が口となって長い舌が飛び出し、提灯の上半分には一つ目ないし二つの目があるのが一般的に考えられている「提灯お化け」の姿である。提灯から顔、手、体、翼が生えていることもある。大変有名な妖怪である反面、地域などに即した具体的な伝承はほとんど残されていないとも言われており、妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類されている。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~


 飲み屋の通称を赤提灯あかちょうちんと言ったりするが、まあ、そんな事はどうでも良くって、今僕はここの居酒屋さんで働く娘さんに恋をしているのだ。


 このお店の従業員は、店長兼板前のと、その僕が恋をしている娘さんの二人のみ。小綺麗つ小ぢんまりとしていて、お酒も料理も安くて美味しい優良店だ。


 純粋に娘さんは只の従業員であって、店長と恋仲であるとか、ましてや夫婦などでは決してないとの事。一番重要なこの点については、かなり前にきっちりリサーチ済である。


 そして、店長の見た目は屈強で顔も厳つく、加えてあまり喋らない寡黙な人なのではあるが、僕が娘さんにアタックをしている事を応援してくれているのだ。


 その証拠に、娘さんへのアプローチがだった時何かは、ドリンク一杯か本日のおすすめ品などを、そっとサービスしてくれたりするのである。


 そう言えばよくよく考えると、店長が微笑むのはこの時だけだったりするな。見掛けによらず店長は優しい人なのである。


 そんなで、そろそろ娘さんの誕生日が近付いて来ていたのだ。そう、この日に僕は娘さんに告白をしようと決めていたのである。


 そうして本日は、ってやつなのだ。


 僕は何時いつものようにお店に行くと、娘さんはとても嬉しそうにしていた。よし、まず掴みはオッケーである。


 実は電報サービスを利用して、事前に誕生日向けの祝電を贈っていたのだ。


 これはもう、この勢いに乗るしかないでしょうと、もう一つ用意していた本命のプレゼントを娘さんに渡し、僕は娘さんに想いを告げる。


 結果は惨敗だった。


 娘さんからすれば、僕は飽くまでお客さんであって、恋愛対象としては見られないそうだ。


 更に娘さんは衝撃的な言葉を口にする。


「てっきりお客さんは、店長の事が好きなものとばっかり思っていましたよ」


 ……だとさ。


 んもう、そんな事がある訳無かろうに!


 僕はとっても居た堪れない気持ちになって、助け舟を求めるように、店長の方をチラ見する。


 したらば、僕に対して店長は熱い眼差しを向けつつ、なまめかしいウインクと投げキッスをブチかましていた。

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