第11話 生団子
~
主に観光客を相手に、駅前広場でお団子を売り歩いている屋台がある。
ある時、僕はその屋台の男性販売員に話し掛けられる。「まずは手に取って見てほしい」と、パックに詰められたお団子を手渡された。見る限り、スーパーやコンビニで売られている、大手食品メーカーのお団子と、取り立てて変わらないと感じるが。
販売員が言うには、何でも京都の老舗和菓子屋が手掛けるお団子で、地元じゃ大人気の商品なのだと。
僕はお団子をはじめとして、和菓子ってやつがどうも苦手なのである。それとここの土地は、京都から大分離れた地方都市なのに、「何故に京都?」と思わせる怪しさも
だが販売員は笑顔でベラベラと喋り続け、いよいよお団子の値段を述べようかと言う頃に、やっとマシンガントークが
僕はそのタイミングを見計らって、購入する気は無い旨を伝えると、つい今し方まで乗り乗りの饒舌で喋っていた販売員は、突として人間味を感じさせない表情となった。
そしてささっと、無言でお団子を回収すると、別のお客に声を掛けに行くのであった。
何だあの野郎は。失礼な奴だな。一方的に話し掛けてきて、お客が買わないと分かった途端にその態度かよ。せめて、「じゃ、またの機会にお願いします」くらいの一言があっても良いだろうが。まったく腹が立つ。
それからも、販売員は駅前でお団子を売りさばいていた。
しかし、前述の様な事があったその日より、その販売員は僕を見掛けると、
はあ? これって僕が悪いのか? いやいや、僕に落ち度は無いだろう。逆恨みも甚だしいったらありゃしないっての。
それ以後も、駅前で会う
ところがどっこい、ある日を境に、その販売員をぱったりと見る事が無くなった。どうやら別の男性販売員と交代した模様である。
新たな販売員は、当然僕の事は初見なので、お団子を売り付ける為に話し掛けて来た。
僕は例によって和菓子が苦手である事を告げ、ついでに前の販売員の事を尋ねてみた。
「ああ、あいつですか。実は
なるほどな。あの販売員にご立腹だったのは、僕だけでは無かった訳ね。しかもガチの罪まで犯していやがる真性の屑じゃねーか。
「うちの社長はヤクザも逃げ出すほどの
はは、いやに生々しいブラックジョーク。でもまあ、今度の販売員さんはまともそうな人だ。今日はお団子を買ってあげても良いかなって気にさせてくれる。商売をするならば、こうした応対を心掛けないとだよな、うんうん。
「あ、そうだお客さん。今日より発売した新商品は和菓子では無いので、こちらなら
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