第10話 金霊
~
久しく会っていなかった知人が急に連絡をしてきて、いざ顔を合わせてみたら、ネズミ講かマルチ商法の勧誘だった……なんて経験、あんたらにも一度はあるのではないだろうか。
こいつは昔からある詐欺の手口で、手を替え品を替え、この現代でも堂々と蔓延っている。良く言う、ネズミ講は違法でマルチ商法は合法論だが、まあどっちも似た様なもんだ。
はっきり言って大抵の場合、一般人に話が回って来る頃には枝の末端で、儲けなぞ殆ど無い。
触らぬ神に祟りなしとは言い得て妙で、んまあ、平たく言うと、素人風情がグレーなもんに、物見遊山で手を出すなってこった。
かく言う俺は、こういった
こうやって、これまでずっと上手く
とどの詰まり、世間にのさばる大多数のお人好しの御陰で、俺は大儲けをさせてもらっているってな話だ。
しかしお金ってのは、あればあるだけ良い。高額預金の通帳を眺めているだけで心が和む。
何てったって、お金があれば何でも出来る。単純な所で、食う飯は常に贅沢三昧だし、はっきり言って買えない物は皆無。毎日豪遊し放題だぜ。
それこそ俺は、恋や愛や友情や友達でさえ、お金で買えると思っている。その証拠に、俺は毎晩イイ女を抱いているし、気の置けない友人もいっぱい居るからな。
兎にも角にも金、金、金、お金が一番。
俺の座右の銘は、地獄の沙汰も金次第だ。だから俺は、本気であの世にもお金を持って行くつもりだぜ。
さて、今日も今日とて
この日の俺は浴びるほど酒をかっくらい、卒倒するまで飲んで飲んで飲みまくった。
そうしてブラックアウト。
気が付くと、そこは病室であった。
俺担当のナースによると、急性アルコール中毒で、この病院に担ぎ込まれたのだそうだ。だもんで、数日間の入院だとよ。
ま、考えてみると俺ってば、
極め付けに昨晩は、調子こいて違法ドラッグをしこたま
くくく、こりゃあ、いつ倒れてもおかしくないわな。
いや、それにしても驚いたのは、薄い味付けの病院食が美味いのなんのって。思えば本当の意味での、ちゃんとした食事ってのはいつぶりだろうか。
人体ってのは、必要な栄養素を含む食品を
ふむ、これからも長く
そう決意を新たにした矢先、俺を診た医者が診断結果を報告しに来る。
末期の癌で、余命一ヶ月だった。
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