マグナとフロントフォーク3
「ようし! 整備再開!」
早めの昼食を済ませ、声とともにマチダさんが立ち上がり、工具の中から金色のブラシとCRCを持ってきた。
「お手伝いしてもらおうかな」
更に先程取り外したパーツやボルトの中でも特に錆の酷いものを持ってこちらに差し出す。
「錆取りお願いしまーす」
ようやく手伝えることが出来たようであった。渡されたのは鉄やアルミよりも材質が柔らかく、表面に傷を付けてしまう危険性の低い真鍮製のブラシであった。これとCRCを併せて錆をキレイに除去することが俺に与えられたミッションであった。
「任せて下さいっ!」
削りとった錆が店内に散らかってしまうと申し訳ないので、錆取りの作業は外で行うことにした。
『あ、オーナー!』
陽光の元に現れたこちらに気がつくと、外を走り回っていたマグナが嬉しそうに近づいてきた。
さながらボールを取ってきた大型犬のようで何とも愛らしい。
『どしたの? 「邪魔だから外で遊んでろ」って言われた?』
「お前⋯⋯無垢な笑顔で辛辣なこと言うね」
子供の無邪気さというものは時折恐ろしいほどに鋭利な刃物と化す。勘違いされたままなのも悔しいので「錆取りを任されたのさ!」と渡された道具一式を見せびらかしドヤっとしてみた。しかしマグナは道具の方に興味を示した。
『それCRCじゃん! ねぇ貸して貸して!』
「おいおい、一体何に使うんだよ?」
その疑問が口を飛び出した次の瞬間。俺の脳裏をある想像が過る。このマグナだって、こちらの認識では人間の姿が採用されているが、本体はマシンがベースになっているのだ。『最近動きがイマイチなんだ』とか言って腕に吹きかける。あるいは、『今日暑かったからさ』と言って、脇などに噴射して気化熱で身体を冷まそうとでもするかもしれない。
『―――そこにアリの行列があってさ!』
「おい馬鹿やめろっ!」
やはり、子供の持つ好奇心は時として危険なものなのだと俺は再認識した。
しばらくするとマチダさんが扉を開けて顔を覗かせる。「こっちは大体終わったよ〜」
錆取りに集中していたため、外されたフロントフォーク部の残りの作業を見逃してしまったのは残念であったが、マグナが良くなってくれればそれで良いと思うことにした。
「ありがとうございます。こっちもほとんど磨き終わりました」
後はそれぞれのパーツやボルトを外したときととは逆に取り付けていくだけであった。
「完成!」
使用された工具がすべて元の場所に戻されるとマチダさんは言い放った。例によってもう一度だけ休憩を挟みはしたが午後14時頃にはマグナのフロントフォークの修理は終わったのであった。
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