ロッティとマグナ2
『信じられないわッ!』
キキィィィッ!!!
ディスクブレーキの引きずりのような甲高い声でロッティ(SR400)が絶叫する我が家の軒先。ご近所さんには大変申し訳無い話であった。
『・・・・・・い・・・・・・一体全体その娘はなんだと言うの?』
辛うじてそんな言葉が紡ぎ出される。顔面は蒼白、普段ジットリと湿気を帯び、落ち着き払った半月の瞼は今や真円に見開かれ、全身からはロングツーリング後の熱せられたエンジンの如く湯気が吹き出しているかに見えた。
はて、ここまで盛大にショックを受けるような流れであったろうか? 俺は一旦自身の行動と言動を顧みてみた。
薄幸の原動機付き自転車『マグナ50』との出逢い→その境遇に強く心を痛めた俺は相棒であるロッティに相談を持ちかける(※マグナの名前は出していない)→ロッティからは『やりたいようにやりなさい』とエールを送られる→最終的に一念発起し、マグナを引き取る。という話だった筈だ。
さて、不協和を奏でるようなやり取りが一体何処にあったろうか? とりあえず、このままでは話が進まないため、ロッティにマグナを紹介してみた。
「・・・・・・きょ、今日から俺たちの家族の一員になるマグナ50のマグナだ!」
「よろしくね」と爽やかに笑いかけてみたが、般若の如き表情を微塵も崩さないロッティにたじろいてしまい、ぎこちないものになっていった。
『えっ・・・・・・ひょっとしてそれ愛称なの? ・・・・・・マギーとかもっとアダ名っぽいの無かったの? それじゃあまんまじゃん!』
『えー』と今度はマグナが不満そうな顔を向けてきた。どうも彼女は俺のつけるあだ名にかなり期待していたようであった。
「マグナはマグナでいいの!」
マギーでは手品でも使ってしまいそうだったし、『マグナ』は十二分に格好良い名前だと思えた。というか寝ずに考えたのだが他に有力な愛称が考えつかなかったのだ。
ちなみにマグナシリーズには3台のオートバイが名を連ねており、マグナ750、VTwinマグナ(マグナ250)、そしてマグナ50であるが、一般的にマグナと言えばマグナ750(厳密には3代目のVF750C)を指すため愛称を付ける際にはご注意されたし。
そして、状況は今や愛称なんてどうだって良い(良くはない)とでも言わんばかりの修羅場に突入しようとしていた。
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