ロッティと初めての東京4
およそ350kmの道のりを制覇し、見事大都会東京の大地をそのタイヤで蹴ることに成功したロッティ(SR400)。そして、
「俺が来たッ! かつて『ゆとり教育が産み出した怪物』とまで言われた俺が・・・・・・来てやったぜ、東京!」
『何なのその異名? 凄いの?』
勉強、運動、人付き合い、飲み会、残業、休日出勤、業務態度・・・・・・求められた要件の全てを悉く拒否したものに与えられれる負の称号であった。
そんな俺でもなけなしの根性とロッティの献身的なサポートによって無事に東京の地を踏むことが出来たのだ。これはもう調子に乗らずにはいられない。
しかし、イキり散らす俺に対し東京の街は思わぬ形で牙を剥いてきたのである。
東京市街地到着からおよそ30分後のことであった。
『ねえオーナーさん。流石にもう疲れたのだけれど・・・・・・』
細かいカーブや一時停止を繰り返す度にロッティは唸り声を上げ、単気筒のエンジンにだんだんと熱が籠もっていく。ライブの行われる会場は江東区の隅に位置するため、それを目指して移動を続けていたのだが、いかんせん道の勝手が分からず、行ったり来たりを繰り返していた。見たことのない標識や粗末な補装、入り組んだ道、乱立するビル群が行く手を塞ぐ要塞のように立ちはだかった。
「俺も少し休みたいんだけどね」
休憩したいとは思うのだが、そもそもオートバイを気軽に停めておくことが出来るスペース自体が存在しないのだ。そこら辺に放置しても何も言われないせせらぎ町とはえらい違いである。聞くところによれば東京は土地の価格が高く、駐輪場を作る余裕が無いそうだ。
結局江東区にまで到達するのに3時間も掛かってしまったのであった。
『バイクに不寛容な街東京、滅ぶべし』
「コンクリートジャングルはもう嫌だ。早くせせらぎに帰りたい・・・・・・」
その後、風呂にも入らず、仮眠すらも取れず、意識も朦朧としたボロ雑巾のような状態でライブ参加を果たしたのだが、こんなことなら新幹線で来れば良かったと強く後悔するのであった。
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