ロッティと初めての東京3
福島を抜け、夜通し走り続ける俺とロッティ(SR400)は郡山、白河、那須塩原、宇都宮、さいたまを駆け抜けてついに上野を射程圏内に捉えた。
残る距離は20km。30分掛かるかどうかというところだ。
時刻は午前6時30分過ぎ、左手に仰々しく頭を上げる太陽を捉え右手へと長い影を伸ばす。
『そう言えば貴方・・・・・・さるバンドのライブに参加するみたいだけれど、それって夜よね? 日中のスケジュールはどうするの?』
「なんにも無いよ」
ホテルでも探して夜まで眠ろうかと思っていたのだが。
『・・・・・・で、ホテルは予約していたのかしら?』
「いや、してないよ?」
『呆れた・・・・・・見事なまでの無計画ぶりね。この時間からホテルなんてチェックイン出来ないわよ?』
確かにその通りだった。しかし代替案がすぐに頭を過ぎった。
「だったらネットカフェだね」
『信じられないっ、折角東京くんだりまで来てネットカフェだなんて・・・・・・そんなツーリングある⁉』
ロッティは露骨に非難の声を浴びせかけてきたが、寧ろ「その方が東京観光っぽくない?」と切り返そうかと言葉が脳裏を過った。しかし、ちょうどそこでメーターのガソリン残量を危ぶむ警告灯が黄色く点灯し、そちらに意識が削がれてしまった。
「・・・・・・そう言えばロッティ、給油ってしたっけ?」
『・・・・・・していないわね』
彼女も俺に言われてはたと気付く。出発前に満タンをキメて凡そ350kmの距離を走る間一度も給油をしなかったのだ。と言うことは、
「ロッティの純正タンク容量は12L・・・・・・タンクからリザーブ分の2Lを引いて、最低でも35km /Lってことになるね!」
恐るべき燃費である。まぁHONDAのスーパーカブなどには負けるだろうが、
『まぁ、かのヤマハ発動機がその最新技術の粋を結集させて誕生した最高にモダンで(以下略)な私が本気を出せばこの程度、楽勝よね』
いつもの如く得意げにフフンと鼻を鳴らして見せるロッティ。単なる燃費計算だけではその凄さが分からないと思われるので話を金額に置き換えると、凡そ1000円分のガソリン代のみで仙台から東京まで到達したことになるのだ。凄かろう。
実際には眠気覚ましの珈琲やエナジードリンクなどの雑費が4000〜5000円ほどかかったため1000円ポッキリというワケではないのだが・・・・・・
「にしても、安上がりで助かるよ」
『誰が安い女ですって‼⁉』
「そこまでは言ってない!」
その後、ガゾリンスタンドにて『ハイオクじゃなければ飲めないわ』とヘソを曲げてしまうロッティであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます