ロッティと福島遠征3
週末、いよいよ福島・会津若松ツーリング敢行の決行日がやって来た。時刻は午前9時、天候はどんよりと曇天であったものの、何とか持ち堪えてくれそうな雰囲気を感じた。
「よしっ! いざ出陣‼︎」
お天気アプリにて仙台から会津までの天候の変遷を確認し、リュックの中身も確認し、さあ出発というところで『ねぇ、少し気になっていたのだけれど』とロッティ(SR400)が疑問を投げ掛けてきた。
『・・・・・・貴方、白虎刀買うって言ったじゃない?』
「おうさ」
『バイクで行くのにどうやって持って帰ってくるつもりなのかしら?』
その問に対する答えは決まりきっていた。
「腰に差すに決まっておるであろう・・・・・・」
古来より侍の腰に刀・・・・・・あまりに当たり前のことであった。当たり前過ぎて口調まで古風になってしまう。
『絶対やめて!』
え、
「なんで?」
『なんで? 貴方、良い歳したオジサンが、良い感じに可愛いSR400に乗ってなんで木刀腰に差すのよ⁉︎』
俺のバイクはサラリとオーナーをオジサン呼ばわりし、自分を可愛いとかのたまう。彼女は『そんなハズカシイ奴に触られたくない』と露骨に嫌がってみせた。
『・・・・・・そんなに嫌?』
『絶対やめて!』
時代が時代であればさながら漆黒の馬に乗った戦国武将みたいで格好良いと思ったのだが、ロッティがしきりに反抗するので、一旦白虎刀購入の件は忘れることにするのであった。
悶着はあったものの特に問題もなく出発し、仙台市街を東に抜けて、国道4号線に沿い南下を開始した。
この4号線は東北を縦断する大きな国道で、道に沿ってどこまでも南下すれば、いずれは東京に辿り着く。
今日は会津若松までのツーリングであるが、いつかロッティと一緒に行ってみたいものだ。
4号線の流れに乗ってしまえば、速過ぎず、遅過ぎない、無理のない速度での巡行となり、バイク特有の開放感と流れゆく景色を存分に楽しむことが出来た。空は相変わらず厳しい灰色の雲を一面に貼り付けていたものの、決して寒くはなく、流れ行く緑も目に優しかった。
実はツーリング先に福島を選んだ要因のひとつに『道が広くて平坦』というのもあった。山形へ仙台から下道で行こうとすれば、奥羽山脈の一端である関山峠を越えなければならない。岩手への道は概ね平坦であるが、一車線の道が多く、コンクリートの舗装も古く、荒々しい。
どちらも腕に自信のない俺としては避けて通りたいものだった。
それに引き換え福島への下道道中はゆったりしていてアップダウンも少なく、尚且つ綺麗で、多くの道路が2車線以上設けられていた。それにより安全にのんびりとツーリングに臨める踏んだのである。
この慧眼、是非とも褒めて頂きたい。
「順調順調。いっそこのまま東京に行ってしまっても良いくらいだね」
『ふうん・・・・・・軽口を叩けるくらいには余裕があるみたいね』
初めての長距離巡行に、どことなく上機嫌な雰囲気のロッティであったが『ただ、休憩は適度に取りなさい』と注意を促され、1度の休憩を挟んだ後に福島へと入った。
あとは機を見て西に進路を取れば左手に猪苗代湖を望む。そうすれば会津若松は目前であった。
「フフフ・・・・・・鶴ヶ城め。今に落城させてやるぜ!」
『完全にヤバいヤツじゃない・・・・・・』
福島駅をも通過し、市街地を抜けると広い平原に設けられた直進ばかりの道路に出る。
途中小山などを迂回しながらもひたすら真っ直ぐに進み、やがては長閑な田園風景なども現れ始めた。
そしてついに、俺たちは会津若松の単語を青看板に捉えた。
「今行くぞ、味噌田楽・・・・・・!」
すかさずウィンカーを点滅させ、右折するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます