第8話 束縛の歌
「モミジ・ヨシノ。神殿外での祈りの歌は禁止している。しかも、朽ちかけているとはいえ、『希望の歌』を星樹の前で歌うとは!」
取り押さえられたモミジを見下ろしながら、シズはそう告げていた。
だが、雨上がりの空のように、モミジの顔はどこか満足そうだった。
「立て。一緒にいた少年はどうした?」
周囲を見回すシズの声に、衛士たちは一様に首を横に振っていた。
「あの場所に、私以外の人はいません」
「…………。モミジ・ヨシノ。禁止事項を破りし罪により、その声をはく奪する。これより一年、その事をよく考えるのだ」
「………………」
神妙にしているモミジを見下ろしたまま、シズは満足そうに頷くと、モミジの首に黒いチョーカーをつけていた。
――その瞬間。
モミジの体に異変が生じる。崩れるモミジの体を、衛士たちが慌てて支える。
「連れていけ、巫女様には私から説明する」
シズの指示に従い、衛士たちはモミジを両脇に抱えて連れていく。
それを見送るシズの口元が、徐々に緩やかに伸びていった。
「巫女様……。これでもう、あなたのモミジは歌えませんよ。これで、『星降りの大祭』の歌姫はカエデのもの」
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