第4話 企画会議

翌日またお昼を食べに天空カフェへ来ると、新くんと希和ちゃんが手を振って迎えてくれる。何か嫌な予感がした。


「待ってたよ友希くん、早速企画会議をしようよ」

「えっ……何の?」

「だから、希和ちゃんを輝かせるプロジェクトだよ」

「ああ……それね……」

「よろしくお願いします」希和ちゃんはニッコリ微笑む。

俺は頭をポリポリかくしかリアクションができない。


「企画会議の前に、希和ちゃんがどんな子で何が得意でとか情報がなさ過ぎるよ」

「なるほど……それはそうだ、希和ちゃん何か得意な事とか好きな事とかないの?」

「えっ……コレと言って特別には……」

「それじゃあ何をやっていいかわかんないじゃん」俺は両手を広げて『無理』のポーズをする。

「何か得意な事はいの?」新くんはさらにしつこく聞いている。

「洋裁はお母さんの仕事だから小さい頃からお手伝いしてたの、だから普通の人よりは出来ると思うけど……」

「それだよ!」新くんはノートパソコンを広げて画像を見せる。

「コスプレなんてどう?」

画面にはコスプレをしている女の子の画像が表示されている。

「わあー可愛い!、衣装なら作れるかも知れないけど……メイクとかした事ないし……」

「そうか、メイクか……友希くん、何とかならないの?」

「また無茶振りだ」俺は呆れている。

しかし、コスプレイベントの手伝いに行った時知り合った女性を思い出す。

島田美奈さんと言って綺麗な人だ、打ち上げで何回か飲んだ事があり連絡先を知っていた。

彼女はコスプレサークルを主催している、しかも本庄市に住んでいたような記憶があった。

「そういえば確か本庄にコスプレサークルがあって、主催してる子を知ってるけど……連絡してみる?」

「さすがプロデューサー、話が早いねえ」新くんはすぐに連絡を取るように要求している。俺はスマホから美奈さんの記録を探して電話をかけた。


「もしもし、突然ごめんなさい一瀬です」

『わーお久しぶりです、お元気でしたか?』

「はい元気です、実はコスプレをやってみたい子がいるんですけど、美奈さんとこのサークルに入れる可能性はありますか?」

『えー!それは嬉しいです、どんな子ですか?』

「児玉の女の子なんですけど、近いかなあって思って」

『私は本庄だからすぐ近くですよ』

「今天空カフェっていうとこにいて、その女の子と一緒にいるんですけど、どうしたらいいですか?」


『天空カフェって秩父の?』

「はいそうですけど」

『私行ったことあるんで知ってます、今から行ってもいいですか?』

「大丈夫ですけど、なんか申し訳ないなあ」

『私も一瀬さんに会いたいので大丈夫です、たまたま児玉にいるんで30分くらいで行けると思います』

「ありがとう」電話を切った。

「今から来てくれるって」

「凄い!さすが名プロデューサーだ」

「怒るよ新くん」俺は眉を寄せた。


3人で食事を済ませコーヒーを飲んでいると美奈さんがやってきた。

「お久しぶりです一瀬さん」

「お久しぶりです美奈さん」

「連絡を受けてとっても嬉しかったです」彼女は微笑んでいる。

俺も久々に会えて嬉しかった。

「コスプレしたいって子は?」

「この子なんですけど」

希和ちゃんは立ってお辞儀をした。

「あれ?確か希和ちゃんだよね?相沢洋裁さんとこの?」

「えっ?あっ!お母さんとこによく来てる……」

「島田美奈です、希和ちゃんのお母さんにはいつもお世話になってるんですよ」

驚いて俺を見た。

「そうなんだ、偶然ってあるんだね」俺も驚く。

「希和ちゃんなら大歓迎よ、可愛いし衣装も作れるよねえ」

「はい……簡単なものなら」

「一瀬さんありがとう、サークルの強力な戦力になるわ」とても喜んでいる。

「希和ちゃんのお母さんって私たちの間ではカリスマ的存在よ、昔ミュージシャンや役者さんの衣装を作ってたらしくて、あの関東衣装さんからも仕事が来るんだよ」

「「へーそうなんだ」」俺と新くんはただ驚いている。

「希和ちゃんお母さんから話を聞いたことはないの?」

「いいえ無いです、母は昔のことはあまり話さないんで……」

「そうなの?もしかして私余計なことを言っちゃったかしら?」美奈さんは少しだけ戸惑っている。


「いえ嬉しいです、お母さんのことが少し分かって」希和ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、ご指導をよろしくお願いします」美奈さんにお礼を言う。

「任せてください、でも今度飲みにいきましょうね」そう言って希和ちゃんと一緒に帰って行った。


「新くん、コスプレの画像は用意してたよね?どう言うこと?」

「いや〜バレてた?」

「見え見えですけど」

「最近希和ちゃんはお母さんと話せなくて悩んでたからさ、衣装を作ることで話のきっかけにならないかと思ってさ」

「そんな事だろうと思ったよ、でもひょうたんから駒だったかもね」

「そうだね、驚いちゃったよ」

「今後とも希和ちゃんをよろしくお願いします、名プロデューサー!」

「今度その呼び方をしたら絶交だよ!」

二人でで笑いながら夕日の絶景を眺めた。

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