第20話 ~アザー・ピープル・マメトーーク! Vol.02~
わたしは
しかし元々は、二人共にそれぞれ地元のS.O.B.にて、そこそこの戦績を残しているピンのアマチュア芸人だったのです。そして、「プロのお笑い芸人になりたいか?」と聞かれると、「それはどうなのだろう……」と、考えあぐねる日々を過ごしていたのです。
元々ちゃんと食べて行ける程、芸能界は甘い世界では無かったのですが、お笑い至上主義の世の中となってからは、より一層狭き門になったと小耳に挟んでおりましたもので。
そんな時に、お笑いの事を
そこでわたしと浜松進哉は意気投合し、後日ツーショットオフ会をする事となりました。
実はこの近日中に、某国民的コントのお笑い大会が、首都東京にて開催される予定でしたので、「ピン芸人としてS.O.B.で好結果を出している我々が、コンビを組んでエントリーすれば最強なのでは?」と言う話となりまして、取り敢えずのお試しで、直接お会いしてみる運びとなったのです。
わたしの出身地は九州・鹿児島県で、浜松進哉の方は東北・青森県と、ほんのり(?)距離が離れ過ぎ感は否めません。ですので、オフの合流場所も、その間を取りまして、東京で良いだろうと言う事で、お互いに合意しました。
さて、先に結論から言っちゃいますと、実際に
その様な感じだったものですから、わたし達は出会って即、「こりゃ、理が非でも正式にコンビを組むべきだよ」ってな話となりまして、早々に双方共が上京する形となったのです。ちな、住まいは節約の為にシェアハウスを選択です。
その上、怖い位とんとん拍子に話は進み、わたし達がお互いの故郷で活躍していた成績も考慮されて、無事に中堅クラスのタレント事務所にも入所出来る事となったのです。
それに加えまして、何てったって一番大きかった出来事としては、先述の某国民的コントのお笑い大会に出場した折に、何とわたし達が二位の好成績を収めた事でした。そう、優勝は逃してしまったものの、これにより、お仕事の数は激増したのです。コンビ結成が一年未満の若手芸人としては、充分に及第点であったと思います。
有り難い事に、それからも皆様から多大なるご支持を頂きまして、全国区のバラエティやラジオ番組などにも、多々出演させて貰っています。
おっと、そう言えばわたしが学生の時分、何時ぞやのラジオ番組にて、「芸能界は運」なのだと、ナ○ンティナインの岡村○史さんが仰っていました。「自分はビジュアル系芸人であるからして、そんなに面白い事も言えて無いし、俺らは運だけでここまでやって来られた」、みたいな事も付け加えていたっけか。
いえいえ、確かに相方である矢部○之さんとのコンビによって醸し出された、超マスコット映えするキャラクター性が、視聴者様に「ウケた」面は有るでしょう。ですが、それで皆様から大いに愛され、様々な媒体で笑いを二十年以上も提供し続けられたって事はですよ? それはもう「才能」であり、「実力」だろうとわたしは思う訳です。
因みに、若手だった頃の矢部浩○さんに至っては、当時は特にお笑いとしての取り柄が皆無に等しく、そのストレスから顔面のニキビに悩まされたと聞いております。
但し継続は力なりの言葉通りに、お笑いをやり続けた結果、今では自分を「ツッコミ馬鹿」と評せる位には腕を上げたのです。
話がずれましたが、結局何が言いたいのかと申しますと、芸能界、ひいてはお笑い界に
何時の日にか、
……しかしですね、本当に順風満帆な芸能生活で、感謝感謝の毎日で御座いますけれども、唯一不満が有るとすれば、相方・浜松進哉のお笑いに対しての姿勢なのです。
彼はどちらかと言いますと、おっとり・天然・
わたしと致しましては、この一連の流れは非常に不愉快極まりないのですね。
今現在、アップルスイートポテトの漫才やコントのネタは、わたしが考えているのですけれど、豊富な知識を活かしまして、高度に計算され尽くしたネタが自慢なのです。
テレビ番組等でのフリートークに致しましても、二人共にまずまずの良い大学を卒業しておりますので、もっと知的な会話を展開したいですのに……。
兎に角、この事にわたしは納得していません。とっても
ええ、そうです。なので、たった今より、一向にうだつが上がらぬ、この浜松進哉ってな相方野郎に、ビシッと言ってやろうと思います。
「あのですね進哉さん。毎日恒例のお夕食後、まったりお笑い番組鑑賞中の所、誠に恐縮なのですが、ちょいとお話があります」
「んー? なーにー、香奈さんー? あー、ほらほらー、高校生芸人のダダンダウンがゲスト枠で出ているよー。若いのにトークがキレッキレだよねー。ぼくらもー、ぼやぼやしてはいられないよねー、あははー」
「その通りです。ぼやっとしているのは進哉さん、
「えー? なになにー? 一体何なのー?
「その、のんびり・のほほんな性格が、進哉さんの、
「えー? どうしてー? それにー、性分って物はー、おいそれとは変えられないでしょうからなー」
「大昔にですね、大御所のお笑い芸人さんが、こう言っていたそうですよ。「笑われる芸人では駄目だ。笑わせる芸人でないと」……だそうです。進哉さんの芸は、笑われる芸そのものですよ」
「んー? 別に良いんじゃないかなー。笑われようと、笑わせようと、そこに笑いさえあれば、変わりはないと僕は思うんだよー。どちらにしても、お客さんが笑ってくれさえすればねー」
「っ! ……何……ですと……?」
……そう、それは誠にもって一理ある意見で御座いましたし、その進哉さんの真っ直ぐな考え方に、思わずわたしもハッとして我に返るのです。
「後ねー、お笑いのお話が出たからさー、ついでに香奈さんの笑顔でも作っちゃおうかなー、うふふのふー」
「っっ? ……な、何ですか藪から棒に。……それは一体どう言う意味なのですか?」
「あのねー、ぼくと結婚して欲しいんだー。あ、これってボケじゃなくってー、本気の求婚だからねー」
「っっっ!?」
「あれれー? お顔を真っ赤っ赤にして
……ああ……この進哉さんって人はいつもそう。こうやって不意討ち
……ですが、何だか胸のつかえが取れた気が致します。
……そう、わたしのお笑いに対する
……うん、そうですね。わたしは彼の申し出を受け入れようと思います……。
「ふふ、ねぇ、進哉さん。もしも、わたし達が夫婦となりましたらば、めおと漫才になってしまいますよね。そうしますと、自ずと芸風が変わってしまうと思うのですよ。それはそれで、不安ではありませんか?」
「んーん、ぜーんぜんー。
「……進哉さん……やはりプロポーズのお返事は、数日ほど待って頂けますでしょうか?」
「あれれー? 何でー、どうしてー、ホワーイ? またぼく何かやっちゃいましたー?」
ふふ、ご免なさいね。我ながら単なる
ええ、そうですね。末永く爆発しろとでも
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