第16話 ~全米ですよーだ、WORLD DADANDOWN~

 ふん。一先ひとまは一段落したのだが、僕的な大事は終わっておらぬのだ。何せ日曜日にはジャイロたけしとの直接対決なのだからな。


 R1-M1によるミッションが終了次第、「再び師匠の元へ来たれ」との事であったが、よくよく考えてみると、師匠はまだ渡米中ではないか。


 ふん。なので指南を仰ぐ為に、いざいざ国際電話をば致しそうろうだよ。「ふんふんのふん」と鼻歌交じりで、お電話をば差し上げる事と致しましょうかいのう。


「ふん。もしもし師匠ですか? 今もまだ米国でお仕事中ですよね? ふむ。お忙しいところ恐縮ですが、至急ご対応のほどお願い申し上げます」

『ふむう。はろはろー、その通りなのである。今はハルウッドにあるレトロゲームショップに立ち寄って遊びまくり……うむう。いやいや、絶賛お仕事中なのである』

「ふん。R1-M1の指示するプロジェクトは全て終えました。ですが結局、僕達ダダンダウンは誰にも勝利する事は叶いませんでしたけどね」

『ふむう。逮捕の瞬間は、モアイチャンネルの生放送を通して、吾輩も参加をしておったのである。うむう。それはそうと、吾輩の孫娘こと響子きょうこ殿って、とてもとてもプリチーであったろう? なのである』

「ふん。僕も彼女達には父性を感じさせて貰いました。それに関して否定はしませぬ」

『ふむう。結果、響子殿達を助ける形になったのは、紛う事なき事実なのである。煜には心から礼を言うのである』

「ふん。基本的に僕は何もしていませんよ。実質動いたのは、僕以外の高校生芸人共ですから。彼・彼女らに最高の賛辞をば送って上げて下さい」

『ふむう。吾輩が帰国したらば、にてもてなす予定なのである』

「ふん。そこは、もっとちゃんとしたお礼の品でも贈ってやれよ。ふん。それよりも師匠よ。ジャイロたけしと事を構えるのは明後日なのです。是非にも必勝法を教えて頂きたい」

『ふむう。実はその事なのであるのだがな、これって響子殿を煜に会わせる為の盛大な茶番劇だったのである。R1-M1には予め吾輩が細工を施していたのであるよ。二つ目までの指令なんぞは単なる振りで、最後のS.O.B.だけがまさに本命だったのである。うむう。もっとも、途中であの様なが起こってしまう事は、吾輩も想定外ではあったのである。ふむう。だからこそ、R1-M1のAI予測分析機能が、御膳上等ごぜんじょうとうである証明になった訳ではあるのだがね。うむう。哀れな煜よ。無自覚なままにR1-M1の実証実験モルモット役を、ほんとにほんとに御苦労さんだったのである』

「ふん。……ふん? ちょっと待って下さいよ師匠。コミック漫画の進撃○巨人で、ラ○ナーとベ○トルトが世界の真相を明かした場面位に唐突過ぎて、思考が追い着いて行かんのですが」

『ふむう。要するにR1-M1の命令だとか、対ジャイロたけしのS.O.B.には、何ら意味のない事だったと言う訳なのである。うむう。だがしかし、付き合いの長い煜と吾輩との仲なのである。笑って許してくれると信じておるのである』

「ふん。知り合って一週間も経っていないこの期間で、一体お互いの何が分かるってんだよ。遂に師匠もではなく、が始まったのですかね?」

『ふむう。どうせ正規の手続きでダダンダウンにS.O.B.を申し込んでも、へそ曲がりで人格破綻者の煜は素直に応じなかったのである。だからこそ、この様な回りくどい手法を取ったのである』

「ふん。別に僕はそこまで唐変木とうへんぼくでは無いのですが。つか、あんたのその言い方、すっげぇ失礼だしね!」

『ふむう。まあ、付き合ってくれたお礼と言っては何であるが、一応取って付けた様な助言をば、これより伝えるので参考にされたしなのである』

「ふん。清々しいくらいの開き直りだな。最早正直なのか嘘吐うそつきなのか、道徳が行方不明になる迷走っぷりだぞ」

『ふむう。人気があるダダンダウンでも、今回は色々と負けを認める場面が多々あった筈なのである。これは即ち、何事もおごり高ぶるなと言ういましめなのである。人生は何が起こるか分からないのである。一寸先いっすんさきは闇なのである。とどの詰まり、何を伝えたかったのかと言えば、お笑いに正解などは無いと言う事なのである』

「ふん。そして今回の事で何物にもがたい、様々な人達との出会いもありました。これこそ、人生にいての宝物だと、師匠はこう言いたいのですね?」

『ふむう。まご方無かたなしに、その通りなのである。それこそ吾輩が言いたかった事なのである』

「ふん。嘘を付きやがれ。それらしい事を言って得意顔なのだろうが、何も解決していないんだよ。しかも、今回のジャイロたけしとのS.O.B.は勝たなければ意味が無いのだよ。ふん。こんなのは創作物にいて、終わり方が夢落ちだった時と匹敵する酷いクオリティぞ」

『ふむう。そんじゃまあ、己の笑いを貫けって事で良いんじゃね? なのである』

「ふん。おい、師匠。いや、このが。さては貴様飽きたな。ふん。こいつは温厚な僕が思わずブチ切れんばかりの所業だぜ」

『ふむう。この展開も想定の範囲内なのである。ネタばらしの後、煜に罵詈雑言を浴びせられるのを見越し、逃亡も兼ねて国内に居なかったと言った面もあるのである』

「ふん。こうして電話では、僕から暴力を振るわれないしな。ふん。しかし帰還してからの身の安全は考えもしなかったのかよ。帰って来たらただでは済まさないからな」

『ふむう。そこはにわとりの記憶力と張り合える煜なのである。うむう。三日もあれば忘れているであろうと言う腹積もりなのである』

「ふん。ほら又しれっと悪口を言う。ことごとく失礼しちゃうわ。ぷんすこぷん!」

『ふむう。うふう。ふむむむう……ふっふっふむう……(これでも一応笑い声)』

「ふん。なにわろとんねん。しかも笑いのツボまりやがってからに。!? (沖縄県の言葉で、「ぶっ殺してやるぞ」の意)」

『……ふむう。ふぃん。ふふむう……あー、笑い過ぎて息苦しいのである。そして、ここで都合の良いイベントが到来なのである。うむう。この電話番号は現在使われておりませんなのである』

「ふん。今現在無茶苦茶に通じているじゃないか。あんまり僕をおちょくるんじゃねーぞ」

『ふむう。ではこちらはUSAなので、電波が混線中っちゅう事で宜しくなのである。お後がよろしいようでなのである。うむう。ではでは、なのである』

「ふん。こっちはろくすっぽ準備も何も整っていませんってんだよ。って、あっ! ……糞が……本当に電話を切りやがった。そして、お約束の着信拒否設定発動ですかよ、あんにゃろう。……ふん。今度からでは無く、と呼んでやる事にしよう。それから借りているレトロゲーム一式だって借りパクしてやるんだから。ふんだ。もう絶対に返してあげないんだもんね! ばーかばーか!」

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