第13話 ~摩訶不思議、ダダンダウンの……!?~

 これが最終指令であるR1-M1のサード・ミッションは、「お笑いトリオのナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズと、「ハァ~イ、全国の女子高校生のみなしゃ~ん、お待たせしました」のダダンダウンがS.O.B.をすべし」であった。ふん。変な惹句じゃっく付けんな。


 ふん。昨日の佐藤春菜さとうはるなの証言に依れば、僕達ダダンダウンがS.O.B.に参戦する場所に限り、裏で糸を引いていた男が現れるとの事だが果たして……。


「なはは、ここは絶対に具体的な名前を出されへん、千葉県浦安市舞浜にある某有名テーマパーク型遊園地やん。前々から来たい来たいとは思うとってんけど、何やかんや来られず終いやってんな。なはは、Universal Studi○s Japanの方には何遍も行っとるんやけどね。なはは、出来ればS.O.B.とかやのうて、初めては愛する人と一緒にデートで来たかったわ」

「ふん。念を押して言っておくが圭助よ。間違ってもここの敷地の名称だけは口にするでないぞ。ウォルト・ホニャララ・カンパニーに睨まれたらば、僕達平民なんぞ一巻の終わりであると心得よ」

「なはは、分かっとる分かっとる、ちゃんと分かっとりますがな。せやさかいに、そう心配しなさんなや。なはは、白ハツカネズミやらアヒルやら犬をモチーフとしたキャラクターの名前とか、そない簡単には出さへんて」

「ふん。おい本当に止めてけれ。冷や汗が止まらぬ。しかしまあ、こんな女子供が喜ぶ様な施設のどこが面白いのか。ふん。どうかこの僕に楽しみ方を教えておくれ」

「なはは、そう言う割りには両手に持ち切れんばかりのお土産を購入しよってからに。今日は遊び目的ちゃうからええけど、荷物になるし普通はショッピングとか最後やろ」

「ふん。馬鹿め。これは「絶対に買ってきて頂戴ね」と、両親&妹に頼まれた品なのだ。人気グッズは売り切れてしまうかもしれんだろうが。それに閉館間際は混雑し、ギフト・ショップが入店待ちになる可能性だってあるからな」

「なはは、なるへその。それよか煜にも妹さんが居ったんやな。なはは、ぶつくさ言いながらも家族の言う事を聞いてあげるなんて、ちゃんとしちゃってるやん」

「ふん。僕の所は戸籍上紛れも無く「女」の妹だがな。貴様の所の妹もどきと一緒にしないで頂きたい。それと断っておくが、僕の認識では肉親なんぞ奴隷か家畜同然よ。こげな安い贈り物で、あやつ使が従順に応じるのならば、まさしく安上がりな買収だからな」

「なはは、赤の他人ならいざ知らず、血の繋がった身内になんちゅう言い草やおのれは。せやけど煜自身が頭に付けとるカチューシャと、むっちゃ美味しそうに食べ歩きスナック&スウィーツはどう説明する気や。めっちゃ満喫しとるやんけ

「ふん。僕はアトラクションのベースである原作アニメや映画の方は大好きなのだよ。それを何処どこまで再現出来ているかの検証をしているに過ぎぬのさ」

「なはは、大分苦しい弁解やけど、もうそれでええよ。ホンマに面倒臭いやっちゃのう。この世界的有名アミューズメントパークは全ての顧客(ゲスト)を受け入れ、幸せの提供をしてくれる夢の国なんや。煜みたいな臍曲へそまがりもウェルカムやしの」

「ふん。そんな事よりも圭助さんや。今回僕らのS.O.B.の為に作られた、特設ステージがあるのにお気付きかえ?」

「なはは、ホンマやな。めっさ金に物を言わせてるやん。なはは、もしもディズなんとかさんに難癖を付けられても、こないにが有りまっさかい、賠償金支払いも余裕ですな」

「ふん。左様で御座いますな。今回でR1-M1の指図さしずもラストである。そして満を持して、いよいよ僕達ダダンダウンが直々に挑むS.O.B.としては、この上なく相応しい舞台と言えようぞ。ふん。と言う訳で、対するナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズの詳細を頼んだぞ。やっちゃえ圭助」

「なはは、やっちゃえ日○みたいに言いやがって。よっしゃ、このに任せとき。「~任天堂まかせてんどうのこぼれない話~」の章を読み返せ。以上や」

「ふん。何とも非の打ち所の無い感服する説明……とは名ばかりの竹を割った様な手抜きだったぜ圭助よ。ふん。もう貴様に用は無い。性急せいきゅうへと立ち去れい」

「なはは、はいよー……って、なんでやねん。志國三の時にやった新○劇ネタを自然体でやりそうになったわ。ここでこの天丼はやて。そいで何遍でも言うたんぞ。俺とお前の二人でダダンダウンじゃ。俺の存在を無下にすな。この場でむっさわめいて、を当惑させたってもええんやぞコラ」

「ふん。……おっと、圭助。たった今、この場にナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのトリオが到着したみたいであるぞ。三者共に五歳で、「サンミュージック保育園」出身さね。この園児達の目の前で情けなくむせぶ行為なぞ、励行れいこうするメンタルは貴様にあるのかね?」

「なはは、おおともよ。やったらあよ。この新堂圭助を舐めたらアカンでよ。ギャースからのビエーン!」

「ふん。恥も外聞もかなぐり捨てやがって。だけど芸人としては最高のリアクションよ。僕からのせめてものアンサーを受け取っておくんなまし。貰い泣きからのウエーン!」

「キャハッ☆お取り込みコント中の所、大変恐れ入りますが、ダダンダウンのお二方(特に焔煜)! このあたしこと紅響子くれないきょうこが率いるナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズと、いざいざ勝負するザーマスよー。本日は宜しくお願い致しますザーマスー」

狼牙琶菜ろうげはなでガンス。いざいざ勝負するでガンス(特に焔煜)。本日は宜しくお願い致しますでガンス」

繕宏徒つくろいひろとでフンガー。いざいざ勝負するでフンガー(特に焔煜)。本日は宜しくお願い致しますでフンガー」

「なはは、おやおや、こりゃ又ごっさ愛らしいS.O.B.ですこと。また礼儀正しいお子達ときとりますわ。なはは、こら自然と顔面がほころぶってなもんでっせよ」

「ふん。も着ぐるみ人形を無条件で面白いと評価してしまうみたいな、そげな軽薄的けいはくてきジャッジを僕は認めない。……とは言え畜生、ほっこりしやがるぜおい」

「なはは、しかも共に、煜を敵視しとると思いきや、実はめちゃんこファンやったみたいですな。その証拠に自己紹介を終えるや否や、照れ顔ながらも煜にしがみ付いてきて、一切離れようとせえへんやん。なはは、この歳でもう女の顔しとるがな」

「ふん。女の子は男の子よりも精神年齢が高いからな。幼少期におませさんが多いのも、圧倒的に少女の方が多いのだよ」

「なはは、せやけどちょい待って。一人だけイレギュラーな子がられますねや。何とまあ、「~フンガー」が口癖の繕宏徒つくろいひろと君は少年やで。こらどう言うこっちゃねや?」

「ふん。知れた事よ。このお子様が男色家だんしょくか……もとい、この僕の色香いろかってものは、男女を問わずにとりこにしちまう。ただそれだけの話さ」

「なはは、いけしゃあしゃあと涼しい表情で腹立つわー。ああ言えばこう言いいやがってホンマには。しかもデレデレと子供を持つパパさんみたいな顔になりおってからに。繰り返しになりますけどもな、俺はロリータ・コンプレックスとちゃうでって事を踏まえて言わせてもらうで。煜なんか全国のロリコンになぶり殺されればええねや」

「ふん。嫉妬は見苦しいぞ圭助。……とは言うものの、このままでは身動きが取れんな。何とかしやがりませ圭助」

「なはは、任しとき。こう言う時の為の切り札ですわ。ファンの皆様おっとさん。三度みたび登場の最終兵器マスコット、酵母乳酸こうぼにゅうさん卍糧まんじゅうろうさんでっせ。ってどうぞ!」

「ふん。彗星の様に卍糧が登場した途端、ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズの三人は、「わー、真っ白いワンちゃんだー」と僕から離れ、卍糧を交えて仲良く、んずほぐれつをし始めたではないか。ふふ。如何いかにこの僕の魅力をもってしても、やはり可愛気かわいげではにはかなわぬな。この光景は単なる再三の人気取りではあるのだが、とても癒されるのでグッドジョブだぞ圭助」

「なはは、そうやろそうやろ。この愛らしい者同士の絡みは最強や。かわいいは正義やで。しやけどこれは歴としたS.O.B.対策なんやで。なはは、対戦相手は所詮しょせん五歳児や。卍糧との楽し過ぎるたわむれで、彼女らの本日披露する事を期待してのはかりごとやで」

「ふん。ゲスいな。いや、セコいな。……うわぁ……一途いちずに引くわぁ……」

「なはは、何とでも言えや。勝てばええねん勝てば。それにしてもや、ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズは紅響子のお爺ちゃんプロデュースによるユニットで、その爺さんが天堂任てんどうまかせお師匠はんやったんは驚きやったの」

「ふん。そうだな。あの師匠は一体幾ら儲ける気なのだろうな。もう貸してくれているレトロゲームを僕におくれよって話だよ。ふむ。しかしナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズの真骨頂は別にあるぞ圭助よ。僕らと真向かい側の方を見てみなされ。御座おわす保護者兼マネージャーとして常に付き添う紅咲妃くれないさきと言う女性をな」

「なはは、あの人は紅響子ちゃんのお母はんやね。元はってな設定で売り出しとったピンの女芸人やってんで。いやはやそれにしても、と言うには若うて綺麗過ぎる見た目やな。なはは、あれやったら紅響子ちゃんのお姉ちゃんですって言うても通じるで」

「ふん。人妻でありながら、あの若さと美貌か。これも魔女と言われている所以ゆえんだな。ふん。正真正銘の美魔女とは彼女の事だと言えよう」

「なはは、それにあの衣装を見てみいや。しゃんとナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのコンセプトに合わして、自身も昔の衣装である魔女か魔法使いっぽい恰好しとるやないか。先っちょに星型の飾りが付いた魔法まで持っとってやん。なんつっての。なはは、なんつってつっちゃった!」

「ふん。なんつってつっちゃったな! そしてきっと彼女はね、ほのぼの日常系漫画かアニメに必ず一人は居る、ほんわか天然系と癒し系を備えた枠なのよ。考えても見ろよ。僕らの周りにはろくな女が居ないと来ていやがる。「メガネジキルハイド(姫乃麗ひめのれい)」に「リッチビッチ(西園寺亜矢華さいおんじあやか)」に「アイタタイワン(愛瑠璃あいるり)」だぞ。ふん。……とほほ」

「なはは、仮にも惚れとる女をけったいな渾名あだなで呼んだるなよ。ちゅうか西園寺亜矢華さんをわるう言うなや。完膚無かんぷなきまでに張り回したろかコラ。んまあ、それよりもな、俺は年上好きやさかい、余計に咲紀さきさんってたまらんのよね。俺の恋愛守備範囲は十六歳以上、九十歳未満やからね」

「ふん。物凄ものすさまじいな貴様。熟女好きのかがみだな」

「なはは、五十、六十喜んでやがな。流石に九十路ここのそじを越えてくると、ちょい厳しなってくんねんけどな。俺はおばあちゃん子やさかい、自分のおばあはんを思い出してもうてアカンねや。なはは、百歳以上はもう絶対無理やね」

「ふん。貴様の祖母様ばあさまってな一体幾つだよ。しかるにですね、そんな圭助の性癖をたりにして、この僕がいたく尊敬の念を抱いたみたいですよ。ふん。それよりも目を凝らして見てみなっせ圭助。あの母親のたわわに実っておる胸の膨らみをな」

「なはは、でっか! ホンマでっか!? T○! なはは、あのボインでお子さんを育てたか思うと興奮す……感動するやんけ~」

「ふん。そうだよな。断じて好色こうしょくな気持ちなどは無く、生命の神秘を感じるよな。ふむ。所でおっぱい関連で僕には信じられない事があるのだ。世の男共は胸の大きさやら形、果ては乳首や乳輪の色にまでこだわりを見せているらしいじゃないか。おっぱいは女性の象徴で性なるもの……失敬、聖なるものぞ。バストサイズがどうとか、カップサイズがこうとか、どうこう言ってんじゃないよ。そんな些細な事を追求してどうするのだ。愛した女性の全てを愛せずして何のおっぱいか。僕は別に貧乳好きではないのだが、現状僕は控えめおっぱいの姫乃麗を好いている。なので今はがブームだ。要するに何が言いたいのかと言えば、麻雀用語で例えるとなぞ無い。全てがなのさ」

「なはは、ちょい何言うてるか分かれへんけど、要はどんなかてく歓迎する若人わこうどっちゅう結論で宜しいか? なはは、奇遇やったな。それやったら俺も同意見でっせ。世間的には所謂いわゆる、「残念おっぱい」や「ガッカリおっぱい」てされとるおっぱいも、唯一無二ゆいいつむにが出とってええやんけ。更には女の子自身がそれをコンプレックスに感じとるんやとしたら、それこそ萌え要素に変換されるっちゅうねんな。要は捉え方次第っちゅう事ですわ。なはは、りったけのおっぱいに乾杯。いや、俺ら♂共はおっぱいに完敗ってか完パイパイや」

「ふん。仰る通りです。分かっておりますね。ふふ。貴様を改めて見直すと共に、矢張やはり圭助を相方にして良かったと衷心ちゅうしんからそう思うよ」

「なはは、おっぱいでそこを再評価されるんは、胸だけに複雑な胸中やわ。まあ、二人して長々と講釈こうしゃくれましたけどもね、「おっぱいはれへんで!」的なゴリ押し疾走感をげて、おっぱいなら何でもええねん言うこってすわ。なはは、おっぱいめっちゃ好きやねん。我々ダダンダウンは、オールおっぱいを全力で応援しています」

「ふん。所で僕達は何度おっぱいと言ったでしょーか? さぁ~みんなで考えよーう! ふぬ。てか、もう辛抱堪しんぼうたまらんぜ。どれ、僕も赤児に戻ったと言う設定で、咲紀さんの右乳にしゃぶり付くという妄想を繰り広げるとしようかい」

「なはは、ほんなら俺は左乳をば。仲良なかようエロ仮想空間の世界へとトリップしまひょ」


 ……ふん。何も言わんでおくれ。ただひたすらに最低である。最早ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズの分析もへったくれも無い、もっぱ低劣ていれつなだけの会話だからな。


 そんな下卑げび掛合かけあいを展開されているとは露程つゆほども知らず、何と当人である紅咲妃さんが、僕らの方に近付いて来るではないか。


「あらあら、まあまあ、お初にお目に掛かります~? ダダンダウンのお二人様~? ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのマネージャー兼保護者の紅咲紀と申します~? あらあら、まあまあ、実物の焔煜さんも美青年ですけれど、生で見る新堂圭助さんも中々どうして好男子こうだんしじゃないですか~?」

「なはは、恐縮です~(緊張)」

「ふん。ふん~(遺憾)←圭助がたたえられた為」

「あらあら、まあまあ、ラブリーなサモエドちゃんとも遊ばせてもらっちゃって~? 本日はナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズがお世話になります~? うふふ、今日はお手柔らかにお願い致しますね~?」

「ふん。いえいえ~(緊張)」

「なはは、こちらこそ~(勃起)←なんでやねん」


 するとさん←(下衆い)……もとい咲妃さんは自身が手に持っておりました、先っぽにお星様の付いたステッキを、僕と圭助に向けてこう言うのだ。


「あらあら、まあまあ、ダダンダウンさんが手加減をしてくれる呪文を唱えちゃいますね~? え~い、メ○モールフィーフォシエス~? ……うふふ、な~んちゃって~? さあさあ、ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのお三人さんも~、そろそろS.O.B.のお時間ですよ~? 最後のネタ合わせをしますから~、そろそろサモエドちゃんからお離れなさいな~? え~い、メタ○ールフィーフォシエス~?」


 するとナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのかしまだが、さながら本当に魔法を掛けられたかの如く、卍糧から身を引き、咲紀さんに唯々諾々いいだくだくとして従う操り人形と化すのである。


 Q:これは調教、いては児童虐待に該当する案件ではないでしょうか? A:いいえ、教育による理想形態です。Q:ハイタッチ&フィスト・バンプしながらのウェーイ!


「あらあら、まあまあ、それではまたのちほど~? ではでは、失礼致しますね~?」


 そう言って咲妃さんは、静かになったキッズを引き連れて、自分達の所定位置に戻って行くのであった。


「ふん。おい、圭助よ。年上女性とは鳥肌が立つ程に、暗三宝くらさんぽう良いものだな」

「なはは、せやからそう言うとるやんけ。俺はロリコンの気持ちとか分からんし、未来永劫みらいえいごう理解する気もあらへんからね。なはは、これからは成熟した女性の時代到来やで」

「ふん。誠にもってそうやも知れぬな。取り敢えず咲紀さんのフェロモンに当てられて、僕達にはない昂奮こうふんつむぎ出されてしまった。それの影響化により、大洪水を及ぼしてしまっておる、お互いの鼻血を何とかしようではないか」

「なはは、せやな。ティッシュティッシュっと」


 と言う訳で、この数分後にダダンダウン対ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズのS.O.B.と相成る。


 先攻は僕達ダダンダウンとなり、鼻にを詰め込んだままの登場で一笑いをつかみ取り、その流れで好調な笑いの流れを勝ち取った。


 一方後攻のナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズであるが、精々ネタの出来は学童保育園のお遊戯ゆうぎって感じだ。言うまでも無く可愛らしくはあるのだが、正直お笑いのネタとしては見るにえない散々な仕上がり具合であった。これは観覧していたお客の所感しょかんも同様であったろう。


 ふん。あんたがわず、五歳児と高校生では圧倒的な格の違いがあったのさ。だがしかし、年齢差があろうとなかろうと勝負は勝負。勝利は僕達で決まりだろうが、情けは無用よ。


 そうやってジャッジが下されようとしたその途端に、このは究極の伝家の宝刀を抜いて来やがったのである。


 それは全身全霊ぜんしんぜんれいかたむけて、事であった。ふは。なーにぃー! そげな暗黙あんもく了解りょうかい的禁じ手をやっちまうたぁなぁー! 末恐ろしいぜ!!


「ふん。今回のS.O.B.だが、僕達ダダンダウンの敗北で良いです。構わんよな、圭助?」

「なはは、せやね。俺らの負けでええです。こないな最強のカードを切られてもうたら、他に選択肢とかありまへんわ」


 くして、本S.O.B.はナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズの一発逆転である。


 この結末に対して、ギャラリー達の惜しみない拍手が鳴り止む事は無かった。これは、今回のS.O.B.をいさぎよ退しりぞいた、僕達ダダンダウンへの称賛の意味も兼ねていたのであろう。


 ふん。結果的には我々の好感度も上がった事だし、まあ、これで良しとしよう。


 そんな勝ち組ナイトメアー・ビフォア・ハロウィーンズに駆け寄って来て、彼女らと喜びを共有する咲妃さん。更にそんな咲紀さんの胸元を、穴があくほど見詰めて悦ぶ僕と圭助。うむ。正真正銘しょうしんしょうめい、ウィンウィンの関係だな。


 ……ふん? するとどうだろう。何だか咲紀さんが手に持っていたステッキが、僕には忽然こつぜんと消え失せた様に見えてしまったのだ。ふむ? 乳の錯覚、いや、目の錯覚か?


「ふん。おい、圭助よ。咲紀さんの持つ例の魔法ステッキって物本ものほんだったりするのか? 確か彼女は本物のウィッチというコンセプトだったよな?」

「なはは、何をアホな事を言うてんねん。そんなんキャラ作りの為の設定に決まっとるやん。なはは、まさか咲紀さんが行った御呪おまじないで、恋の魔法に掛かってもうたとか、っさい事を言い始める気とちゃうやろな?」

「ふん。いや、なあに、その咲妃さんステッキがだよ、先程さきほど突如として掻き消えた様に見えてしまった物でな」

「なはは、さんだけにって、ホンマにアホやなぁ煜。そんなもん、あの豊満なお胸に収納したに決まっとるやんけ。胸の谷間は四次元ポケットなんや。そこには愛やら勇気やら夢やら浪漫がぎょうさんまってんねん。ったく、ともあろうもんが、そないな初歩的疑問にぶち当たってどないすんねや。なはは、おっぱい星人は漫画のG○NTZでも無敵クラスやったやろがいや。嘘やけど」

「ふん。あー、そーゆーことね。完全に理解した。←GA○TZ未読なのでわかってない」

「なはは、度を越したこじらせるんも考えもんやで。でもそれやったら、益々ますますもってあのステッキを手に入れなアカンやん。まだ肌の温もりが残っとる内になぁ!」


 ふん。その気持ちは分からんでもないが、で咲妃さんの元に駆け寄ろうとする圭助を、僕は全力で引き留めた。


「ふん。咲紀さんやおっぱいも大事だがな圭助よ、もっと重要な事があっただろうが」

「なはは、せやったな。興奮し過ぎて、危うくド忘れしてまう所やったわ。ほなら所謂いわゆる編の解決編と洒落込もうやないの。煜曰く、態態わざわざここの有名遊園地をS.O.B.会場にしたんは、早い話が「おとり」て言うとったよな。こんな風に大々的に宣伝しとけば、春菜はるなはん情報発のも、必ず来よると踏んでの事なんやろ?」

「ふん。その通りだ。そして、僕達がS.O.B.に興じている閒にが現れた場合に、他の協力者達に捕縛を頼んでおいたのだよ。ふん。気が付いていたか圭助? ここのステージを囲む様にした四隅に、志國三と西園寺亜矢華の私設軍隊が配備されているのをな」

「なはは、そんなもんがる訳無いやん……って、ホンマや! 密かにこの近辺領域を見守っとってくれとったんやな!」

「ふん。その上で、僕達がS.O.B.を行った此方こちらのステージには現れなかったよな。ふん。実はこの遊園地の敷地内にはな、をもう一つ備えておるのだよ。と言う事は、どうやらの奴は其方そちらの方へと向かったのだろうぜ。そこには西園寺亜矢華と複数の高校生芸人達が待機しているのさ」

「なはは、お笑いを愛する者として、お笑いに水を差す行為を、他の高校生芸人達も黙っちゃおれんかったっちゅうこっちゃね」

「ふん。正に文字通り水を放っていやがるからな。これは芸人以前に人として許される事では無い。ふん。なので、昨日の内に一連の沙汰さたを、洗いざらい西園寺亜矢華に電話にて話したらば、わずか半日でスピーディつぶさに今作戦を用意してくれたって寸法すんぽうよ」

「なはは、流石さすが西園寺財閥の次期党首・西園寺亜矢華さんって感じやの。もうあのお方に、この世で出来ん事って無いんちゃうかってくらい、何でもありやな……って、ちょい待ってんか。何で煜が西園寺亜矢華さんの電話番号とか知ってんねや。西園寺亜矢華さんに一番近い麻琴を弟に持ちながら、俺かて西園寺亜矢華さんのアドレスとか知らへんねんぞ」

「ふん。それならば昨日のS.O.B.終了後に彼女がだな、ファンシーなデザインに彩られたプロフィール帳の用紙を、直接そっと僕に手渡して来たに決まっておろうが。ふん。僕は別に知りたくもないのだが、番号以外に彼女の好きな物やら性癖情報までもが網羅されていたけどな。ふん。モテる男はつらいぜ」

「なはは、おかしいな? 俺はそんなもんもろうてへんねんけど。ちゅうかそのメモ書き、言い値で買うわ。俺に売ってくれや。いや、売れぇ!」

「ふん。それは駄目だろう。幾ら僕でも本人の許可無く他人に携帯番号などを教えるものかよ。もっと言うと法的にも問題だし、プライバシーの侵害だろ」

「なはは、真面目か。流れでボケろや。そいでその勢いのまま、ホンマにゲットしたろう思うとったのに。なはは、あっ、俺マジでアカンかも。ショックで寝込みそうやわ」

「ふん。恨むなら普通過ぎる貴様の外貌がいぼうを恨めよ凡人ぼんじん

「なはは、qあwせdrftgyふじこlp、くぁwせdrftgyふじこlp、なはは、ナハッナハッ!」

「ふん。又しても圭助の頭がショートしやがったか。次の出番までには復活しておけよ」

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