第11話 ~水曜日のダダンダウン~
次なるR1-M1のセカンド・ミッションは、「美人女子高校生コンビの
ふん。人気の高校生芸人ともなると、今回みたく事前に対戦告知をし、S.O.B.を行う事が当たり前になってきている現状だな。
「なはは、お笑い史上主義のこの御時世、誰しもが名を上げようと企んどる。その手っ取り早い方法の一つに、既に有名になっとる芸人とのS.O.B.で勝利するっちゅうやり方がありますわな。今回の金色マカロンの対抗馬である
「ふん。特に今や人気の高校生芸人で、しかも金色マカロンクラスとなれば、S.O.B.の申し込みも引っ切り無しで予約が必要らしいな。
「なはは、案外そう言う子が大物になる逸材やったりするんよね。対する時間きっちりに到着しとる金色マカロンは、両者共に、「聖ホリプロ女学院高等部」出身で、今回はその学園内の
「ふん。それにつけてもR1-M1は凄いな。S.O.B.の場所や時間の詳細等々、全ての情報が
「なはは、そないな事言わんといてえな。俺かてネットを駆使したんやったら、この程度のインフォメーションは提供出来るっちゅうねん。こっちは人の心が
「ふん。そう遠くない未来に、バーチャル・リアリティの技術的大躍進が、それさえも
「なはは、西園寺亜矢華さんが
「ふん。なるほどな。しかし、西園寺亜矢華は見た目からして、ザ・御令嬢と言った風貌なのだが、相方の娘さんは真逆を行っているな。ここの校風には到底似付かわしくない、金髪ショートヘアとバチバチのメイクが似合っているギャルだからな」
「なはは、「ギャルがギャグとか超面白くね?」ってなノリで始めたんやで。なはは、超おもんな」
「ふん。しかも健康的な小麦肌に日焼けをした褐色黒ギャルときている。ふひ。
「なはは、やめときやめとき。きっと性格も腹黒いんちゃうますのん。知らんけど」
「ふん。どうした圭助。
「なはは、せやねん。一つしか歳が変わらんさかい、俺が一歳の時に
「ふん。そうだな。普通に考えれば、貴様の妹か
「なはは、それがちゃうねんな。えっとな、昨日ファミレスで賭け事云々の話をした時に、何でペナルティが女装やねんみたいな話になったやん?」
「ふん。そして時期が来たのならば、
「なはは、さいでっせ。んまあ、こないに
「ふん。見事に一言で
「なはは、煜は察しが良うて助かるわ。どうか安易な野郎と
「ふん。安易な野郎だ。しかしまあ、僕が見る限りでも、
「なはは、それやねん。近年LGBT問題やらで何かと
「ふん。それは色々と危ぶまれるな。その辺のデリケートな部分に踏み込むと、ややこしい事になること請け合いだぞ。更にはその麻琴君の真実が白日の下に晒されたとしたらば、多方面からフルボッコ案件必至だからな」
「なはは、そうやねん。しかも麻琴の奴ってば精神面だけやのうて、肉体面でもごっさ
「ふん。いくら強いと言えども、その辺の
「なはは、それが出来たら苦労はせえへんって。実は俺ら兄弟、小さい頃から空手道場に通っとってん。そいでもって二人共に黒帯やけど、妹は……やのうて、弟は俺よりも遥かに強いんでっせ」
「ふん。すんばらしいな。キュートでパワフルとか、「人気沸騰の宝石箱や~」、かよ」
「なはは、なんや煜? うちの妹の……やのうて、弟の事が気に入ったんか? 三百六十度、どっからどう見ても女の子やけど、男の子やさかいな。いや、男の娘やけども」
「ふん。圭助よ。さっきから貴様、何度も弟を妹と言いかけているぞ。大事無いか? 主に脳的に」
「なはは、せやねんね。妹の……やのうて、弟の性別に関しては、俺も時々訳が分からんくなってきとるんよ。麻琴の奴、
「ふん。何だその安っぽいラブコメ漫画みたいな日常は。それって一部の特殊な人々にしてみれば、喉から手が出る程に欲しい夢のような生活だぞ」
「なはは、そないええもんとちゃいまっせ。何せ妹の……やのうて、弟のセクシャリティーが……あれれ? ホンマにどっちやったっけか? ……なはは、ほらな? これもんの
「ふん。こりゃ早急に対処せねばな……と思ったのだが、次に披露するフリートークのネタにも使えそうだし、何より面白そうである。なので、どうか圭助にはこのまま突っ走ってもらいましょうぞ」
「なはは、アホなこと言いなさんなや。だって弟やぞ? 男やぞ? いや、例え麻琴が妹やったとしても家族やからな? そんなんめっさ近親愛やんかいさ? ったく、姉やら妹に過度な幻想を抱いとる奴らとか、
「ふん。この話を軽く身構えておったのだが、どうやら本人にとったら気が狂いそうになる深刻さだったらしいな。おや? どうやら渦中の麻琴君が我々の存在に気が付き、こっちに向かって精一杯の笑顔で手を振ってくれているじゃないか」
「にはは、おーい、お兄ちゃーん! あーし頑張るッスよー! もし今日勝つ事が出来たならー、今夜はいつも以上にぎゅっと優しく抱きしめて欲しいかもッスー♥」
「ふん。だそうだぞお兄ちゃん。そんな
「なはは、そげな
「ふん。最早
「なはは、煜の言わはる通り、ありのままの麻琴を受け入れて、次のステップへの弾みとせねばアカンのかもしれまへんね。そんなの関係ねぇし、オッペケペーのオッパッピー。……オロロロロロロロ!!!」
ふん。笑顔のまま嘔吐するほどに、本格的に圭助の頭が
「ふん。おい、データベース。挑戦者の小娘が出くわしたぞ。早いとこ復活し、貴様のやるべき仕事をしやがれませ。目立綯の説明をば
「なはは、くぁwせdrftgyふじこlp……ゲロロロロロロロロ!!!」
「ふん。
すると、遅れて到着した目立綯と思しきその彼女だが、「~♪そこな自我が崩壊した男子よ~、正気を取り戻したまえ~♪」と仰せになりながら、いきなりミュージカル風に歌を歌い始めたのである。
「~♪目立綯は同人作家でもありまして~、本日入稿日だった為~、つい先程まで執筆中だったのである~。遅れて申し訳なかった諸君~♪」
ふむ。そうやってお笑い芸人に二足の草鞋を履かすパターンって随分と増えたよな。しかもクオリティの高い功績を挙げると来たもんだ。その逆も然りで、異業種がお笑い業界にちょっかいを出す機会も多くなった気がするぞ。一例を挙げると、ヒップホップ・ミュージシャンや漫画家や声優が、M-1グラ○プリにチャレンジをするとかだな。
「ふん。しかしまあ、そんな事はどうでもよくなる位のベルベットボイスを奏でやがるお嬢さんじゃねえの。ふう。周囲のギャラリーも一斉に頬を染め、
それによって奇跡が起きた。何とパラレルワールドへとトリップしていた圭助までもが、神速で元の世界へと舞い戻って来たのである(笑)。彼女の鈴を転がすような発声は、それ程までの効果が有ると言う証明なのだね。
「ふん。
「なはは、恥ずかしながら黄泉の国に有りました、「冥土」喫茶より帰って参りました。なはは、お笑い的においしくなーれ♡」
「ふん。はいはい、
「なはは、それがちゃいますねんな。あの男装の麗人さながらの演出で現れた彼女は、常に芝居がかった○塚歌劇団員口調で喋るんが特徴の
「ふん。そうなのだな。ふむ。よくよく目を凝らしてみると、篠塚恵美から少し離れた後ろで、恥ずかしそうにおずおずと隠れている女子がいるみたいだぜ。あれが噂に聞くペ○ソナ能力と言うやつか」
「なはは、我は汝、汝は我やで……って、なんじやねん(なんでやねんの亜種)ワレ! ……ったく、ちゃうがな。あのツインテールな髪型で、目元を前髪で隠しとるあの子こそが目立綯でっせ。二人共、「ワタナベエンターテインメント学芸大学附属高等学校」出身やね」
「ふん。なるほどな。だが、あれだと
「なはは、せやねん。しやけど目立綯の声帯模写の技術はホンマもんで、丸で声色を
「ふん。ものまね番組における伝統のサプライズ、「ご本人登場」
「なはは、せやけど目立綯は長めな
「ふん。おなご共はプリクラや自撮り写真でも、
「なはは、……チッ、これで煜の女性ファンを離れさせよう
「ふん。そんな危険なトラップを仕掛けてあったのかよ。ふう。危ねぇ危ねぇ。と言うか、貴様ぼて
そんなで、両雄が揃った所でS.O.B.が開始となり、ジャンケンで勝った金色マカロンが先攻を選択する。
圭助曰く、コントを得意とする金色マカロンなので、勿論今回も初公開の新作コントで臨む模様だ。でもってネタの内容だが、前半はSっ気満々の新堂麻琴が西園寺亜矢華を凌辱するのであるが、後半は西園寺亜矢華が鞭を
その対する目立綯はと言えば、先程の金色マカロンのコントを一人で二役、完璧にまで再現して見せたのである。ふむ。確かに凄い芸なのだが、同じネタを二回も見せられる事に、観客は
ふむ。だがしかし、今回は惜しくも敗北した目立綯ではあるのだが、このまま彼女の物真似レパートリーが増え続け、コントや漫才、或いはフリートークのスキルが上がったと考えれば、恐るべき強者となるポテンシャルを秘めているのである。ふん。
「~♪どうやら~、
「オーッホッホッホ! モブキャラがちょいと目立ってみた所でこの体たらくですわ! ですけれども、必ずやリベンジをかまして差し上げますから、首を洗って待っていなさいなですわよ! 金色マカロンのご両名!! オーッホッホッホ!」
「ふん。目立綯の奴めが。やはり彼女の芸は神がかり的だな。西園寺亜矢華と全く同じ声なので、活字だけだと見分けが付かぬ、迷惑極まり無いキャラなのだぜ」
「なはは、ホンマに声だけは瓜二つやな。例え目立はんが不細工やったとしても、俺は声の補正だけでお付き合い出来ると確信したで。もう完全に西園寺亜矢華さんが脈無しやと判明しよったら、その時点で目立はんに乗り換えて口説き落としたんねん。ほいで晴れて恋人同士となった暁には、西園寺亜矢華さんの声でめっさ
「ふん。外道の極みだな貴様は。……と言いたい所だがな、その時は僕にもお声掛け下さいませ。僕とてKAGUYA-HIMEのボイスで
「なはは、そらなんぼなんでも思い過ごしやって! もしそうやったとしても、そいつは
*
――今般のS.O.B.の際、金色マカロンに対して向けられる粘りつくような視線を、鋭き野生の勘を持ちたる西園寺亜矢華のみが感じ取っていた。
「にはは、あー、強敵だったけれど今回のS.O.B.にも勝てたしー、さくっとお兄ちゃんの事もおちょくれて気分は最高ッスよー。つーか、どーかしたッスか亜矢華先輩ー? にはは、亜矢華先輩ったら、すっげぇ怖い顔しちゃってからにッスー。あーしら金色マカロンの勝利なんスからー、もっと笑顔笑顔ッスよー。お笑い芸人は常に笑っとけって、亜矢華先輩いつもあーしに言ってるじゃないッスかー」
「……麻琴さん? もしかして、アナタは何も感じておりませんの?」
「にはは、何の事ッスかー? あっ、「感じる」って、ひょっとしてエッチ的な方向の感じるって意味ッスかー? にはは、亜矢華先輩ったらマジでどエロッスねー」
「そうですわね。わたくし、見られる事に興奮する異常性癖の持ち主な、変態どすけべ色情女ですもの。目線にはとても敏感なのですわ」
「にはは、涼しい顔で亜矢華先輩、マジかっけーッス! よっ、性欲のカタマリ!」
「馬鹿も休み休み言いなさいな。わたくしは真面目な話をしていますのよ。先のS.O.B.の間中、芸を披露しているわたくし達の事を、じっと見詰める気配がありましたのよ」
「にはは、そりゃギャラリーもいっぱい居ましたッスしー、見ている人の数もそれ相応になっちゃいますッスよー」
「いいえ、そうではありませんの。何と言いましょうか、邪悪で怨みのこもった思いの様な……ともあれ、とても嫌な感じの人を見る目が、たった一つだけ御座いましたのよ……何だか嫌な予感が致しますわ……」
「にはは、多分思い過ごしッスよー。んもう、亜矢華先輩ってば真面目過ぎなんスからー。でもそんな所がー、ギャップで超愛くるしかったりするんスけどねー」
「……わたくしの思い過ごしならよいのですけれど……」
「にはは、それかその熱い眼差しって、あーしのお兄ちゃんの物の疑いが濃厚ッスよー。お兄ちゃんってば亜矢華先輩の事マジで好きッスからねー。あっ、やっちまったッスー。にはは、お兄ちゃんには内緒にしとけよって言われてたんスけど、ついつい口走っちゃったッスー」
「オーッホッホッホ! それは当然ですわね! わたくしは地球上の生きとし生けるものから愛される存在ですもの! そんな事はとっくに承知しておりますわよ!」
「にはは、あんれまあ。この恋は実りそうもないので、うちのお兄ちゃんが不憫でならないッスー。にはは、ご
――だが、この時の西園寺亜矢華の認識は正しかったのである。校舎の方から彼女達の一挙一動を、苦々しい顔で見つめる影が、確かにそこに存在していたのであった。
*
ふん。まずは
ふん。なので聡明な僕に抜かりなしだ。実は先程の金色マカロン対目立綯のS.O.B.中、
ふん。何故に
だがその予想に反し、卍糧は首尾よく期待に応えてくれたご様子。何故ならば数分前、
それから間もなくして、卍糧の奴めだけが僕らの元へと戻って来た訳なのだ。
……ふん。そう言えば少しだけ不可解な事があるのだよ。僕は志國三の誰かしら共、連絡先を交換した記憶は無いのだが、何時の間にやら僕の携帯に、奴ら三人の電話番号とメールアドレスが登録されていたのだ。こんな芸当、一体どうやって
「なはは、ほら見てみい、どないやねん。うちの卍糧ってば予想を上回る優秀さやろがいや」
「ふん。微塵も期待していなかったのだが、疑ってごめんね。そして、どうやら体育館裏にて容疑者を拘束しているのだとよ。さぁ卍糧よ。その場所まで案内を頼むぞ」
「なはは、まあ待ちや。折角の卍糧再登板でっせ。何の為にわざわざこの場所に戻ってこらした思てんねん。ちょいと彼女をこねくり回したくはないんけ?」
「ふん。凄いしたい! だがな、今はそんな事をしている場合ではないのだ。急ぎ現場に急行せねば」
「なはは、ちょっとくらいええやないか。取り敢えず卍糧出しといたら、皆が幸せになれんねん。この子の無敵な
「ふん。今のこの状況は、全然どうでも良くなって
「なはは、ほれほれ卍糧ったら。こうやって全身を撫でたると、完全にうっとりした乙女の顔になりよりますわ。嬉しさのあまり尻尾が左右に高速フリフリで、殆ど発情した雌やんかいさ」
「ふん。まあ、テレビ界の三大視聴率は、「ラーメン」・「子供」・「動物」らしいからな。
「なはは、これは別にTVショーとちゃうけども、人気あるんは正解や思いまっせ。実際ミーチューブやインスタの世界でも、ただ単に
「ふん。
「なはは、いやぁ、
ふん。こうして僕と圭助は卍糧の後を付いて行き、志國三の元へと駆け付けた訳だ。ふむ。
「フッ、到着しましたか、ダダンダウンのお二人。安心して下さい。こうして既に
「オー、全く
ふん。志國三の話を端的に纏めるとこうだ。
この束縛している嫌疑者だが、目出し帽で覆面をし、その手に握りしめるのは水ヨーヨーと言う、
その怪人に、
そこで初めに
だが、これに
そんな中、リーダーの
しかし、そこは流石の優輝誾がアビリティを発揮。「目には目を、水には水を」って事で、彼は
そんな中、リーダーの山田漢だけは何もせず、お菓子を食べ続けていた。
ふん。山田漢よ。いいや、この
「フッ、こちら側の世界へ飛ばされて以来、本格的な武力衝突は初めてでしたね」
「オー、その通りネ。だけど元の世界の化け物共と比べたら、
ふん。漫画好きのこいつらの事だ。話を
ふん。哀れな奴らだ。狂信的に漫画を敬愛する余り、現実と虚構の区別がつかなくなっているのであろう。ふふ。だが僕は気が触れた輩にも寛容であるぞ。妄想の世界を喜々として語る志國三の気持ちを踏みにじるのは野暮と言うものだからな。僕は
「ふん。取り敢えずこの
「なはは、後でこのフェイスマスク被って、みんなでGTA ○nlineの強盗ミッションごっこやって遊ぼうで! ほな、一気に
「イヤーン、そうでありんす! わちきは「オカマだけにお構いなく」の一発ギャグで人気を博した、
「ふん。ブレイク後間もなくして、彼女は性別適合手術を受けて、戸籍上も本物の女性となったよな。それからは美人だけが取り柄となってしまい、お笑い芸人としては
「イヤーン、こんな
「フッ、ここはこの稀代の奇術師、優輝誾にお任せあれ。ボクの代表芸の一つである催眠術にて、全てを吐き出す様にしてご覧に入れましょう。フフッ、さぁ、佐藤春菜さん。ボクの瞳をジッと見詰めて下さい。
「オー、誾の幻術に掛かればイチコロネ。どんな相手であろうが、立ち所に言いなりにさせる事が可能なのヨ」
「ふん。最早何でもありだな。その内
「なはは、それって多分俺らが映画版補正って事でごっさ格好良うなったり、ジャイロたけしやらがめっさええ奴になったりするストーリー展開までは見えたで」
「ふん。その回限りのゲストキャラクターが、使い捨てるには中中に勿体なかったりとかな」
「オー、そこでワタシなんぞはヒロイン属性が割り増しだったりするんよネ。と言うか、お前らちょっと
「ふん。所で物は相談だが愛瑠璃さんや。次は
「なはは、言うとる言うとる、めっちゃ言うてもうてるて。内なる煩悩の声が垂れ流しやがな。ほなら、俺も西園寺亜矢華さ(略)」
「オー、お前ら清々しい位に女の敵ネ。何でこんなのが女性に支持されているのか、ワタシには
「フッ、長らくお待たせ致しました皆さん。術式完了ですよ。では瑠璃さん。佐藤春菜さんの証言記録役をば、宜しくお願い致しますね」
「オー、既にワタシの携帯にて、動画撮影がスタンバイ済ネ。
「フッ、さぁ、佐藤春菜さん。犯行の動機などを、洗いざらい話してもらいましょうか」
「イヤーン、それはでありんすな、芸人人生が
「ふん。駄洒落とかそこいらに居る素人の所業かよ。一体全体どうしてくれるんだ、この空気をよ。よもやその様な軽薄ギャグが、犯行理由ではあるまいて」
「なはは、すべっとるなぁ~。しかも芸風かて、昔のまんま変わってへんのが辛いわ~。懐かしさはあれど、そら売れんくなるて」
「オー、やっぱり誾の技が失敗しているんじゃないかネ? これはダダンダウンとワタシが調子乗っちゃって、
「フッ、あのさぁ、佐藤春菜さん。お笑い芸人としての血が騒ぐ気持ちは分かりますが、その手の
「イヤーン、
「なはは、んまあそらね、仕事が激減してもうて大変やったやろうけども、悪事に手ぇ染めたらあきまへんわ」
「イヤーン、そうなのでありんす。でもね、初めは小型のアクアリウム程度に止めていたのでありんすよ。何だか水の揺らぎや音を見ていると落ち着いたのでありんす」
「ふん。せせらぎの音や波の音、静かな雨音など、水の音には脳のリラックス効果があるらしいからな。それは原始の記憶とも繋がっていて、遺伝子レベルでそう言う風に組み込まれているのだとよ」
「イヤーン、そうしたらわちきの水への欲求は上昇し、結局は水辺のキャンプ場での、アウトドアレジャーにまでエスカレートしたのでありんす。その様に骨の髄まで水に魅せられ続けている
「なはは、不意に「どや? 似とったやろ?」て聞かれましても、俺らその
「ふん。そんな事よりも、今事件には黒幕が居やがった様だな。一体誰なのだ、その男は?」
「なはは、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、メールアドレス、生年月日、血液型、最終学歴、食べもんの好き嫌い、その他
「ふん。どーどー圭助。目が血走っており、どう見ても危ない人だぞ。ふん。ぽかんとしておる佐藤春菜よ。この様に圭助は家庭の事情(弟)で、ちょっぴり
「イヤーン、はいなでありんす。ええと、信じられないかもしれないけどでありんすが、その方とお会いしたのはそれっきりでありんしたし、本名は
「なはは、いや、キャピやあらへんねん。そないな軽いノリでやってええ事とちゃいますやんか。
「イヤーン、そこまでの大罪だったなんて、わちきの認識が甘かったのでありんすな。これは言い訳となりんすが、その時彼に、出し抜けに唇を奪われちゃったのでありんすよ。しかも舌を絡めまくる濃厚なディープ・キスでありんしたし、頭がぼーっとして、トロトロになっちゃったのでありんす。わちきもこんなに
「ふん。その野郎のアソコはテントを張り、そして貴様のアソコは水だけにウォータージャグだったのよんってか? ふん。ゆ○キャン△ならぬ、えろ○ャン△かよ」
「なはは、嫌やわ、煜さんったら。人気アニメ・ゲーム作品をモチーフにしたコスプレ・パロディアダルトビデオを多数制作しとるAVメーカー、T○tal Media Agencyみたいな事を言うてんちゃうわ」
「ふひ。とても応援していま
ふん。「あだるとびでおってなぁに?」ってな良い子のみんなは、誰か大人の
「なはは、ちゅうか
「ふん。
「なはは、せやせや。俺、気になります! こうなったらその男に是が非でも会うしかあらへんな! そいで続きを話してもらうんや!」
「イヤーン、思い出すだけで体が
「フッ、盛り上がっている所に腰を折る様で大変恐縮ですが、ここまで話を聞かせてもらったボクなりの見解です。その
「オー、
「フッ、そうなると、ちょっとばかり厄介な事になりますもので、早急に対策を講じなければなりませんね。……ですがそれと同時に、ボクの武人としての血がたぎってしまっているのにも、何ともはや、困ったものですよ、フフッ」
ふん。
「イヤーン、だからわちきってば、もう一度あのお方に再会出来るかもって期待感で、不道徳を重ねていた面もあったのでありんす。よくよく考えると、わちきの恋心はピークを迎えていたのでありんすな」
「ふん。そりゃ完全にサイコパスの思考だぞ。しかし、その助言者の
「なはは、このタイミングで、今更それ気にするぅ? 別にええやん。お笑いのやる気を向上させる、女子人気を獲得する為には、色男が多いに越した事はありまへんわ」
「フッ、ですが手掛かりも多いに越した事はありませんからね。さぁ、佐藤春菜はん。もっと核心的に重要な何かがあるのであれば、
「イヤーン、そう言えば、あのお方は別れ際にこうも言っていたのでありんす。「クックック、
「ふん。僕らを
「なはは、こっちには超弩級高校生芸人の志國三が居る事に気付けへんかったのが敗因やね。その野郎も逮捕待った無しやで」
「イヤーン、でもそれって、又再びあのお方に会える可能性が高いって事でありんす。イヤーン、これって運命の赤い糸で結ばれているって証拠でありんすよね。イヤーン、レッツ仲睦まじく、刑務所に
「なはは、春菜はんって、そう言うポジティブキャラクターで売ってましたよな。今回の場合は褒められた事と全然ちゃいますけども、何事も前向きに捉えるそないな所が、お茶の間の皆さんも好きでしたんやで」
「ふん。しかし、どんなに自身の人生が上手くいっていないからと言っても、罪を犯してしまえば全てお終いって事さ。ふん。佐藤春菜よ。大人しく牢獄にて臭い飯を喰らいながら
「イヤーン、シビアなー。……けれども君の言う通りで、ぐうの音も出ないのでありんす……そうでありんすな……わちきは自首するでありんすよ……イヤーン、
「フッ、皆様お疲れ様でした。佐藤春菜さんから引き出せる情報はこんな所でしょう」
そう言いながら優輝誾が指を鳴らして術を解いた後は、佐藤春菜も自分の
「フッ、それでは佐藤春菜さん。このまま警察署まで、ご同行願いましょうか」
「オー、この元オトコ芸人
ふん。僕は国家権力の犬と
「なはは、めっちゃおもろいか言うたら微妙やったけども、
「ふん。折角一度はお笑い道の軌道に乗ったにも関わらず、彼女は不覚にも外道に落ちてしまった。ふん。人生とは何が起こるか分からないものだな」
「なはは、悲しい話やけど、ごもっともやで。せやけどな、世間では一発屋芸人て
「ふん。それには僕も文句なしに全面的に同意する。掛け替えのない一生分に相当する誇るべき宝さ。そして圭助よ。これにて、めでたしめでたしではないからな。その佐藤春菜に最後の一線を飛び越えさせた真犯人が存在する事実だ。許すまじき蛮行ぞ」
「せやな。しかもそいつは今のお笑い大国日本に横槍を入れるテロリスト気取りやしな。幾らお笑い至上主義に不満があるっちゅうても、犯罪が許されてええっちゅう理由にはなれへんさかいな」
「ふん。しかも
「なはは、ついに俺らの出番っちゅう訳やな! 必ず次で解決したろやないかい!」
「ふん。そうだな。頑張れよ圭助。骨だけは拾ってやるから、心置きなく貴様だけでやってこい。危なっかしいのはおっかないし、僕はお家でぬくぬくゲームでもしてるね」
「なはは、なんでやねん! 煜も来るんです! 何故なら俺とお前でダダンダウンですからね! ええ加減にしなさい!」
「ブヒヒ、何だかこちらの話が
「なはは、ナレーション風の締め台詞、ご苦労さんです山田はん。ちゅうかあんさんまだ居ったんかいな。一人だけ残って何しとんねん」
「ブヒヒ、基本的に難しい事は誾と瑠璃に任せっきりブヒ。
「なはは、そないな切ない事を言わんといて下さいよ。もうええわ。俺らと
「ふん。掛値無しに涙が溢れて止まらんぜ。僕らがそばにいてやんよ。ずっとずっと、そばにいてやんよ!」
「ブヒヒ、そんなもん別に良いブヒ。この程度じゃまだまだ食べ足りないし、同情するなら菓子をくれブヒ。二人して
「なはは、関心あんのは食欲オンリーかーい。もうええわ」
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