第6話

落ちてるのって、まさかしなくてもレイだ!

あの子、助けたのに無茶しちゃってさぁ!

私が助けたのに、自分から茨の道を行くなんて……

本当に凄いや。

レイったら、一瞬にして普通じゃなくなって、誰もおいつけなくなっちゃった。

だって見てよ、戦ってる戦士も怪物も落ちていく貴方に釘付けなのよ。

そんな間抜けな顔して、集中力切らしたら戦場では命取りなのにね、誰かが斬りかかっても対処出来ないよ?

……だから私ちょっぴり頑張るね。


泉から貰った武器を強く握り締め私は戦場を走る。


「ひのきのぼう、あんたそんなんでも武器なんでしょ、なら刃物並みの切れ味くらい見せてみなさいよ!」


レイの真下に向かうため私は目の前にいる怪物にひのきのぼうの斬撃を食らわせた。

するとどうだろう、ひのきのぼうはその見た目で普通の剣並の切れ味を見せた。

真っ二つに割れた、魚と中年男性のボディを組み合わせて造られた怪物。

真緑の液体が私にも飛び散った。


「えっ?」


自分でも驚いたのでぼうを触る。

でも感触はひのきのぼっこのまま。

……もしかしてこれ、私の意思で姿が変わるんじゃ……


「よし! じゃあやってみますか!」


ひのきのぼうに、のびろのびろと念じる。

長くなった棒を地面に立てて、棒高跳びの要領で私はぶっ飛ぶ。


「レイいいいい!!」


落ちていくレイに飛びつき抱きしめる。


「ライク・フェザー!」


翼を生やして彼女をお姫様だっこして、上空を飛ぶ。


「レイ! 大丈夫!?」


「……シェリー? なんでここに!」


「あんたが空から落ちてきたからじゃない! 何があったのよ!」


彼女は目を丸くして驚いたあと、気まずそうに何があったか説明した。


「この雲を払おうと思って剣を振るったら、何かに阻まれて……雲の女王に魔法全部無効化された」


「雲の女王……?」


雲の上を見上げてみると、その隙間から服ドレスをきた曇天のような髪の女が見えた。


「多分あの雲がこの事件の原因、あれさえ無くなればもう怪物は出てこない。けどあの女がいる限り、この雲を払えない……ごめん何もできなくて」


悔しそうに顔を隠すレイ。


「ごめん、私のせいなのに……」


「大丈夫、レイは悪くない」


「……ありがと」


本当はそんなこと思ってないくせにって顔してるなレイ。

少しその態度にムッとしたから、彼女の顔に顔を近づけて大きな声で言ってやった。


「言っとくけど、レイが消えればいいなんて思ってないからね」


「どっどうして!」


「親友を運命のイタズラで取られてたまるか! 悪いのはレイじゃなくて胡散臭い予言でしょ! あと頭のかたーい老いぼれ達! なぁにが選定の剣よ! たかが剣に翻弄されちゃってばっかみたい!」


ひとしきり文句を言ったからちょっとすっきりした。

私の文句を聞いた彼女はちょっと嬉しそうな顔をしてこぼれ落ちそうな感情を抑えている。


「……ありがとシェリーまた助けられちゃったわね」


「今日は初めてだよ、ひのきのあれはあんたにちょっぴり嫉妬したから邪魔しただけ」


「うっそ!」


「でも良かった~私が伝説級の武器手に入れなくて!やっぱり普通が一番だもん、面倒ごとは勘弁! それじゃ頑張って未来のおーさま。助けたんだからまた戦えるでしょ?」


軽口を叩くと、目ん玉を飛び出す勢いで怒ってくるレイ。


「シェリー!? あんた胡散臭い予言とか言ってたわよね!?」


「それはそれ、これはこれよマイフレンド。私はただ落ちていくレイを助けただけ、戦う力がない足でまといだもん。そんな私は親友に花を持たせる為裏方に回るよ、だって私の武器ひのきのぼうよ? 魔法も戦えるような魔法は今は使えないし」


「あんたねぇ! そんなかっこいい登場して、舞台から降りるってどういう事よ! 私を独りぼっちにしないでよ! 」


「無茶言わないでよ! マジで足でまといだって! あんたと同じ様なイタズラ魔法くらいしか使えないんだから!」


空の上でギャーギャー言い争っても事は前に進まない。

けど、私が一緒に戦うのは無理だって。

やっべー何も考えずに助けるんじゃなかった。

いやでも、助けなかったらレイ死んじゃったし。

とりあえず着地させて学校に戻れば良かったかなー。


「というかここまでどうやって来たのよ」


「まず地面を走った。怪物を切り刻んでね。けど間に合わないと思ったから、ひのきのぼうを長くして棒高跳びみたいに飛んで、スピードつけてライクフェザーで羽生やして飛んだのよ」


これまでの事を話すとレイは険しい顔をする。


「まって、そのひのきのぼう長くなるの?」


「長くなる以外にも、刀並の切れ味になったりするよ、簡単に言えば私の思い通りに形が変化するって感じかな」


その話を聞くと彼女は何か閃いてニヤリと笑う。


「シェリー、ちょっと勝てるかもしんない」


「えっ?」


彼女の作戦を聞いて、私達は空へと向かった。

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