番外編

 バイトを終え家路につき翌朝の登校時間。

 待てども暮せども天音が来ない、風邪でも引いたのかと気にした幸太郎は、天音に電話をした。


「あ もしもし?大丈夫か天音」

「ん?こーちゃん?何?」

「え」

「あー今日はパス ごめん」



 これはまさに、管理人がしでかした記憶の削除が悪さしたのである。ここからは、是非とも幸太郎に語ってもらおう。


 ☆☆☆


 え?どうゆうこと……なんで……だろうか。

 俺がずっと片思いをして来た初恋の想い人

 幼稚園からの幼馴染と念願の恋が叶った……はずだった。


 だが今の電話、なんだ……あれは。冷たすぎる気がするのは気のせい…か。


 とりあえず、しょうに確認しよう。


「しょう!」

「ん……」

「おいっ起きろ 何時だと思って……」

 違う違う。起こしに来たんじゃない。

 寝すぎだろ……。


「しょう!俺は天音と付き合ってるよな?」

「はあ?ああ……そうでしょ。昨日もうち来てたし。リビングでいちゃついてたんだろ。あぁ後五分寝たかったなあ」


 だよな?だよね?……おかしい。天音、寝坊か。寝ぼけてたのか。


 まさか!!実は昨日ユージと話して『あっわたしやっぱりユージが好きだった』『せやろ!あんなブサメンやめときっ』『そうだね。そーするっ』

 みたいになってたとか?!

 嘘だろ……。と、とりあえず学校……いこ。


 こんなに澄んだ朝の空気がやけに不安を煽り、走りたくなった。無駄に走って走って、学校着いたら早すぎて正門閉まってるじゃないか……。

 はあ、裏門へまわろう。



 一組に座る。いや二組で待ち構えたいくらいだ。待てよ。とりあえず周りの反応をみるか。


 しばらくして、船越学級委員がご登校された。彼女の挨拶も表情もいつもと同じだ。安定の船越さんだ。


「船越さん!」

「はい」

「俺は天音と付き合ってますよね?」

「はい?」

 あ、質問がおかしかったのか……。


「俺は天音の彼氏ですよね?」

「知りません。他人の恋や愛には興味ないので」

「…………」

 そうだった。この人、学級委員としては熱心でも桃色の青春を拒絶するタイプの人だった。


 ああ、もう構わない。普段自分から話しかけたりしないが、来た人に片っ端から聞いてみる。


「あ、あの 俺が天音と付き合ってるって知ってる?」

「は?えっ天音ちゃんて、ユージ君と付き合ってんじゃ?」


 え……っ。え えーーーーー!!!!!


 あ、そうか……みんなニセ彼氏を信じたままでユージも否定してない。余韻に浸りたいとか言ってくれてたし。


 天音……天音頼む、訳わからない事言いませんように。


 俺は意を決して心臓の鼓動が耳まで響き上がってくるも、二組へ行った。

 そこには……仲良く話す天音とユージが居た。なんであんな絵に描いたみたいな笑顔なんだよ。


 そんな笑顔ぶち壊す勢いでなりふり構わず叫んだ。


「天音ー!!!」

 一斉に教室にいた面々がこっちを向いた。おおお


「なに?どーしたの。こーちゃん」

「天音、ちょっと来て」

「あ うん」

 

 廊下に呼び出したものの相変わらず可愛い薄茶色の瞳を向ける天音。かわいい……あ、ちがう。聞かないと。


「天音、俺たち付き合ってるよな」

 あああソワソワする。ソワソワする。なんの間?即答しないこの間はなに……ぐっぐおーーーーっ貧血とかで倒れそ倒れたことないけど。


「……うん」

 おー神様!!!

 俺のただの思い過ごしでした。とんだ早とちりをしたみたいです。


「じゃ、今朝は?毎日一緒に来てるだろ学校」

「めんどくさかったから」

「…………え?」

 めんどくさい……面倒が臭い……なんで?


「行きも帰りもだし、朝なんて無駄に早いし。バイトまで一緒だしさ。」


 なんか違う。無駄に早い?

 早起きは三文の得、早起きすればあなたと私の時間が増えるのだ。それは紛れもなく得なのだ。


 どうしたんだ……あの、チュッチュして来た天音はどこへ行った……天音、こんな一日、いや半日で冷めるとかあるのだろうか。


 寝て覚めたら気持ちも冷めましたってか。

 困る。それは困る……。恋は冷めないうちにだ!俺はもう遠慮しない、諦めないって決めたんだ。

 ゾンビの天音にチューした時それは確定したのだ。


「天音 俺はお前が好きなんだ」

「……うん。だから付き合ったんでしょ」

 なんだよ……。


 俺は強行突破で二組の前の廊下、学年のお知らせ掲示板のすぐ下、意を決した。今!!!ここでー!俺のー!キスを捧げるー!


 天音をぐいと引き寄せ…………した。

 校内チューと言うやつを。



 バチーンッ



「こんなとこで……変態!!!!こーちゃんの変態!!」


 は ははははははは

 天音は恥ずかしい……らしい。が、天音は小さな声で『こんなとこで』と言い、『変態』だけを叫んだ形となった。


 今日から俺は変態呼ばわりされるの確定らしい。


 だが良かった。天音は俺のカノジョに変わりはない。


「どないしたん?」

「あ、別に……」

「水木君が天音にチューしたらしいぞ」

「え?」

「あー天音と付き合ってるからやろ なあ天音の彼氏さんですよねー?」


 と言うユージは天音の背中から手を回して頭をわしゃわしゃ わしゃわしゃしている。

 その手、その手を はなせ……。


「ああ。天音は俺の大事なカノジョだ」


「おーいっ始まるぞ!入れ!ちびどもっ」


 村上先生が来た。

 とりあえず教室に俺も戻る。


 と言う訳で、甘えたがりなはずの幼馴染のカノジョが急に冷たいんだが、俺はその心離してたまるもんか!!


 水木幸太郎でした。



 ――――――――――――――――――――――

 最後までご覧いただきありがとうございます。


 二人がいい感じの両思いで永遠に続きますように。

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高校からやり直し!幼馴染として逆行付添人の天音ちゃんは君をとにかく幸せにしたい 江戸 清水 @edoseisui

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