修学旅行 さよなら?付添人 天音
修学旅行に出発した一行は予定通り寺をまわり、大仏眺め、鹿公園に到着した。
「天音ーっ!!」と早々に叫んだのはニセ彼氏ユージである。何故か動物に好かれる天音。散歩中の犬は高確率で前足を天音の膝についてしっぽフリに来るのは日常茶飯事であった。鹿たちも例外ではない。
鹿せんべいを持ち一番のりで、鹿にあげようとしたからかもしれない。人間に馴れきった鹿たちは天音をチェイスする。
ビックリした天音は走り出すも逆効果で鹿を連れて走りまわっているのだ。
ニセ彼氏は、それをさらに追う。
完全にバカップルであった。
すっかり汗だくの二人はそこら中に散らばる鹿のフンを避けながら歩く。
そして、ならまち散策へと出発する。
完全自由行動な為みな思い思いに歩き出す。船越さんはスマホとメモ帳とボールペンを握りしめスタスタ歩いていた。
「ハアハア 疲れた」
と天音が言うのでユージは目の前にあったレトロな喫茶店へ入る。
しかし、そこには既にあっちのカップルが居られたのだ。カップルが座る席から斜め後に通された二人。
杏里は背を向けており、幸太郎が顔を向ける。
そして、注文したミックスジュースとアイスティーが来た途端にユージは天音の隣に移動する。
チラチラ幸太郎に目が行く天音のほっぺをムニュっと掴み自分に向けるのだ。
「だめだめっこっちみてや」
「あ、うん」
「ミックスジュース飲ませて」
とユージは自分のストローを天音のミックスジュースに差し込んだ。
そのストローはずっとそのままである。一度ドロドロに入ればアイスティーにカムバックはすべきでは無い。
ユージはいたずらに、天音がストローに口を運ぶたび自分もストローをくわえる。
「もー近いっ」
と笑い合う二人を、細い目はチラチラ確認してしまうのであった。
それに気付いたのか杏里は少しずつ右側にお尻をずらし視界を遮る。
夜消灯時間前、旅館の中庭に隣接した縁側で座るカップルがいた。偽物では無い方だ。
ただ静かに寄り添う二人。その後の方にある自販機コーナーに水を買いに来た天音は、じっと二人の背中を見て「お幸せに」と呟いた。
部屋に戻る途中、「天音」と呼び止められる。
振り返ればユージが居た。手には水のペットボトル。
「これ買おうとしたんやろ?」
「ありがとう……」
ペットボトルを受け取ろうと近づいた天音をユージはぎゅっと抱きしめた。
「あいつのこと、好きなんか」
「…………」
「俺がそんな気持ち消し去ったら、ホンマに付き合ってや」
なんだ。いいやつじゃないか。
いいやつっぷりを出されると天音の心は罪悪感に苛まれる。そういえば勝太郎は何をしているのだろうか。部屋で怖い話大会して盛り上がっていた。要領がよく平和で何よりである。
天音は少しぽわんとしながら部屋へ戻る。まだ夜の九時台だというのに異常に眠かったのだ。
歩き回り疲れたのかもしれない。鹿から逃げ、カップルから逃げ、大仏を見て周り奈良公園の先にある寺で迷子になり。
布団に入ると他の女子が話しているが相槌を打ってるうちに眠ってしまった。
「あれ?天音ちゃん寝た?」
「ふー フガッ」
「あ 寝たみたい」
「いびきすごかったらヤダネ」
「私は歯ぎしりするかも」
「えー」
「私は、霊が見える」
「ちょやめてやめてマジ寝れないし」
楽しい夜はあっという間にふけていく。
しかし、天音はまたはあそこに反響の酷い白い部屋に居た
「いやあ、お疲れ様でしたね。よく出来ましたね〜」
「あれ?管理人さん?なんか声が変わりましたか」
「前任者は事実上、左遷です。人の担当から外れました。ミスばかりしてエラー起こすので」
「人、人以外って……」
「昆虫系かな。巣を乗っ取られ後悔、次こそは絶対に女王を守りたいスズメバチ みたいなものです」
「……はあ」
「本題ですが、付添人 斉木天音 無事目標達成です」
「え??こーちゃん幸せになるんですか」
「水木幸太郎の目標は『自分の為に人生を生きたい』幸せか不幸せかは重要ではないということです。」
「はあ」
「では、あなたの人生やり直しを始めましょうか。その件で申し訳ありません。前任者はやはりあなたの前世の記憶を消しています。上書き保存しました。アカシックレコードという宇宙のありとあらゆるものの記録上で、上書きしたようです。」
「…………」
「提案です。記憶を全て消し、新たに理想とする人生に転生するか、または斉木天音として今度は自分の人生を継続するか。どちらがいいですか」
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