一股目の男
そうである。あのツインテール美少女は、二股している。何股かは分からないが、一股は目の前に息切れしながら立つ幸太郎、もう一股はさっきのどこぞのイケメンだ。
「大丈夫か、天音」
大丈夫か否か、その息切れしている幸太郎が問われるべきである。
「あ ありがとう。こーちゃん……こんな重いのに」
「いや、俺よりは軽いだろ」
ニヤッと笑うしかない。推定体重どっこいどっこいだろう。体脂肪率の類を計算したら完敗するのは天音だ。
「急いで駅来てなんだった?」
「あ あ そう!トイレッ トイレだ」
「あ」
トイレへ駆け込む修羅場回避させた天音であった。
言うか、まさか言うわけない。言うなら見せたほうが早かったのにトイレの為に背負わせダッシュさせたのだから。
「歩いて帰る?」
「いや なんかお腹痛いし電車のるわ」
ついにトイレは大きい方であったとまで嘘をついたのだ。
「一緒に帰ろ」
「うん」
一緒に帰るなんて事は最近遠慮していたが、もうこうなったら逆に別れさせたほうが良いのではないかなんて意見も出始める。
天音に座らせ前でつり革をもつ幸太郎。
下からそのパッとしない顔を見上げる。たしかにさっきの男には負ける。ルックスはKO負けだ、だがこの男はいい男だ。男気があり優しく。少々優柔不断で自己主張の弱さが難点ではあるものの、あのツインテールには勿体ない。
今何を話そうにも電車の音で聞こえないだろう、声を張り上げる内容でもない。
天音はそっと下からパッとしない顔をみつめた。
何も知らない幸太郎は平和な顔で車窓から景色を眺めつつも、じーっと天音が下から自分を凝視しているのが少々気になっているようだ。
駅のホームに降り立った二人
「大丈夫かおなか」
「うん」
「あの……こーちゃん 」
「ん?トイレ?」
「ちがう。あのさ、杏里と……う 上手くいってる?」
「うん……たぶん」
心無しか素っ気ない返事を返す幸太郎。不安なのか、天音にそんな質問されたのは初めてだからか両方であろう。
天音はキスはしたか?毎日一緒に帰ってないのか?デートちゃんとしてるのか?
と聞きたいが聞く勇気がない。自分が聞くのもおかしいと悟る。
結果幼馴染二人はいつものように帰る。
「おばさん元気?」
「おう、元気すぎるわ。」
「ふふ」
「天音が最近来ないから、あんた喧嘩したのかって怒られた」
「喧嘩……ははっ」
勝太郎とはしょうもない喧嘩をしても、幸太郎と天音は喧嘩なんて無縁であった。
「もうすぐバレンタインだなあ。毎年天音くれてたなあ。チョコ。今年もよろしく!」
「え」
「どーせ、しょうにあげるんだろ?じやあ俺も欲しいな」
「ああ」
天音は杏里がバレンタインどう過ごすのか気になって来た。ここは要チェックである。
次こそは現場に乗り込んでやるっと意気込むのだった。
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