付添人 後編

パッとしないボケ野郎と……

「ふざけんなっ危ないに決まってんだろっ」


「なんだよーっうるせえ ボケ野郎は引っ込んでろ。今保健室連れて行くから。あれ、持ち上がらないっ、手伝って 誰かーっ重すぎ」


 天音を覗くイケメン吉高玲司、天音は驚いた。

 カッコいいのだ。前回はただウザかったイケメンを普通にカッコいいと思えるのは女子として再来した証である。


 さらに、自分を覗き込む幸太郎を見て、天音はドキッとする。

 パッとしない顔でも、天音は幸太郎の幸せを願う乙女心と前回好きだと言われた記憶でトキメキを感じたのだ。


「おっ天音 大丈夫か?机から落ちたんだぞ。壁に付いたままだった文化祭の飾り外して」


「え?覚えてない……」


 と言いながら妙な感覚に違和感を感じる。幸太郎が引く自身の腕、白い肌ながらなんだろうかこのプニプニした感じ。起き上がろうとすると、腹あたりに何かが邪魔する。贅肉だ、体が重い……のである。

 今回、容姿を落とすため管理人は仕方なく体型を変えたのだった。


「あ ありがとう……こーちゃん」

 そう発した声も、どこかこもっている。


「どうした?天音 保健室行くか?」


 ぐーっ


 天音の腹が鳴った。


 吉高玲司が笑い出す。

「天音ちゃん 腹へったんじゃん 弁当食べたら治るんじゃない〜」


 机に乗れば?と天音に提案しておいて、結果落下した女子に対して言う言葉では無い。


「天音、念の為今日は安静にしろ」

 幸太郎は優しいようである。



 昼休み


 天音はまだ自分をまだ鏡で見ていないが、これは見ておかなければ今後の作戦に影響が出る。


 トイレへ向かう天音

 心臓の鼓動が強くなる。


 一番端っこの洗面台で鏡を見た天音は


「あ そう来たか……白ブタだ」

 と呟いた。

 きっと158cm 70kg超えは確実なようである。

 ぽっちゃりの域は軽く逸脱しているようだ。

 ぼっちゃりの域に到達している。


 がっかりしている場合ではない、目標達成しなければ。自分はヒロインでも何でもないのである。


 教室へ戻り弁当を取り出す。


「……でか」


 迫力の二段弁当であった。丼一杯分はあろう白ご飯に、肉肉しい油ものおかず。野菜はプチトマトが一個だけ。

 さらに鞄の中にはまだ菓子パンが次なる出番を控えていた。

 こりゃあかんやろ……と内心天音はひいている。

 しかし、食欲はバッチリ備わっていた。


「しかし、食うよな。食費すごそう天音ちゃんち」

 と弁当を頬張る天音を見て吉高玲司は言う。


 甘い囁きで付きまとわれる心配は無さそうだと安堵するも、すっかり女子な天音には悲しい言われようである。


「ん そうだね……ちょっとダイエットしようかな」

「天音 ダイエットなんてしたら体壊すぞ。一に運動二に運動!」

 と言ったのは幸太郎。

 二人は毎日登下校歩いているようである。ぼっちゃりしたからと、態度が大きく変わらないのはいい男の条件かもしれない。




 五時間目




「はあい 期末テスト返しますよ。今回はうちのクラスに学年トップテン以内が二人もいました。先生は感動したわっ。」


 おのおのテスト結果と成績データを凝視。

「船越学級委員でしょ?あと一人ってだれー?」

 みんな成績優秀者に興味津々である。


 幸太郎は成績データを眺めてため息を漏らす。

「ああ 平凡だな」

 幸太郎はちょうど真ん中あたり148名中72位である。

 そして、天音の紙を覗いた幸太郎は言葉を失った。

 そこには、見たこともない一桁がぽつんと印字されていた。

 6位


「え?!」「え?!マジ」

 天音自身も驚きである。

 きっと今回は勉強にチートスキルを授かったのだろうか。





 放課後



 ダイエットの為天音は幸太郎と歩いて帰る。

「天音 あんなに成績良かったんだな」

「こーちゃんは?結局何位だったの?」

「どまん中あたり」

「ああ」

「あっ、しょーたろは?」

「さあ しょうも多分似たようなもんかな 双子だし」


 天音は思い出す。なんとしても、幸太郎に大学進学させよう。ちゃらんぽらんの勝太郎にキャンパスライフを謳歌させ借金まで幸太郎に押し付けるなんて、何が何でも阻止すべきである。


「こーちゃん バイト?」

「今日はない」

「じゃあ 家行っていい?勉強会しよう」

「おう。わかった」



 水木家前でボケっと立ちんぼのぼっちゃりさん

 片付けるからと3分待つよう言われたのだ。

 一応、幸太郎はエロ系萌系グッズを隠し、パソコンの履歴を消去したのである。


「どーぞー」

「お邪魔します」


「天音!成績めちゃ良かったんだって?」と幸太郎の隣に立つのは勝太郎。

 たしかに、人気男子であろう爽やか青年っぷりが今の天音にはよく分かる。


「ああ まあね。たまたまかも。まぐれ」

「俺にも教えてよ」

「しょーたろ何位だったの?」

「ん!」

 成績の紙を差し出した勝太郎。そこにはまさかの28位、

 完全に幸太郎は負けている。以前ファミレスで押してしまったやる気スイッチが作動したのか真面目にテスト勉強に取り組んだ結果であった。


「しょーたろには教えない」

「なんでたよっ」

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