②
「やぁやぁ、二人とも。忙しそうだねぇ」
クリスと話し終わった後、キーストンはそのまま王宮へと足を運んだ。
「……」
「……」
本当に忙しかったのか、突然笑顔で現れた腐れ縁の相手に対し、カイニスとルイスは怪訝そうな顔で出迎えた。
「随分お疲れのご様子で」
そんな二人の様子に気がついているのかいないのか……キーストンはニッコリ顔で答える。
「そう思うのならお前も手伝え」
額に手を当てながらそう言うカイニスは、どうやら相当疲れがたまっている様だ。よく見ると、うっすらクマもある。
「カイニス君がそこまで言うなんてねぇ。てっきり寝なくても大丈夫な人かと思っていたよ」
「そんなワケあるか」
カイニスは呆れ顔で答えたが、いつもの覇気は感じられない。
「まぁ、そうだよね」
これ以上会話をするのも邪魔をするだけ……と感じたのか、キーストンは軽く答えた。
「それにしても、いつも以上に殺伐としているね」
「それだけ色々な事が起きているという事です」
「まぁ、そうだよね。そりゃあ疲れるか」
「……」
何気ないキーストンの言葉に、ルイスは無言の笑顔で応える。
「……怖いよ。ルイス君」
「ふっふっふ」
「なっ、何?」
「いえいえ。全く、ようやくステファニー嬢の一件が終わったかと思ったら、今度はアリシア嬢の執事ですからね」
「そっ、それがどうかしたの?」
「いえいえ、本当に叩けば叩くほど色々と問題を出して来ますよねぇ。あの家は」
そう言うルイスの顔は……とにかく晴れやかな笑顔なのだが、まとっている全く雰囲気に合っていないせいもあってか、逆にものすごく怖い。
「あの家……ああ、ラーナ家」
ついさっきクリスと話をしてきたキーストンは特に考える事もなく、サラッと答える。
「ああ。しかも調べたところによると、密告してきたのもラーナ家で働いていた人間らしいからな」
「ふーん。ああ、だからカイニス君は全然信用していなかったワケか」
キーストンは「カイニスが密告者の証言を信用していない」という事と「密告者がラーナ家の使用人」という事しか知らず、その「どうして」という理由までは知らなかった。
「ああそうだ。タイミングもラーナ家の伯爵の地位がなくなったタイミングだったしな」
言われてみると、確かにタイミングが良すぎる。それはまるでクリスを陥れるために密告をしたとしか思えない程だ。
「それで、あなたは何しに来たのですか。まさか……ただ油を売りに来たわけでもありませんよね?」
そう言うルイスの視線は「暇なんですか?」と言っているかの様だ。
「あー、うん。さっきクリスさんに会って来た」
「それで?」
さらにルイスは問う。
「別に何も? クリスの様子を見に行ったのと、気になっていた事を聞いたくらいかな」
「気になる事……ですか?」
「うん。わざわざ報告を上げていたのはちゃんとやっているポーズだったのかってね」
「それで……なんて答えたんだ?」
「ううん、はぐらかされちゃった」
そう答えたキーストンに、カイニスとルイスはピクッと反応はしたもののカイニスが「そうか」と言った事以外は何も言わなかった。
「そんじゃ、僕は帰るねぇ。ちゃんと休憩取りなよ?」
「……取れたらな」
「まぁ、追々取りますよ」
キーストンの言葉に各々答えると、キーストンはそのまま部屋を出て、王宮を後にした――。
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