第9話 まだまだ続く、スクールライフ
実技場から出ると、ローランとアルマ、レディー・ミリムが立っていた。とりあえずローランに駆け寄り、大丈夫だったかを問う。
「大丈夫です。姉上の部屋から離れたら急にぼうっとなって、気がついたら見知らぬ場所にいた。姉上の逃げろの声にほぼ自動的に反応してしまいましたから。正直、何があったかもよくわかっていません」
少なくとも本当に大丈夫そうではある。しかし、自動的に反応したとはなんだ? ローランにとって、姉の言葉は軍隊並みの絶対的な命令として刷り込まれているのか?
「姉上?」
聞き咎めたのはレディー・ミリムだ。う、そう言えば彼女がいたんだ。なんで彼女がここに?という目でアルマを見た。
「私が学長に連絡したんです。学長が、レディー・ミリムが適任だとおっしゃって。それでいらっしゃったのです」
そういうことなら、今更隠しても仕方ないか。俺は3人に詳しいことを話した。
「6魔将ですか・・・。さすがに信じがたいですね」
レディーミリムが言った。無理もない。
「でも本当なんです。レディー・ミリム」
俺は言った。
「信じがたいですが、6魔将がかかわっているとなれば、魔導師ギルドも禁術たる過去視を使う許可を出すでしょう。後で確認します。とりあえずは王女様のことは事実と考えておきます」
「ありがとう」
「実技場の中を確認しますね」
「あ」
「何か?」
「いえ、ちょっと・・・」
逃げ出したい気分だ。とても彼女と一緒には入れなかった。レディー・ミリムは実技場に入るとすぐに出てきた。
「明日の授業、どうしましょうか?」
そう、内部はボロボロになっていた。
それからいろいろ後始末に追われた。学園と王宮とが話し合った結果、俺の身分は全教師には周知されることになった。事実は俺が直接伝えた。その時のレディー・リディアの表情は最初は面白かったが、あまりにも深刻過ぎて逆に気の毒になってきた。後で直接フォローしにいくべきかな?
過去視の結果俺の証言は裏付けられた。それと、エーリッヒの身分はまったくの捏造だった。学園では、これから入学制の身元確認を厳しくすべきかどうかという議論が始まった。
ミランダははっきりと快方に向かい始めた。しばらくしたら復帰できそうだ。
次の休みには一度王宮に帰った。里帰りという雰囲気ではなく、王女としてやらねばならない公務が、月に一度くらいはあるのでそれに参加するためだ。その際、それこそヨーロッパの貴族風のフリフリドレスを着る羽目になった。ようやく女子の制服に慣れてきたところだというのに、これはまたさらに上をいく。ヒール高っ、ウエストきっつ、ドレス重っ。すごく動きにくい。でも、むちゃくちゃ似合っちゃうんだよな。それはちょっと嬉しいんだけど。
ミーファとも話す機会があった。
「王女さま、変わられましたね」
俺の顔を見るや彼女は言った。
「魔力が一層上がり、精神パターンが複雑化したのを感じます。これはひょっとして、前世の記憶でも蘇りましたか?」
さすがに仰天した。
「なんで知ってるの?」
「前にそういう人の研究をしたことがありますから。そうなんですか?」
結構ストレス溜まってたせいか、俺は堰を切ったように一通り事情を話した。
「前世の人格だから、今の体への違和感がきつくって」
そう話をまとめると、ミーファは不思議そうな顔をした。
「人格? 精神パターンを見る限り、姫様は相変わらず姫様ですよ」
「だって、精神パターンが複雑化したとかって・・・」
「それは一般的には、成長したっていうことです。前世の記憶と今の記憶が混在して混乱しているのでしょうけど、自分がアリシア姫だということは自信をもっていいんですよ」
「そうなのか?」
「記憶の整理がつけば、慣れますよ」
それが彼女の結論だったが、俺は釈然としなかった。ただどっちにしろ、俺は俺で、これからもアリシア王女としてスクールライフを送っていくことに変わりないだろう。
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