第6話 覚醒

ボク達はただ歩いていた。

もうあの場所へは戻れない。

でもそれでも良かった。

ボクは、ボクは、ようやく。


命を守ったんだ。


お兄ちゃん.......?


2人は浜辺に居た。

ボクは少女の頭を撫でた。

神に喰わせるには勿体無い温もりが

掌を通じて身体中に伝わった。

ボクは 泣いていた。

今まで目の前で殺された命の分まで。

救えなかった輝きの分まで。


神様がお兄ちゃんを泣かせたの?


少女は不意にそう尋ねた。

ボクは頷いた。


だったら。


少女は笑った。

その笑みは、消えたあの子を彷彿とさせた。

少女はボクに斧を手渡した。


壊そうよ、全部さ。


「そうしよう」

ボクは立ち上がった。

辺りを見渡した。

汚い偶像がそこら中に鎮座していた。

ボクは斧を振り上げ、それを破壊した。

一つまた一つと崩れていった。


「こんなのじゃ足りない」

ボクは村に戻ることにした。

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