第5話 変革

大人達は少女を取り囲む。

少女は何かを唱えている。

あれはきっと最期の言葉。


また命が神に食われる。

そしてボクはそれを傍観する。

そう思っていた。


お前がやれ


ボクの左手には松明が握られていた。


え?


ボクが?


突き飛ばされ、ボクは真ん中へ躍り出た。

しゃがんでいた少女は僕を見上げた。

ボクの左手が鼓動を打つのを感じた。


ボクには。







気づけばボクは走り出していた。

松明を投げ捨て

代わりに少女の柔らかな手を握っていた。

数拍を置いて怒号が聞こえた。


逃がすな、逃がすな



群衆達が追いかけてくる。

逃げないといけない。

ボクは息を切らしながら森を走った。

少女はキョトンとしてボクを見ている。

「もう死なせない」

ボクの心がそう言葉にした。


ボクは神に背を向けた事になるのか。

ボクが悪いのか。


怒号が消えてから、ボクはそう考えた。

違う。


全て此の夜の所為だ。


あれ?ワタシ 神様の所へ.......

「行かなくていい」

ボクは少女にそう言った。

ボクは確信した。

神様なんて、存在しない。





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