光輝

 寺内てらうち光輝こうきはまだ幼かった頃の出来事を、朧気おぼろげながら覚えている。

 家の前の小さな庭にしゃがみ込み、行列をなして歩いているアリ達を夢中になってじっと観察していた時だ。光輝は大好きなお姉ちゃんの、泣いている姿を見たことがあった。

 彼女は小さな声で、ブツブツと何か言っていた。その言葉の一部分だけが耳に残った。

「おひめさま、だっこを、してくれないと、やだ」

 そう呟きながら光輝のことなど気づかず、涙を拭きながら下を向いたままとぼとぼと歩き、家の前を通り過ぎて二軒隣りにある彼女の家に入っていった。

 優しいいつものお姉ちゃんなら、光輝が庭に出ていると頭を撫でたり、大好きなあの笑顔で声をかけてくれたりするはずなのに。

 光輝にとって、彼女のニコニコした顔は宝物だった。でもあの日はいつもと違って、少し怖い感じがした。なので自分から話かけることができなかったのだ。

 お姉ちゃんが家の中へと消えた後、光輝はアリのことなどすっかり忘れ自分の家の台所に駆け込み、母を呼んだ。

「お母さん、お姉ちゃんが泣いてた。お姉ちゃんが泣いてた」

 お夕飯の準備をしていた彼女は、驚いたようにこちらを振り向き、駆け寄ってきた。そして光輝の顔を、持っていたタオルでいてくれた。どうやら自分では気づかない内に、涙を流していたようだ。

「どうしたの。落ち着いて。ゆっくり話して。何があったの?」

 母は光輝と同じ目の高さまでしゃがみ、話しかけてくれた。それで少し落ち着いて、お姉ちゃんが泣きながら帰ってきたことを告げると、溜息をついて教えてくれた。

「そう。何か辛いことがあったのかもね。でも大丈夫。お姉ちゃんは強いから。だから優しく見守っていてあげましょう。あなたも心の中で頑張れって応援してあげれば、きっと元気になるわよ」

 光輝も彼女は強いし元気だからと思い、大きく頷いた。

「うん、そうする」

と返事をし、拳を小さく握って頑張れ、お姉ちゃん頑張れ、と小声で呟いた。母は笑い、頭を撫でてくれた。

 その日はそれからずっと寝るまで、光輝は心の中で祈るように

「お姉ちゃん頑張れ、お姉ちゃん頑張れ」

と応援していた記憶がある。

 翌日、光輝がまた庭で遊んでいると、お姉ちゃんが笑って声をかけてくれた。

「こんにちは。何して遊んでるの?」

 彼女は昨日見た時よりずっと元気で、明るかった。いつもの大好きなお姉ちゃんに戻っていたのだ。その事がすごく嬉しかった。お母さんの言う通り、昨日ずっと応援していたのが効いたんだ、と思った。やっぱりお姉ちゃんは強いんだと知って、楽しくなった。

「うん! アリさんを見てたの!」

 光輝も彼女に負けないよう、大きな声で返事をした。

「あれ、元気いいわね! そうか、アリさんか。アリさんは何を運んでいるのかな?」

 そう言っていつものように光輝の頭を撫でてから、隣に座ってしばらく一緒にアリを眺めていてくれた。少し経ってから、

「じゃあお姉ちゃん、ちょっと出かけるから。またね」

 手を強く振って行ってしまった。普段なら寂しいと思うのだが、昨日の姿を見ていた光輝は、晴れやかな彼女の笑顔を見られただけで満足だった。

 その後また、家の中に駆け込んだ。

「お母さん、お姉ちゃんが元気になったよ! お母さんが言った通り、僕がずっと頑張れって応援していたからかな!」

 光輝は顔を見上げながらそう聞くと、母は笑いながら頭を撫で、微笑んでくれた。

「良かったわね。そうよ、あなたが応援していたおかげかもしれないね」

 光輝は本当に嬉しかった。ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、喜んだ。お姉ちゃんが元気になった! 僕に笑ってくれた! 頭を撫でてくれたんだ! 

 そう叫びながらはしゃいでいたら、少し気になることを思い出した。そこで飛ぶのを止めて質問した。

「お母さん。おひめさま、だっこって何?」

 母は目を大きく開き、しばらくの間黙っていたが、

「それ、どこで聞いたの?」

と優しい声で聞かれたので、正直に答えた。

「昨日、お姉ちゃんが泣いてた時、そんな事を言ってたから。してくれないと、やだ、だって」

 母はう~んと唸って首を横に傾けていたが、まあいいかという調子で教えてくれた。

「あのね。お姫様抱っこって言うのはね。男の子が女の子を、お姫様のように、大事に抱き上げることなの」

光輝はよく判らなかった。だからさらに尋ねた。

「どうやってやるの?」

すると母は、すっと光輝を抱きかかえて、

「こうやってやるのよ」

と教えてくれた後、ゆっくりと床の上に立たせてくれた。そこで判った。

「僕、何回もされたことある! お姉ちゃんにもして貰ったことがあるもん!」

 そう言うと、母は笑いながら聞いた。

「そうね。その時どう思った? 嬉しかった?」

「うん! うれしかった!」

すぐに頷いて答えると、

「じゃあお姉ちゃんは、男の人にそうして欲しいのかもしれないね。でもあなたにはまだ早いかな。お姉ちゃんを持ち上げるなんてできないでしょ?」

 意地悪くそう言ったので、頬を膨らませた。

「できるもん!」

 悔しくなって外に飛び出した。だがもうお姉ちゃんの姿は見えない。それによく考えてみたら、彼女を持ち上げることはできないと、幼心おさなごころでも判ったのだ。 

 でもそれを母の前では、認めたくなかった。自分がまだ小さいという事に腹が立った。だからその時、お姉ちゃんが喜ぶなら早く大きくなって、そのお姫様抱っこをしてあげたいと、強く心に誓ったのだ。


「私、こうちゃんのこと好き! 大きくなったらお嫁さんになる!」

 光輝は、通っている幼稚園の同じ組のみっちゃんという、おさげのよく似合う女の子に、そう言われたことがあった。

 光輝も彼女のことは嫌いじゃなかった。みっちゃんだけでなく、同じ組のよしこちゃんや隣の組のさよちゃんとも同じくらい仲が良い。どちらかというと好きな方に入る。

 でも光輝が本当に好きなのは、お姉ちゃんだ。なので、

「だめ! 僕は大きくなったら、お姉ちゃんと結婚するの。だからだめ」

 そう断ると怒った顔で聞かれた。

「おねえちゃんって、誰?」

「ないしょ」

と言ったら、もっと怖い顔で叱られた。

「きょうだいでは、結婚できないんだよ!」

 きょうだい? お姉ちゃんはきょうだいでは無い。光輝にきょうだいはいない、と母が言っていたことを思い出し、言い返した。

「きょうだい、じゃないもん!」

「じゃあどれくらい上の、お姉ちゃんなの?」

と聞かれたので答えた。

「よくわかんない。でも学校の制服を着てるくらい、大きいお姉ちゃん」

 すると彼女は光輝の肩を強く叩いてから、

「そんな大人の人が、こうちゃんなんか相手にするわけないわよ! こうちゃんのばか!」

半べそをかきながら、走ってどっかに行ってしまった。

 しばらくして、幼稚園のさおり先生が駆け寄ってきた。みっちゃんをいじめたのではないか、と思ったらしい。

「どうしたの? みちこちゃんと喧嘩でもしたの?」

 光輝は正直に、彼女とのやりとりを伝えた。するとさおり先生に叱られることはなかった。それどころか笑顔で聞いてくれた。けれど困った顔もしていた。

 光輝も謝ったりはしなかった。だって自分は悪くないと思っていたからだ。でも念のため、先生に質問した。

「僕が悪いの? 僕がみっちゃんにいけないことを言ったの?」

 するとどう言っていいのか迷いながらも、先生は言った。

「悪くはないけど、もう少し女の子には、優しくしてあげようね」

やっぱり悪くないんだと思ったが、女の子に優しくというのは、これまで母からだけでなく、お姉ちゃんからも教えて貰った事を思い出した。

 だから光輝は、これまで女の子に意地悪をした事など無かったつもりだ。いつも優しくしていたはずだった。しかしそれが今回の騒ぎに繋がったのだ。そこで尋ねた。

「みっちゃんにもそうしていたら、好きって言われた。でも僕がみっちゃんに言ったことは、優しくないの?」

 またさおり先生は弱った顔をして、よく判らない言葉を使った。

「う~ん、そうじゃなく女心おんなごころってあってね」

 光輝は首を傾げていると、続けて言った。

「ようするに、好きって言われた女の子には、ありがとうって答えた方がいいの。嫌いな子じゃなければね。あなたは、みちこちゃんが嫌いなの?」

 そう聞かれたので、首をぶんぶんと横に振った。すると先生はにっこり笑って、頭を撫でてくれた。

「だったら今まで通り、仲よくしてあげてね」

 光輝はそのまま、うんと言って頭を下げた。しかし先ほどみっちゃんが言ったことが気になったので、思い切って聞いてみた。

「あのね、先生。みっちゃんが、学生服を着ているお姉ちゃんは、僕みたいな子を相手にしないって言ってたけど、なぜなの? どうして?」

 さおり先生はさっきよりもっと悩んだ顔をして、光輝を睨んだ。かと思うと、腕を組みながらどこか遠くの方を見た。じっと何か、考えているみたいだった。

 なので何か教えてくれるのだろうと、どきどきしてじっと見ていたけれど、

「それは先生にも、判らないなあ」

と言い、目を合わさないでどこかに行ってしまった。だから家に帰って母にその事を伝えたら、笑って言った。

「さおり先生も大変だったわね」

 光輝にはよく判らなかったので、同じ質問を母にしてみた。そうしたら、少し寂しそうな顔をしていたけれど、答えてくれた。

「大丈夫。お姉ちゃんは、あなたを相手にしないなんて事はないから。でもね。いつもいつも構って貰おうとはしないように。お姉ちゃんだって、色々あるの。光輝だって、幼稚園のお友達と仲が良かったり、遊んだりお絵かきしたりしてるでしょ? その間、お姉ちゃんも学校のお友達と遊んだり、勉強したりしているの。だからあなたとばかり、遊んであげられない時もある。わかる?」

 そう聞かれて、光輝は頷いた。すると母は頭を撫でながら言った。

「だからいつも相手にして貰おうと思わないで、お姉ちゃんの事も考えてあげて。一緒に遊んでくれるようだったら、その時は一生懸命楽しめばいいの。お姉ちゃんが大好き、という気持ちを忘れないようにね」

「うん、わかった。そうする!」

 大きな声でそう返事をした。母はそんな光輝をぎゅっと抱きしめ、耳元でささやいた。

「あなたがお姉ちゃんを好きなのはしょうがないけど、お母さんの事も、そうやって好きでいてくれる? ずっと一緒にいてくれる?」

 驚いた。そんなことは当たり前だ。だから答えた。

「うん! お母さんも大好きだから! 僕はお母さんとずっと一緒にいるよ! お母さんを守るのは僕の仕事だから! お婆ちゃんからもそう言われてるし、お婆ちゃんの事も僕が守るんだ! だってうちに男の子は、僕しかいないんだもん! 男の子は女の子を守ってあげなきゃいけないって、幼稚園の先生もお姉ちゃんも言ってたもん!」

 光輝も母の体に抱きついた。すると母は泣きだした。でも時々こういう事があると知っていたから、背中にまわしていた手で、ぽんぽんと頭の後ろを撫でた。

 前にお婆ちゃんが教えてくれたが、母は時々じょうちょふあんてい、というものになるらしい。それは父と離れ離れになった事と、関係しているようだ。

 光輝は父が嫌いだった。それはすぐ怒ったりして母や、光輝を殴っていたからだ。その為父と離れ、お婆ちゃんと一緒に住むようになって嬉しかった。

 お婆ちゃんは優しいし、それに今の家の近くにはお姉ちゃんがいる。それに父といた頃より、今の母はよく笑うようになったからだ。

 それでも急に、寂しくなるらしい。

「お母さんは、お父さんのことがまだ好きなの?」

と、お婆ちゃんにこっそり聞いたことがある。だがその時すごい怖い顔をされた。

「そんなこと、ある訳ない! あんな男と!」

と怒ったので、それ以上は言わなかった。母が時々昔の、光輝と一緒に写っている家族三人の写真を見て、こっそり泣いている事を。

 それに母はお婆ちゃんの前では絶対言わないが、二人でいる時は、

「お父さんだって、昔はとっても優しかったのよ」

と、光輝が生まれる前の事や、生まれてからの事を教えてくれた。その時の母の顔は、ものすごく楽しそうでよく笑っていた。

 でも突然泣き出す時もあった。だからその度に母に抱きつき、ぽんぽんと背中や頭をさすったりするのだ。そうすると母は、ありがとうと言って笑ってくれる。光輝の頭を撫でぎゅっと抱きしめ返し、喜んでくれた。

 母が言うには、若い時に父と大恋愛をしていたらしい。年上だった父はすごく大人に見えたようで、とても優しかったそうだ。 

 母のお腹の中に光輝ができた時も、父は男らしく、

「僕の子を産んで欲しい。二人の為に一生懸命働くから」

と言い、付きあっている事自体を反対していたお婆ちゃんや父のお父さん達を説得したらしい。結婚できた時は、本当に幸せだったと母は泣きながら言っていた。その後は決まって、

「それで結婚した後も、約束通り彼はちゃんと働いてくれたのよ。でもね。時代が、不況が悪いのよ」

と、母は怒りだすのだ。本当は父が悪いんじゃないのよ、優しい人だったのよ、と。

 でもお婆ちゃんは、全く違った話をしていた。

「あの男は口先ばかりで調子の良い事を言うけれど、世間知らずなのよ。自分の思い通りにならないと、すぐ人のせいや会社のせいにする。しまいには世の中が悪いと決めつけて、その鬱憤うっぷんを光輝やお母さんにぶつけるんだ。女に手を上げる男なんて最低だよ!」

 光輝もお婆ちゃんの方が、正しい気がしていた。幼稚園でも暴力はいけない、教えられている。弱い者を苛めては駄目だとか、女の子には優しくするようにとも言われていたからだ。

 父はそうじゃなかった。だから父が悪いんだ、と今でも思っている。でも母は光輝の知らない、自分が生まれる前のそうじゃなかった頃の父を知っているからだろう。父の悪口は、二人の時だと絶対言わない。

 そんな時の母は、とても悲しそうな顔をする。だから光輝もそうじゃない、父が悪いとも言えず、黙って母に抱きつき元気づけようと心の中で呟くようにしていた。

「お母さん頑張れ、お母さん元気出して」

 そうしていれば、母も落ち着くのか笑ってくれるのだ。

「ありがとう、光輝。お母さん、ちょっと元気になった」

 それだけで自分も明るい気持ちになれた。好きな相手が喜んでくれると、嬉しいし楽しい。とても幸せな気分になれる。

 だから相手が満足する事をしたいと、いつも思っていた。お婆ちゃんにも母にも、そしてお姉ちゃんにも。

 あっ、そうか。光輝はみっちゃんやよしこちゃん、さよちゃんも好きだから、皆が笑顔になる事をすればいいんだ。みっちゃんが喜ぶ事を言わなかったから、泣いちゃったんだと気付いた。

 だが確か、結婚って一人としかできないってお婆ちゃんが言ってた。父と母みたいに一度離れ離れにならないと、別の人と結婚はできないらしい。

 だったら光輝が結婚したいのはお姉ちゃんだから、みっちゃんとはできない。でも彼女は、光輝のお嫁さんになると言った。

それはだめだ。お姉ちゃんに対しての、裏切り行為になる。もしみっちゃんと結婚したら、一度離れ離れにならないと、お姉ちゃんとは一緒になれない。

 光輝は悩んだ。どうすればみっちゃんも喜んで、お姉ちゃんを裏切らずに済むか、必死に考えた。そこでひらめいた。

 結婚は、もう少し大人にならないとできない事は知っている。だから彼女が光輝と結婚したいと言っても、今すぐではない。だったらみっちゃんには、

「大人になって、まだみっちゃんが僕を好きだったら、考えてもいいよ」

と答えれば良いんだ。

 だって彼女は前に、別の組のやっちゃんって男の子が好きだ、と言っていた。つまり時間が経てば、好きな人が変わる。だから大人になっても、僕の事が好きでいるとは限らない。

 彼女が光輝を好きという今の気持ちさえ、裏切らなければいいのだ。その上で結婚するとの答えを、出さないでおこう。こうしなければいけない答えを、今決めない事を先のばしと言うらしい。そうテレビのニュースを見ていた、お婆ちゃんから聞いたことがある。

 国の偉い人達が集まって、何かを決める時にもよく使われるとも言っていた。そんな人達がやっているのなら、光輝がしてもいいだろうと思ったのだ。

 お婆ちゃんは、先延ばしが良くない無い事だとその時教えなかったからだろう。次の日幼稚園に行った朝、みっちゃんと会った。光輝はすぐに謝った。

「昨日はごめんなさい」

 ぴょこん、と頭を下げると、彼女は驚いていたがすぐに笑って、

「いいよ。謝ってくれてありがとう。私も昨日こうちゃんに、ひどい事言ったからごめんね」

 ぺこりと頭を下げた。その後二人で仲直りをした。ああ良かった。みっちゃんが喜んでいる顔を見ると、自分も気分が良くなって嬉しい。そう思い、昨日考えていたセリフを言った。

「みっちゃん、あのね。大人になってから、まだみっちゃんが僕のことが好きだったら、お嫁さんにすることを考えるよ」

 きっと彼女が、喜んでくれると信じていた。しかし反応は全く違った。それどころか、さっきまでの笑顔が消え、

「なに言ってんの? もう私、こうちゃんのお嫁さんになんかならない。とおるくんのお嫁さんにしてもらうの。昨日、あれからとおる君に言ったら、いいよって言ってくれたから」

 彼女はそう言い捨て、光輝から背中を向け走り去った。その先には、彼女が口にしたとおるくんがいた。

 みっちゃんは彼に、抱きつかんばかりの勢いで突進した。そんな彼女を思いっきり痛そうな顔をして、受け止めていた彼の顔は、真っ赤になっていた。

 そうしてはしゃいでいる二人の姿を、光輝は口をぽかんと開けて見ているしかなかった。時間が経てば好きな人は変わると思っていたけれど、こんなに早いとは思っていなかったからだ。

 彼女と結婚しなくて済みそうだと判って、ほっとする気持ち半分、何か自分が捨てられたような寂しい気持ちになっていた。

「一応、仲直りはできたみたいね」

 驚いて振り向くと、後ろでさおり先生が顔だけで笑い立っていた。今なら判るが、あれは苦笑していたのだろう。

「うん。みっちゃんは、とおるくんのお嫁さんになるんだって」

 そう先生に教えてあげると、

「女心って、難しいのよ。どう? そう言われてこうちゃんはショックだった?」

 今度は先生の笑顔が、とても意地悪になっていた。でも光輝は首を横に振った。

「ううん。びっくりしたけど、お姉ちゃんを裏切らずに済んでよかった。だって答えを先のばしにするってことは、大きくなったらお姉ちゃんじゃなくて、みっちゃんと結婚しないといけないかもしれないでしょ。僕が本当に結婚したいのは、お姉ちゃんだから。僕はみっちゃんみたいに、結婚したい相手が急に変わったりしないもん」

 はっきりそう言うと、先生はびっくりした顔をしていた。だがすぐに笑って、頭を撫でてくれた。

「そう、偉いわね。こうちゃんにそれだけ好きになってもらっているお姉ちゃんは、すごく幸せね」

この時の先生の顔は、とても優しい顔をしていた。光輝は喜んだ。そうか。こうやってお姉ちゃんを好きで居続ける事は、お姉ちゃんにとっても幸せなんだ、と信じた。

 この時代、ストーカーという言葉はあったものの、光輝が理解できる訳はなかった。後に想い返すと、この考えはある意味危険だったのかもしれない。

 それでも好きだと想い続け、絶対に諦めないと決めたのはこの頃だ。この時光輝は、もう一つ学んだことがある。

「女心と秋の空、ね」

 先生がそう、ぼそりと言って離れていった。幼稚園から帰るとさっそくお婆ちゃんにその意味を尋ねると、呆れた顔をされた。それでも、両方ころころ変わりやすいものの例えだと教えてくれた。

 この時変えられた男の気持ちは、悲しいものだとも理解した。だから相手には、そんな想いをさせてはいけない。喜んで貰う事が一番だ。そうすれば自分も幸せで楽しいに違いないと、光輝はあらためて自分に何度も言い聞かせた。

 光輝が幼稚園の時にはまった遊びの一つに、折り紙があった。友達と遊ぶことも嫌いでは無かったけれど、兄弟がいなかったからだろう。幼稚園が終わり家に帰ると、一人で過ごす事も多かった、だから色んな遊びを覚えた。

 もちろん、家に帰ればお婆ちゃんか母がいる。でも光輝が幼稚園に行っている間はどちらも働いていて、幼稚園が終わる時間になると、どちらかが迎えに来てくれた。

 それでも二人は働いて疲れているらしいことが、幼くとも少しは感じ取っていた。家に帰ってきても掃除、洗濯等の家事にも追われて忙しいからだ。

 その為お婆ちゃんや母に心配かけないよう、一人で静かに遊んでいればすごく安心してくれると知っていた。だからなるだけ走り回らないよう、黙々と二人の目の届く範囲での遊びを覚えたのだ。

 その一つが折り紙だった。最初はお婆ちゃんから教えて貰った。それから幼稚園でも習った。先生に“かぶと”の折り方を教わった頃には、光輝は“座布団ざぶとん”や“手裏剣しゅりけん”のような簡単なものから、“つる”や“ふね”“かえる”等、かなり複雑な折り紙もお婆ちゃんのおかげで、作る事ができるようになっていた。

「うわっ~! こうちゃん、すごい! こんなのまでできるんだ!」

 他にも家で、色んな折り紙を教えられた子がいた。その為一度幼稚園で習っていないものでもいい、それぞれが好きな折り紙を作る時間が設けられた。その時光輝は“ちょう”を折ってみせた。 

 すると友達にはもちろん、先生達にも驚かれた。それから折り紙と言えば光輝、“折り紙の天才”などという称号を頂き、天狗になって調子に乗った。

 その経験が、折り紙に夢中となった要因の一つといっていい。子供は褒めて育てるとよく言うが、それも程度の問題だと大きくなった今では理解できる。

 だが幼い頃というのは、褒められて調子に乗ればどこまでもいく(ただし飽きるまで)というのは間違いない。とにかく光輝は自分の楽しみと、家庭の事情とがうまくマッチした、この折り紙という遊びに没頭した。

 また折り紙作りには、大好きなお姉ちゃんもよく付き合ってくれた。光輝のような男の子が好む遊びを知らない為、最初の頃はどう遊んであげれば喜ぶか悩んだらしい。

 しかし折り紙に夢中な事を知ると、彼女は嬉々として

「折り紙なら私も小さい頃、よくやったわよ! お姉ちゃんも教えてあげる!」

と一緒に遊んでくれた。それも光輝の楽しみとなったのだ。

 一人で遊べ、お婆ちゃんや母に心配をかけず、さらにお姉ちゃんと遊んで貰える。当時の光輝にとって、これほど楽しい事は無かった。

 彼女は、光輝が母と二人でお婆ちゃんの家に引っ越してきてから、よく顔を出して面倒を見てくれた。また母もお姉ちゃんがまだ幼い頃、よく遊んであげたと教えられた。

「あの子はね。昔からとても愛嬌のある、可愛らしい子だったよ。でも一人でいると、時々寂しそうな顔をする時があったの。決して内気な訳でもなく、友達がいない訳でもないのにね。私も一人っ子で、あの子もそうだったから気付いたの。そういう何も言い合わなくても感じる、共通点って言うのかな。お互い判り合える所が、お母さんとあの子にはあったから、年は離れていても仲が良かったの」

 また時にはこういった。

「光輝は男の子だけど同じ一人っ子だから、あの子はよく判っているのかもしれないわね。それに私もそうだったけど、小さな妹ができたように、あの子を可愛がっていたわ。だからきっと光輝のことを、小さな弟だと思って大切にしてくれているんだね」

 当時は余り理解していなかったと思うが、大人になってからはその意味もよく判る。その頃でも、肌ではそう感じていたと思う。実際にお姉ちゃんは光輝と一緒の時に、

「お姉ちゃんも同じ一人っ子だから」

と何度もそう言って頭を撫でてくれた。また決まってその後にこう続けるのだ。

「でもあなたは男の子だから、大きくなったらお母さんを大事にしてあげなさいね。男の子は女の人を守ってあげなきゃいけないの。女の人は、男の人に守って欲しいものなのよ」

「お姉ちゃんも守って欲しいの?」

 そう尋ねると、彼女はふっくらとしたほっぺを赤くして答えた。

「そうよ! お姉ちゃんは本当に大事にして守ってくれる男の人が現れるのを待っているの。女の子はみんなそう。だからあなたも、そんな男の子にならなきゃね」

「うん! 僕も大きくなったら、お婆ちゃんやお母さん、お姉ちゃんも大事にするし、守ってあげる!」

「ありがとう。じゃあお姉ちゃんもお母さんも、あなたが大きくなって大事に守ってくれる男の子になるのを待ってるわね」

 そういって頭を何度も何度も撫でてくれ、時々体をぎゅっとしてくれたりした。他にもお姉ちゃんは色々な事を教えてくれた。

「男の子は絶対に、女の子を殴っちゃダメ」

「男の子は女の子を、きつく叱っちゃダメ。どうしても許せない程悪い事をした時は、その子の為を思って愛情を込めながら目を見て叱ること。その子が大切だから怒っているんだよ、って思いやる気持ちで怒るの。そうすれば、必ず相手に伝わるから」

 それ以外にも、様々な事を勉強した。

「女の子は甘いものが好き」

「女の子は可愛いものとか、キラキラしたものが好き」

「女の子が作った食べ物を、美味しいって食べる男の子が好き」

「女の子はプレゼントが大好き。そこに少しだけびっくりさせるものがあると、もっと好き」

「女の子の気持ちが判る、優しい男の子が好き」

「いつまでもぎゅっとしてくれて、横にいてくれる男の子が好き」

「勉強のできる、頭のいい子の方が好き」

「運動もできた方が好き」

「背も女の子より高い方が好き」

「お金も持っていた方が好き」

と、後半の方はかなり彼女の個人的な嗜好が含まれていたことは、大きくなってから知った。

 だが幼い光輝には、これらの言葉が大好きな彼女の口から教えられたからだろう。強烈な印象を残して頭の中に刷り込まれた。どれだけ偉い先生の言葉よりも、どんな教科書に書かれている文章よりも大事だった。当時はそう信じ込んでいたのだ。

 ある時光輝は折り紙で、人形を折った。それを同じく折り紙で作った座布団に座らせ、お姉ちゃんにプレゼントしたことがある。

 女の子が好きなキラキラしたものにする為、金と銀の色紙を使った人形で作った。また座布団には、少し秘密の仕掛けを施して渡したのだ。彼女はとても喜んでくれた。

「私に作ってくれたの? 可愛い! ありがとう。大切にするね!」

 彼女は光輝の頭を何度も何度も撫で、またぎゅっと抱きしめてくれた。そうして貰うことが、大好きだった。光輝もよく、

「体が柔らかくて、ぷにぷにして気持ちがいいね」

と褒められるのだが、彼女もすごく柔らかく、ぷにぷにしていた。

 お姉ちゃんのほっぺは丸くて柔らかい。頬にすりすりしてくると、それがとてもよく判る。

 彼女の腕もそうだ。抱いてくれた時の二の腕が光輝と触れ合う時、不思議と夏はひんやりと冷たかった。だが冬は暖かく、ふっくらとした綿のお布団にくるまったような気持ちになる。

 あとは顔や体に押し当ててくる、彼女の胸だ。母の胸も幼稚園の先生達もそうだが、お姉ちゃんのそれは誰よりも弾力があった。

 今思えば、光輝は彼女の柔らかい顔と腕と胸で抱きしめられたくて、喜ぶようなことをしていたのだろう。子供ながらなんて計算高い、したたかなスケベだったのだろうかと恥ずかしくなる。

 だがそんな彼女も、いつしか遊んでくれることが少なくなった。受験勉強等で忙しくなると、ほとんど家へ遊びに来なくなったからだ。

「あの子も忙しいのよ。ちゃんと勉強して難しい学校を目指しているみたいだから、光輝もわがまま言わないで我慢しなさい。こういう時こそ、お姉ちゃんを応援してあげるのよ」

 光輝がぐずっていると、母にそう叱られたことがある。そういえば、女の子は頭がいい子が好きなんだと思い出した。

 だから彼女も、そういう子のいる学校に行こうとしているのだと思った。光輝はまだ小学校にすらいけない幼い自分が、とてももどかしかったことを覚えている。

 でも自分ができることは、母が言うように頑張っている大好きな彼女を応援する事だと思い直し、いつかやったように心の中で応援し続けた。

「お姉ちゃん頑張れ、お姉ちゃん頑張れ」

 

 彼女が目指していた難しい高校に無事合格したと聞いたのは、光輝がもうすぐ小学校に通う為のランドセルを、お婆ちゃんに買って貰った頃だった。

 光輝は小学校に入るのが、とても楽しみにしていた。早く勉強をしたい。そして運動もしっかりやりたい。何よりも早く大きくなりたい。そう思い続けていた。

 少しでも早く、お姉ちゃんに近づきたい。少しでも早く彼女に好かれるような男の子になる為、光輝は早く時間が過ぎて欲しいと願っていた。

 小学校に上がってから、彼女はほとんど家に遊びに来ることが無くなった。でも朝学校に行く時だけは、しばらく一緒に歩くことがあった。

 しかし距離はほんの短い区間だ。彼女が高校に行く為のバス停に向かうまでで、光輝は近所の同じ小学生達が集団で登校する為に集まる場所までの道だった。

 それでも家を出てからほんの百メートルちょっとの間だけ、大好きな彼女と肩を並べることができた。

 バスの時間があるので、ほぼ決まって七時五十五分に家を出る。光輝もその時間を見計らい、ランドセルを背負って玄関を出ると、彼女は声をかけてくれた。

「おはよう。今日もそこまで一緒に行こうか」

「うん! 行こう!」

 元気に返事を返し、時々手を握ってくれるのを期待しながら短い区間を歩き終え、先に集団登校の集合場所に着くと、

「じゃあ、お姉ちゃん、行ってくるから。あなたも気をつけてね。ちゃんと勉強するんだよ」

「うん! お姉ちゃん、いってらっしゃい!」

 手を振って二人は言葉を交わし、バス停に向かう背中をずっと見続ける。そんな毎日が続いていた。

「そんなに早く集合場所に行っても、誰もいないでしょ。もっと遅くても良いのに」

 何も知らない母は、そう言った事がある。確かに光輝達が集まり、小学校に出発するのは八時十五分だ。もう少し遅く家を出ても十分間に合う。

 だがそれでは一緒に歩けない。だから早く出て彼女と歩いて見送った後、他の友達達が来る間は集合場所で一人ぼんやりしたり、教科書を開いて勉強したり本を読んだりしていた。

 やがて光輝の目的に気づいた母は、いつの間にか何も言わなくなった。朝たまに光輝と一緒に玄関を出て、お姉ちゃんに会うと

「今日も光輝をお願いね」

と声をかけたりしていた。お願いといわれても、行く先はほんの目と鼻の先までだ。特に車の往来も激しくもない、のんびりとした田舎道を歩くだけだった。

 歩いている間、二人は何を話す訳でもない。最初は学校の事とか話そうとしたが、すぐ着いてしまう為途中になってしまうからだ。その為次第に話題は、自然と短いやり取りが中心となった。

「いい天気だね」

「雨だね」

「今日は暑いね」

などと、当たり障りのない言葉を交わし合ってばかりだった。それでものんびり歩くだけで、十分楽しいと気づいた。それから光輝は、余計なことは話さなくなった。彼女と一緒にいるだけで、胸が一杯になったからだ。

 自分にはまだ大きすぎる、黒のランドセルを背負い歩く光輝。隣で茶色の手提げバックを持ち、胸に赤いスカーフを巻いて紺色のセーラー服を着ているお姉ちゃん。光輝の歩幅に合わせながら、彼女はゆっくりと歩いてくれていた。

 光輝は少しずつ変化していく、彼女の姿を見るのも楽しかった。前はうなじが見えるくらい短い髪の毛だったが、高校生になってからは髪を伸ばし始めたようだ。少しずつ長くなる襟足えりあしは、いつの間にか赤いゴムで束ねるようになっていた。

 それでも学校の都合があったらしく、彼女はもっと早いバスに乗る為、家を出ていくこともある。よって時々一緒に歩けないことがあった。

 そんな日は、朝からとてもつまらない。光輝が学校の友達と喧嘩をしたり、先生に叱られたりする時は決まって彼女と会えなかった日が多かった。

「どうしたの。なぜそんなにかりかりして機嫌が悪いの?」

「今日は朝から落ち着かないね、光輝くん。ぼんやりしていたり外を見ていたりして、先生の話を聞いてないでしょ」

 担任の女の先生がそう怒る度に、またやってしまったと後悔し反省する。

 光輝はお姉ちゃんや母、お婆ちゃんにずっと言い聞かされて育ったからだろう。女の人を困らせることは、なるべくしないように気をつけていた。

 だからクラスの女子にも優しくしていたし、それをからかう男子達にも堂々と宣言していた。

「男の子は女の子を、守んなきゃいけないんだよ!」

おかげで女子から支持された分、男子からはいい子ぶりやがって、と敬遠されたりもした。

そうかといって、男子と喧嘩ばかりしては先生を困らせてしまう。先生だって女の人なのだ。だから普段はぐっと我慢するのだが、どうしても耐えられず、爆発してしまうこともある。それが朝、お姉ちゃんと会えなかった日なのだ。

 彼女とたまたま手をつないで歩いている姿を、クラスの男子に見られたことがある。そのことをからかわれたりすると、光輝は胸を張って啖呵たんかを切った。

「お姉ちゃんは僕の大事な人なんだ! 何か文句があるのか!」

 それでもからかい続けるバカな男子は、相手にしないようにしていた。けれど中にはそれを聞いた女子が、

「光輝くんは、その女の人が好きなの?」

と、悲しそうな眼で尋ねてくる子もいた。女子のそうした目には弱い。相手は守ってあげなきゃいけないし、優しくしてあげなくちゃいけない。まして泣かせてはいけないのだ。困った光輝はそれでも

「うん、お姉ちゃんが大好きなんだ」

と正直に告白すると、そうなんだと呟いて顔を伏せ、遠ざかっていく子もいた。初めはその背中を、ぼんやり見ていることしかできなかった。だが徐々に何度か続くと、表現を変えてみることにした。

「あのお姉ちゃんは、僕の憧れの人なんだ」

 そう言い始めてからは、拒絶反応が以前より少なくなり、やがて

「じゃあ、憧れているだけなのね。私は光輝くんのことが好き!」

と、喜んで告白されるようになった。こうなると、光輝は困った。正直に

「ごめん、僕は……」

 なんて言ってしまえば、女の子に泣かれてしまう。それどころか逆ギレされ、殴られたこともあった。だから、

「ありがとう。仲良くしよう! 友達だね!」

と返し、小学生の低学年くらいまではその手を使って、逃げ延びる方法を身につけた。

 だが小学校も高学年になると、男子よりも女子の方がませてくる。そのせいか、

「光輝くん、私と付き合って!」

とストレートに告白されるようになった。これは難しい問題だった。女の子を傷つけず、しかし付き合うことを避けるには、どうしたらいいか。

「君のこと、嫌いじゃないけど……」

と答えを先延ばしにして二、三日悩み、その後

「僕、まだ付き合うとかそういうのができなくて……周りの男子にもからかわれるし……仲のいい友達じゃあ駄目かな」

と、恥ずかしそうに俯きながら返事をする方法で切り抜けた。

 こうすれば、決して嫌ってはいないことが伝わる。もしかすると、好きなのかもしれないと相手に思わせられた。でもそれは今恥ずかしくて言えないのだろう。でもこれ以上無理に迫ると、僕に嫌われてしまうかもしれない、と深読みさせられるようになった。

 嫌われるよりは、好かれた友達のほうが良いらしい。だからか少し他の女子達とは違うと勘違いをさせることで、光輝は女子から嫌われず、悲しい思いをさせずに済む方法を見出した。

 その為いつの間にか女子の間では人気者になり、男子からは女たらしと呼ばれた。

 光輝はお姉ちゃんの言いつけ通り、勉強のできる子になる為一生懸命学校で勉強をした。運動も人一倍頑張った。だから成績はいつも上位で、運動も走らせたら学年だと一、二を争うほどだった。 

 だからといってそれを鼻にかける訳では無く、男子とは適度に馬鹿話をしながら、女子達とも仲良く会話し優しく接していた。

 よって小学校時代はずっと学級委員長に任命され、六年生では生徒会長に祭り上げられたこともある。卒業する頃にはファンクラブまででき、学校を去る時は女子達に囲まれ、おおいに泣かれた。

 この時やっと光輝は悟る。全ての女の子を泣かせないようにするなんて不可能なのだ、と。だから悲しい想いをさせない為には、自分が大切にしている好きな女性、ある程度限られた女性だけでいいのだと気がつくのだった。

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