大仏失踪の余談
異母兄弟のお母さんの菖蒲さんにどうしても、「義理弟の五貴にあっていって」と、草太郎は強引に押し込まれて、五貴の部屋の前にやってきたのだが。
五貴の部屋の前には何重にもお札が貼られ、禍々しい気を放っていた。
「こっわ!」
なんとか五貴のドアを叩こうとするが、手が震えて叩けない。
そこへこの蒼月寺の坊さんの弓人がにこにこ笑いながらやってくる。
「さすが御兄弟ですねぇー。さっそくご歓談ですかぁー?」
「え、ええ、ま、まぁ。しかしなんでこの部屋のドアお札が何重にも張ってあるんですか?」
なんか部屋禍々しいんですけど?と、草太郎は内心半泣きだ。
「ああ、五貴様は悪霊にとりつかれやすい体質でしてね。周りの人にも悪霊悪神をばらまくこともありましてぇー、周囲を巻き込んで、死人が出るかもしれない体質なんですよぉー」
にこにこ弓人は語る。
「え!?」
その場で固まる。
「ぜひ、五貴さまにあっていってやってください」
暢気な様子の弓人は、五貴の部屋のドアを開けようとする。
「いやいやいや、ちょっと!」
慌てて止めようとするそのとき、中のドアが開いて、五貴の部屋の中からこの寺のもう一人のお坊さんである村上都矢が出てくる。
都矢は草太郎の方を見ると、鋭い目を細める。
「今日は五貴様に会うのはやめておけ。今度にしろ」
「えー、面白そうなのにぃー」
ぶーたれる弓人の頭を、都矢は叩いた。
「馬鹿者!ふざけるな!!……そうだ。草太郎君、五貴さまが君にあったら渡してくれと言われている」
都矢は草太郎に、緑色のお守りを手渡した。
「これは?」
「変死した老婆の髪の毛が入ったお守りだそうだ」
「ふっざけるなよ!」
草太郎はお守りを床にたたきつけて、ぷんすこその場から歩き出す。
その後ろ姿を見送り、弓人は口を開く。
「五貴さまの体調はいかがでしょうか?」
げらげら笑い声が聞こえてくるドアの方を見て、眉間のしわをもみながら都矢は答える。
「まぁ、面白い玩具、いや、兄ができたから、五貴様は元気なようだ」
「そうですか。それならよかったですね」
にっこり弓人は微笑んだ。
早くいい依り代ができるといいですねぇーと、弓人は微笑んだ。
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