恵み

 恵みだ。などと言われても、それから何かを恵まれたことなんてなかった。

 それはただ洗い流していくだけ。何もかも飲み込んで。


 住処を飲み込んで。人を飲み込んで。文明を飲み込んで。


 生命の源は全てを等しく源へと帰していく。


 暖かさも、感情も、希望も何もかも流された後、気が付いた。


 それは正しく恵みだった。


 それがいつから、自分たちへ向けられたものだと錯覚していたのだろう。


 蔓延るものを全て洗い流して無に返す。


 誰への恵みかなんて、考えるまでもないことだったのに。

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