わたしの世界
何も見えないから、わたしにとっての世界はそこで終わりだった。
何も見えないから、わたしにとって世界はどこまでも続いていた。
自分の部屋が好きだった。
自分の家が好きだった。
公園が好きだった。
学校が好きだった。
教室が好きだった。
普段歩く道も、気さくなおじさんのいるお店も、優しいお姉さんがいる美容院も。
みんな、大好きだった。
世界はどこまでも続いていて、果てがなかった。
真っ暗な闇のように。
何も見えないように。
そう。わたしは何も見えていない。
何も見えていなかった。
光があった。
それは希望で、憧れで、理想で、道標のはずだった。
闇を照らしてくれる光。
今まで見えなかったものも、きっと手に入れられる。
でも、照らされ現れたのは絶望だった。
誰もが望んでいて、わたしは望んでいなかった。
果てはあった。あまりにも近く。
世界はあまりにも窮屈で、わたしはあまりにも矮小だった。
真っ黒なキャンパスに描かれた理想は、理想だった。
自分の部屋が好きだった。
自分の家が好きだった。
公園が好きだった。
学校が好きだった。
教室が好きだった。
普段歩く道も、気さくなおじさんのいるお店も、優しいお姉さんがいる美容院も。
みんな、大好きだった。
世界はどこまでも続いていて、どこにも続いてはいなかった。
きっと、わたしの手に余る。
闇しか知らないわたしには、光は眩しすぎた。
だからもういらない。
わたしに光はいらない。
わたしの世界では、石ころだって宝石になるんだから。
手放すのは簡単だった。
凄く、欲しかったもののはずなのに、手に入れてしまえばなんてことはなかった。
みんな大変だね。
世界のあり方に縛られるなんて。
誰かが叫んでいる。
何か、あったのかもしれないね。
でもわたしには関係ない。
わたしはこんなにも幸せで。
世界には果てがなくて。
理想通りなんだから。
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