第5話
「あぁ、もういや」げんなりした気分と怒りが諦めに代わる間ぐらいの感情で
ビッチがしゃがみ込みつらつらと独り言を言い続ける
「大体なんで私が人のために働かないといけないわけ?しかも失敗したら私のせいで従業員のミスも私のせい。そいつらは働かないし文句しか言わない誰も私を褒めてくれもしない」
永遠に続きそうなその愚痴の先には大勢の人で行列ができていた
最後尾とデカデカと書かれた管板が宙に浮いていてそこには
DivisionLand 清掃員 募集者
と書かれており長蛇の列は一日では会場にすら到達しないように見える
「はぁ・・・どうしようかしら」
近くの植え込みがある煉瓦に座り込み地面を見つめているとふと影が差した
見上げると制服姿の女の子がこちらを覗き込もうとしていた
「なんか悩み事?」
黒く長い髪を背中で切りそろえ前髪もぱっつん大きな目に整った顔立ち
セーラー服とローファー姿だ
「・・・あー、初めまして。そうね悩んでるわ」ちょっと驚いてから素直に返す
「もしかしてあれ?ランド入りたいの?」
「そうね、って貴方詐欺師とかなのかしら」
「ううん~学生だよ見たらわかんじゃん」制服のリボンを摘み、ちょっと不貞腐れたように言う
「なんで1人なの?友達は?」
「友達今日みんな予定合わなくて1人になっちゃた帰るのもいいけど暇だしぃ」
「…毎日来てるの?」
「ぅーん、ほぼかな。なんでわかんの」
小首を傾げにこりと笑う。
「何時でも入れないと帰る発想は産まれないでしょ」両頬に拳を当てハァとため息をつく
「なんか元気無さげだよね、あと凄い格好しててつい声掛けちゃったんだけど」
「ああ、よく言われる。可愛いでしょ」何故か淡々とした口調
「うん、めっちゃ可愛い何処で売ってんの」
キラキラとした目を向けられ驚くビッチ
「そういう言い方は初めてだわ…大体は腫れ物扱いか、からかいとか。おかしい人扱いなんだけどね」
「えー別にどんな格好でもよくない?自分が良いと思うの着れば」
「ふふ、そうよね私も同じ考え」
「初めて笑った。いー笑顔じゃん」
「なんか貴方ナンパみたいね」
「えー、じゃナンパしちゃう。ワタシ花音(かのん)貴方は?」
「私はビ…アンナ、よ。ええそう」警報ブザーが頭の中でリフレインしたのかビッチが言う
「アンナちゃん、よろしく」
花音がビッチもといアンナにはにかんだ笑顔を向けた
「よろしく。カノン、悪いんだけど私ここのランドに入る・・パスを持ってないの」
「あー、そうなんだ。でもうちらも忘れたりすんだよね」
そういう時は!と言いながらカノンが立ち上がる
勢いで跳ねる艶やかな黒い髪が青い空に映え、美しい
「潜入さくせーん」
「せんにゅうさくせん?」
頭に?マークが浮かぶビッチにカノンが探偵のようにLにした人差し指と親指を顎につけ格好をつけた
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