第4話

「えーえーえー、1人でやるわよ、コノヤロウ」


ビッチがロリータ服のポケットから手のひらサイズでラメ入りピンク、レースがあしらわれた棒を取り出した

よく見ると魔法少女が持ちそうなステッキで手で振ると✨トゥインクル✨と鳴る

音がした後にハートマークが光だしそれを耳にあてるとつ、つ、つと音がした

「もしもし?私はビッチエンジェル。

そちらコンサムシティのテーマパーク、なんだっけ新しいテーマパークの~~そうDivisionLandにゲーム機を提携してるんだけど。ああそうそうちょっと依頼があるのそちらに遊びに行きたくて」

ニコニコと楽しそうでありながらどこか横柄な態度でステッキに話しかけている

「そうね。今から行くわ案内の人間も用意して」


また振るとキラピカリーン✨と音がして通話が切れた

よし、と呟きそのまま家を出ていく


地上に上がると赤い錆ついた鉄柱や瓦礫をよけ通りに進んでいく


ロリータ服で彼女が歩む道は当然治安が良いとは言いづらくニヤニヤした顔で背の高い男と数人のゴロツキが後からついてきた

それに気づいているのか居ないのか歩きながら鼻歌を歌い裾を揺らしブーツでむき出しの地面を歩いていく

何も話しかける事無く男は距離を縮め拳を握りしめ後ろから殴りかかる

が、スっとピンク色の頭は消えしゃがんだビッチがいつの間にか銃を取り出していた

GAAN,GAAN,GAAN


銃声が響き渡り、足を撃たれた男が呻く

倒れ込み男が見上げると頭に銃口を突きつけたビッチが開かれた瞳孔を向けていた


「膝でもついてろカス、次は頭ぶち抜くぞ」

怒鳴ると男が喚く

「!!!fuckYou!!!……Shit…!!!」

銃声にゴロツキは蜘蛛の子を散らすように消えた

はっ、と鼻で笑い大きな通りに出た


道は排気ガスで白く染まる空気

怒鳴り声とエンジン音更にはクラクションを鳴らし続ける乗用車を見てウンザリしたような顔をした

そして正面を睨んだビッチが道のど真ん中に歩いて行く

当然急ブレーキをかけた車から人が身を乗りだす

ビッチが編み上げブーツに触れ操作すると

厚底から空気が噴射され身体が浮く

おっと、と呟き体制を立て直す更に靴に手をかけると前方に車より早く走り出す

「これ本当に楽。電気代半端ないんだけどね」

仁王立ちしたまま腕を組んで疾走した


コンサムシティは上から見ると街自体がハッキリ白と黒に別れている


壊れた家屋にコンクリートや鉄筋などが崩れた瓦礫の山

屋根の無い部屋に住む人々、汚水を飲む子ども武器を乱発する痩せた男

腕のない垢でまみれ変色した服を着る人々

上から見ると黒く荒んでいる


川を挟んで


白いビル郡に戸建て住宅街。

緑豊かな公園に整備された都市部ゴミ1つ落ちていない舗装された道路

しかも全体が高く白い壁に覆われ街全体が一つの箱庭に似ている


人工の川には一つだけ橋が架けられていた

迷彩柄と黒い銃を構え隙のない屈強な兵士に固められた、ただ1つだけ貧困と富裕層を繋ぐ橋は門を固くとじていた


聳え立つ門は見上げてもその終わりが見えない


「アーやっと着いた」肩で息をし膝に手を付いたビッチが疲れたのかしゃがみ込む

「これ、背中とか足とか支え有りにしても空気抵抗酷すぎセグウェイ逆で乗ってるようなもんならイケるかと思ったけど。

スピード出すと押さえつけられてる感ヤバい」

「改良しよ」

そしてまた先ほど電話していたステッキを取り出した

真ん中にある小さな星を押すと光が中に浮かび3D映像になった

スーツを着た男性がペコペコ頭をさげ手のひらでビッチに話しかける

「ようこそ門まで御足労ありがとうございます」

「ええ、どういたしまして」

「パスポートはおもちですか?」

小さなサイズのサラリーマンは馬鹿丁寧に話す

「OK、出すわ」ビッチが3D映像をタッチすると顔写真つきのカードが横に出た

「指紋を」

「はいはい」更に空中に手をかざすと手が光り認証されましたと文字が浮かぶ

「ただいま開門しますので少々お待ちを」

「はいはい」

目の前にいる手乗りサラリーマンが消えた


2,3歩ビッチが下がると門が落ちた

ものすごいスピードで橋に吸い込まれていく

ズゥゥンと川へ門が落ち田畑によく見る水門のように水が関となり渡れるようになる

「無駄に圧巻よね」

ビッチが渡るとまた上に戻ってゆく

数名門が下がったことに気がついた人間が走り侵入しようとして上がる門に押し上げられ地面に叩きつけられた

グシャッとトマトのように潰れた


橋の先にはシルバーの長いベンツが止まりビッチより背がある男が数名、此方に近づく

よく見ると先ほどの手乗りサラリーマンもいた

「ビッチエンジェル様、お待ちしておりました」

「ささ、どうぞこちらへ」

「さぞおつかれでしょう」

ベンツにはたくさんの高級な料理やシャンパンが用意されビッチは当たり前のようにそれを受け取る

「ご苦労さま、このままランドまで行って」

「かしこまりました」

「はぁ、やっと目的が果たせるわ」

「ん?何か仰いました?」

「いいえ、早く行きたいなぁって」

「ご期待ください誠心誠意、接待します」

ビッチがニヤリとし、シャンパンを呷った



〜数十分後〜





「なぁ〜んで〜よぉ〜」

両脇に警備員が並び脇を腕に抱えられ

ズルズルと引きずられるビッチ

抵抗なのか叫びながら足と手をバタつかせて暴れるがそのまま為す術なく小さな部屋に連れてこられる


取り調べ室に似たそこで机を叩くビッチ


「どうして、この私が!入れないのよ」


テーマパークに着き、入ろうとした途端に警報ブザーが鳴り響いて取り押さえられたビッチは怒っていた。

サラリーマンその1が答える

「まさかこんなことになるとは。AIが貴方を危険人物と見なしました」

「どこが危険だってのよ!提携したアトラクション全部引き上げるわよ!」

「それだけはご勘弁を。ただ今ほかの方法を検討しますので」

「それじゃだめなの、今入りたいのよ!

第一何を基準にしてAIは入館不可なのよ!」


「主に殺人、傷害、窃盗、暴行刑法に触れる行為に対して罪悪感がないもしくは経験がある思考パターンですかね」

先ほどまで人を拳銃で撃ち抜き、強盗を企てるビッチが明後日の方を向いた

「おかしいわねぇ、私そんな人間じゃないわよ」声が裏返る返答

だがサラリーマン2は戦々恐々とした風でビッチに言う

「誠に申し訳ありませんが、AIが危険人物と見なしては入館出来ません後日何とかしますので今日はどうぞお引き取りを」

サラリーマンその3,その4にも頭を下げられ地団駄を踏みながら取り調べ室から1人出てくるビッチ


「清廉潔白な人間が何処にいるのよ」

「居るとするならそれは人の物を奪わなくても食うに困らず、悪意を向けられることも無い環境にいただけでしょ。無菌状態で育てられたキノコみたいね、すぐ腐りそう」


文句を言いながらサラリーマンズはもう誰も

おらず1人でいると何処からともなくチラシが降ってきた

ヒラヒラと舞い顔に張り付いたのでイライラしたようにビッチが握りしめた


「もおぉぉ、何なのよ」

チラシにはこう書かれていた

DivisionLand

清掃員大募集 誰でも大歓迎


「ワァオ、何コレ神からの采配(さいはい)かしら」


ビッチは意気揚々とチラシの地図にある採用試験場に向かう



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