第8話  明晰夢と相撲



「……ん?」


俺は突然目を覚ました……眼の前には見慣れない空間が広がっている。ここはどこなのだろう……


「……ん?」


ここが何処なのかは2秒で理解できた。なぜなら「ここは夢の中やでぇ!」と筆で書かれた看板が地面に突き刺さって居たからだ。


「夢の中……もしかしてあれか? ”明晰夢”というやつか? むかしナニカのテレビでやっていたのを見たことがある。実際は寝ているのに夢の中で意識を持って自在に動ける、というような奴だった気がする……」


俺は周りを見渡した。だが、周りには何も無く真っ白な世界が広がっている……


「明晰夢なんて初めてだな……なんか喉が乾いた気がする」


「「ボンッッ」」


大きな音と煙と共にペットボトルのお茶が宙から落ちてきた。というか夢でも喉は渇くらしい……


「おぉ、念じたら出てくるのか。さすが夢だな……」


俺はペットボトルの蓋を開けて、恐る恐る飲む。夢の中のお茶も現実と変わらない味で普通に美味しい……初めての体験ができて普通に嬉しいなぁ。


「なんでもできるのかぁ……明晰夢。 なんでも、か」


僕の頭に一瞬、いやらしい事がよぎった……!


「「ボンッッ」」 


目の前にはクラスS級美少女の平井胡桃ひらいくるみが立っていた……     





                 ◆




「……どうしたものか」 


一瞬想像しただけで、こうも簡単に平井胡桃を召喚できるとは思わなかった……

しかも、この夢の中の平井胡桃は勝手な行動をしないのだ。俺が頭で命令した行動だけを行う……つまり確変モードである。今ならなにをしても許される……ぐひ、ぐひひひ、ぐへへへッッ、おっといけねえ……夢の中とはいえ紳士で居ないとなぁ。


「なんでもできるのか……だったら……」


「「ボンッッッ」」


目の前に白峰紀伊葉が現れた……


「よぉぉぉおしッッッ!! 準備は整ったぞぉおおッッ!!俺の命令に従えぇぇええッッ!!二人で相撲をしろぉぉおおッッッ!!」


そう、相撲である。俺が一番見たいのはクラスのS級美少女と巨乳ギャルが行う相撲である。勿論、異論は認める……こんな状況で相撲なんておかしいだろう。だが。これは俺の明晰夢だ……誰にも邪魔させん!!




そして二人の相撲が始まった……!!その光景は実にシュールである……同級生の二人が本来なら絶対にしないであろう相撲をしているのだから!!両方が必死に相手を投げようとしている……とても芸術的である。


「ゴクリ……」


俺は思わず大粒のツバを飲み込む……こんな光景二度と見れないのだから、目に焼き付けないといけないだろうッッ!! 二人の体が擦れ、混じり合う……見ているこっちが熱くなってくる。


「「ドンッッ」」


白峰紀伊葉が平井胡桃を覆いかぶさるように倒した……!!巨大なおっぱ、が平井胡桃のおっぱ、と重なり見事なコラボレーションを奏でている!!俺が見たかったのはまさにこれである!明晰夢バンザイ!明晰夢バンザ――


「「ピピピピッッ、ピピピピッッ」」


嫌な音が耳に入ってきた……とても不快である。


「ピッ」


目覚ましを止めると、フィーバータイムはすっかり終わってしまっていた……がっかりである。あそこから俺が参戦してもっと熱い展開になる予定だったのに……



「「うぅぅう……もう一度、明晰夢よ!俺の元に来てくれぇええええええええええええッッッッッ!!!!!」」


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