第5話  僕の恋はケーキより甘い



「……胡桃さん、すいませんでした」


僕は放課後の帰り道に胡桃さんに謝った。


『本当に反省してるの……?』

「はい、心から」


僕は胡桃さんと二人っきりで帰るという喜びと反省の気持ちで複雑な感情だった。


『『!!』』


胡桃さんが急に立ち止まり、目を輝かせてこちらを見てくる……


「ど、どうしたの?胡桃さん……」


胡桃さんの目線の先を見ると、ケーキ屋さんがあった。


『スバ君』

「はい」

『スバ君』

「はい、?』

『スバ君??』

「入り、ますか……」


僕はケーキ屋さんに自ら入りたいと思ったので一緒に入った……




             ◆




『わぁぁあ〜〜〜っっっ!!美味しそ〜〜!!』


店内はオシャレな照明に照らされており、心地いいBGMが流れている……

そしてケーキ屋特有の甘い香りが店内に広がっていて、ケーキがより美味しそうに見える。これを ”ケーキ屋さんマジック” と名付けよう……ぼくが。


胡桃さんが無邪気な笑顔でガラス越しのケーキを眺めている……可愛い。


「え、高いね……このケーキ」

『当たり前じゃん!それだけの味って事だよ〜!』

「そ、そ〜だよね……」


ケーキが一つ1000円の世界線を僕は知らなかった。僕が買うことは無いだろうな、こんな高いケーキ。




――僕は1500円のケーキを3つ買っていた。え?別に悔いはない。当然の報いなのである……それに、胡桃さんの笑顔を見たら4500円なんて、レンタル彼女の料金みたいなもんだし。僕もケーキ普通に好きだし……


『本当にありがとう!スバ君また一緒に帰ろうね!!ほんじゃ、私ここで分かれ道だから、バイバイ!!』

「お、あ、うん!バイバイ!!」





「あれ?僕のケーキは何処いずこへ……?」




             ◆




『スバちゃん!ちょっとおつかい頼めるかな!』

「こんな夜におつかいって、母さんが行けばいいじゃん……」

『私がこんな夜に外にでたらナンパされて家に帰れないじゃないの!頼むわよぉ〜スバちゃんしかいないの〜〜!』

に頼んでよ、僕は今日疲れてるんだよぉ……」


萌歌もかとは現在中学2年生の妹のことである。まぁそれなりに仲がいいとは思っている……多分。


『萌歌はもう寝ちゃったわよ!』

「いや、まだ8時だぞッッ!?はやすぎじゃね!でも絶対行かないけどね!?」

『ほらほら、お小遣い上げるから』

「行ってきます」


僕は母さんの喜ぶ顔がみたいので良心でおつかいに出た……




僕はスーパーの精肉売り場で良いミンチを探している。まぁ、どれも一緒なのだが……


『あれぇ!?スバ君じゃ〜ん!あっ、”スバ君”って言っちゃったぁ〜』


最悪の状況である……同級生で妙に絡んでくる白峰紀伊葉しらみねきいはとスーパーで出くわしたのだ。嫌な汗をかいている……


『えぇ〜?スバ君ひとりでお買い物〜〜?何買ってんの〜?ついでに ”私” も買っちゃう〜?なんちゃってねぇ〜!』

「ば、馬鹿じゃないのっ!?急に変なこと言わないでくれるッッ!?」


(すいません、何円で買えるんですかッッ!!)



『冗談じゃ〜ん!まぁ、スバ君、なら……”無料”でいいけど、ね?』

「い、いらないよぉっ!」


(買わせてくださいぃぃぃいッッッ!!)


『えぇ……ひどいなぁ、じゃあ、また家に遊びに行っても良い??』

「いや、ダメでしょ!!ってかなんでそーなるんだよッッ!!」

『ま、いっか!また明日ね、バイバイ スバ君!!』

「ば、バイバイ 紀伊葉ちゃん……?」




           ◆




「「バフッッ」」


僕は勢いよくソファに座り込んだ……


「はぁ……くそ疲れたなぁ、今日……」



僕はスーパーで買った、半額のケーキを食べた。



「甘っ」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る