第14話 偽りの確信



 病院を出て電話を掛ける。相手は当然彼女だ。


 ・・・・電話には出ない。


 一応、LIMEで要件だけ伝えておく。


「話がある。昨日のことだ。あの原医師について話がある。また、連絡して欲しい。」


 画面を数分眺めていたが既読はつかないままだ。


 僕は先程の原医師との話で確信をした。彼は────黒だ。


 僕の話に正直に答えてくれたとは思う。でも、科学の科学の医療の発展のために犠牲が必要だと言っていた。彼の言い分ではたまになら許されるという感じで、そして自分はそんなこと実際にはしないといった。素晴らしい言葉だと思う。その考えも・・・・でも、だったら、だったら


(この結果はどうなんですか?)


 僕は怒っているのだろう。抱いたのは裏切りか義憤かそれはわからない。


 スマホをスライドさせる。開くのは当然SWだ。


 画面を見る。そこには、先日の新機能粛清チェッカーの原真人の結果が表示されている。




 原真人の粛清価値は70万円です。ぜひ粛清し、世界を良くしましょう。




 今までの奴らとは比べものにならない金額だ。ホントにこの報酬の基準はわからないが、この瞬間、彼が泥であったことが分かった。


 おそらく、ユキの件以外にも医者という立場を利用し、医学の発展のためだと言って・・・


 どれだけ、多くの人が犠牲になったのか・・・・きっと、一人や二人じゃない。泥の分際で人の命を、世界を汚すなんて・・・・許せない。


 だから僕が────粛清する!




 ───SWを起動し、あの男の名前を入力する。時間指定は・・・必要だな。奴は病院にいる。そんなところで脳梗塞を起こしても、あの女、黒田の二の舞になってしまう。だから、奴が病院を出る時間が知りたかった。23時に設定し完了の文字を押す。この時が一番────


「ピコーン」


 LIMEのメッセージが来た。ユキからだ・・・


「連絡ありがと。ちょうど、私も話があったから。できれば、早めがいいんだけどいつ空いてる?」


 画面を見て、すこし考える。ユキと一緒にあの男の最期を見ても良いが・・・


 いや、それは難しいな。なんせ、深夜だ。23時に呼び出すのは難しい。それに、あいつがその時間必ずしも自宅にいるとも限らないんだ。


「今日だとすると、バイトが終わった後、21時ごろになるかな。」


 そう返事を送る。


「ピコーン。ピコーン。」


 すぐに返事が来た。返信早すぎだろ。「暇か?」と言いたくなる。というか声に出していたらしい。周りの視線が痛い。


「っと、教授の口癖が感染ったか?」


 気をつけなければと気を引き締める。


 画面を見ると。


「それでも、構わないわ。21時にこの間のファミレスで待っていて。」


 との文面が・・・


 まさか、ホントに夜に連れ出せるとはな・・・


 もしかすると、ユキに原の最期を拝ませてやれるかもという期待が湧き出てくる。


(しかし、こんな状況になるなら、少し早まったことをしたな。)


 ────既に賽は投げられていた。

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