第1話  はじまりの日




 長いというか濃い一日だった気がする。


 そう振り返ってベッドに倒れ込む。


 ───社会の闇を知った。


 いろいろあったけど、あの面接の裏側を知ったことが一番の衝撃だった。


 そして、今日一番の衝撃はこのアプリの存在。


 アプリの名前はSaving World。SWっていうアイコンで僕のスマホに居続けている。


 このアプリ普通のアプリじゃない。


 ネットで調べても該当アプリはなく、配信サイトにも同じアプリは存在していなかった。


 アプリを開いてみると『使い方』という文章がある。


 それにはこんなことが書かれていた。


 Saving Worldの説明


 このアプリは名前の通り、世界を救うために創られたアプリです。


 天斗さんは救世主に選定されました。このアプリの力で世界を救い『悪』をなくしていきましょう。これは、そのためのアプリです。


 粛清に関する説明は以下の通りです。


 1.粛清対象の名前を入力する。


 2.粛清にはその対象者と執行者(天斗さん)との縁が必要です。


 3.以上の2項が粛清に必要な条件です。


 4.粛清ランクが上がることで粛清方法が広がります。とにかく、粛清をしていきましょう。


 5.粛清報酬は粛清対象によって変化します。◯◯にとっての驚異を排除しましょう。


 6.一日に粛清できる人数に限りはありません。どんどん、世界を良くしましょう。


 7.執行者以外が入力した名前は無効となり、入力者が粛清されます。


 8.現在行える粛清方法は脳梗塞です。ランクアップに応じて追加、程度をつけることができます。


 9.支援アイテムを購入することができます。リストを御覧ください。


 10.このアプリの存在は執行者の意識がある時にしか思い出す、操作することができません。


 これ以降は粛清ランクによって開放されます。




 ・・・・とまあこんな感じだ。


 この何度も出てくる「粛清」って単語、他の文章との文脈を考えると・・・


(やっぱ殺人って意味だよな。要は悪人を殺害して、世界を救えってことか。)


 興味がないといえば、嘘になる。だからといって実行するかといえば、気が引ける。そもそも、悪人を排除して世界が救えるのか。いや、少なくとも救える人はいるか。例えば、殺人犯を始末すれば、被害者は救える・・・か。


 昨夜聞いたあの話が蘇る。僕は被害者・・・だよな。


「・・・・・・・・・」


 ────────だったら、僕は


(試しに、試しに打ってみるだけだ。そもそも、これがホントかどうかわからないしな)


『粛清対象者を入力してください。』


 ─矢不一止─


 ・・・・ふん。


「なんだ、何にも起こらないじゃないか。やっぱガセネタアプリだったか。ハハハそりゃそうだよな。ハハハ」


 そう笑って、僕は意識を手放した。


 ここに、長い長い夜が終わったのだ。



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