Saving World
@zerozero114
第0話 救世主の生まれた日
| ──夢を見ていた。それは・・・・・・・だったように思う。とにかく長い夢で非現実的で空想的?だった気がする・・・ ・・悲しい、嬉しい、愉しい、苦しい。
きっと、そんなこの世でありふれた言葉では形容できないナニかに触れたそう感じたんだ──────
そして一つ、確信していることもある。それは───
「おーい、
僕はそんな聞き覚えのありすぎる声で顔を上げた。
「なんだ、
こいつは
「なんで、起こした?あれか、君の趣味は人が気持ち良く昼寝をしているときに邪魔をすることなのか?」
彼にまったく非が無いと分かっているが、睡眠を邪魔されたとなるといい気がしない。着ていた紺色のジャケットで顔を拭う。あれ?こんな服だったけ・・・・・
「わるい、わるい。でも、あんまり気持ちよさそうに寝てるようには見えなかったけどな~。
そう言って、僕の後ろに座っているメガネ女子に話題を振った。
「そうね~。うん。新治を庇う意図は一切これっぽちも無いんだけど。気持ち良く寝ていたという表現は誤りだと思う。そう、どちらかと言えば《うなされていた》、と言ったほうが適切であるように傍から見てると感じたかな」
彼女らしい、的確で落ち着いた口調。
「む?」
まあ、瑞希が言うならそうなのかもしれない。僕だって夢の内容なんて覚えちゃいないし、ここにおいてもうどうでもいいんだが────
「んで、どんな夢だった?悲しい系?グロかった?もしかしてエロ系?」
茶化すように言う。
「なんで、君にそんなこと言わなきゃいけないんだよ。君には二度と夢の内容は教えないことに決めた」
「お、二度とってことは一度は教えてくれるってことか?」
「ポジティブ過ぎるだろその発言。」
まあ、そんなやつだからこそ、僕たちは仲が良いわけなんだが・・・
「ちょっと、そろそろ、ガイダンス始まるよ」
そんな、瑞希の一言で僕たちは現実を直視するハメになった。
「ふん、ガイダンスっても単なる就職活動報告会だろ。」新治が口にする。合わせるように僕も「お互いの苦労を労い、これからに向けて頑張ろうっていう体で行われる、マウント大会だからね。」
「そうそう、意味なんかネーよな」などと批評家気取りのこの男たち。こういうところで気が合うのだろう。
「ま、意味なんてないよネ。だって、二人共就活終わってないもんネ~~」
「「・・・・・」」
そんなわけで、二人の男にとって最も苦痛で屈辱的なたのしいたのしいガイダンスの幕開けになったのである。
「───── 地獄だった」
帰り道にそんなことをポツリとつぶやいていた。
「僕だってあの面接がうまくいっていたら・・」うつむくとそんなボヤキが出てしまう。
いや、過去を振り返っても仕方がない。切り替えて次頑張るって決めたじゃないか。
「バイトの時間だな」
今日は金曜日忙しくなりそうだっと。自転車に乗ってバイト先居酒屋「楽」へと急ぐ。
「「ありがとうございました」」
時計の針は9を指していた。
「やっと、落ち着いたな。」ふとそんな言葉がもれてしまうほど今日は忙しかったのだ。
「おし、とりあえず、さばき終えたな。天斗君4番の部屋片付けといてくれ」
という店長の楽田さんの指示のもと片付けをしていた。
残飯をまとめて、汚れたテーブルを拭いていく。単純作業である。
「─────────」「───────」「───────」
隣の部屋からか。ずいぶんと大声で騒いでるみたいだな。確か、三名での予約で、男性二人、女性一人だったかな。そんなことを考えていると、
「だから、この前の面接で来たやつが、」
神経が一本の線になるように感じた。
──この粘りの効いた声 間違いなく、いや間違えようがないくらい耳にこびり付いている声。
その声の主は、俺が受けた面接先の面接官の一人 矢不一止 《やぶいちと》
僕は彼らの話を盗み聞きしていた。というのも、採用面接の話をしていたらしかったし、もしかしたら、コツか何かをうっかり話すのではないかと期待したからだ。しかし、その期待は裏切られることになる。
「この間の~面接で矢不さん結構強いアタリした学生いたじゃないですか~あれ、何だったんですか?」
(この人が強い当たりかたをした学生?まさか、僕のことか?)
「そんあ、やつおったか?」
「いましたよ、矢不部長。ほら、天斗君ですよ。」「ぶちょ~彼にだけ、あんな厳しい態度とってたんで結構話題になってんですよ~」
「あは~アイツか~」「彼、一次の筆記試験はトップの成績だったんで、不思議に思ってたんですよ」
(僕のことじゃないか、どうやら僕は筆記試験はトップだったみたいだな。でも、)
「でも~確か、うちの試験って一次試験と二次試験の配点は別々で、二次になったら一次は関係ないんじゃなかったんじゃないでしたけか?」
「そうね、でも、慣例的に筆記試験トップの連中は大体取ることが決まってるの。」
(ええ~、そうなのか?大分酔っ払ってるみたいだけど、この人たちこんな大事な話をこんな居酒屋でしちゃって大丈夫か?だって、仮にも)
「ええ~そうなんすか~はじめて聞きました~」
「こんな裏事情おおやけになんかできないでしょ。仮にも公務員試験なんだから。」
(・・・・・・)
「でも、だったらどうして彼落としちゃったんです?」
「それを、あなた聞こうとしてたんじゃなかったの?」
「ぐひゃひゃひゃ、そうでしたそうでした、それで、どうしてなんですか、ぶちょ~」
「そうやな~まあ、一言でいえば ──────単純に気にくわんかった。それだけや。」
(───は?なんて?)
「嫌なやつやと思ったから、落とそうと思った。だから、わざとキツくあたって、ボロ出させて、落とすように仕向けたんや。カッカカカ」
「ええ、機会やからなんで、オレが人事なんてめんどい部署でずっと働いとるか教えたる」
「未来あふれる若者を採用し、この町を良くしていくためですよね笑」
「アホ、それは建前やろがい。オレが人事やるんわ、人の人生狂わせられるからや。大卒で若く未来あるやつの人生設計をメチャクチャに狂わせられる。こんな愉しいことないで。この試験受かるためにどんだけ勉強したんやろな、どんな想いで頑張ってきたんやろな、どんな想いでここまできたんやろな。そういう頑張りを踏みにじるのが大好きやねん。たまらんねん。
ただな、不満もある。それは、落ちたときの表情見れへんことやねん。どんな顔しとるんやろな、想像はするけどやっぱ生でみたいわ。だから、来年からはその場で不合格ざんね~んまたらいね~んって言うてやりたいわ。そしたら、いちいち通知なんかせんでもええし、事務も楽になる。一石二鳥やな。」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「部長それは─────す、す、す、素晴らしいお考えですよ。そっか、この地味な仕事にそんな、そんな愉しみ方があったなんて、ああ~もっと早く知りたかったですよ。あ、もしかして、黒田課長もこんな愉しみかたをされてたんですか?」
「フフ、私の場合はもっと趣向が違うわよ。聞きたい?」
「はい。ぜひ、聞きたいです。いや、聞かせてください」
「ええ、良いわよ。それは─────」
(・・・・・何を言っているんだこの人達は)
(ふざけてる。落としたいから落とした?人生をメチャクチャにしたい?落ちたときの顔がみたい?ふざけ、ふざけるなよコイツら。僕が一体どんな想いで過ごしたと、ここまで、ここまで頑張ってきたと思っているんだ。ああ?)
(◯したい。◯したい。◯ろしたい。殺し)
「あのー、◯先輩次休憩どうぞです。」
ふと、後ろから僕を呼ぶ声がした。
「っああ、
「あ、はい。あまりにも遅いので、しん、あ、いや店長が呼びにいけって。」
「ああ、ごめん、中々落ちそうにない、汚れを見つけちゃって」
「そうでしたか。じゃあ、あとは私が・・・」
「いや、大丈夫。もう落ちたから。食器をまとめたからそっちを持っていってくれるかな?僕はこっちの汚物を持っていってから休憩にさせてもらうよ。」
「・・わかりました。お先でした。」
(危ないところだった。もし、彼女が話しかけてくれなかったらどんな行動をしていたか。)
休憩時間に先程の会話を思い返す。
(────やっぱり、許せないよな。)思い返すだけで、腸が煮えくり返りそうになる。
(でも、追求しようにも酒の席のふざけ話だと言われたら、どうしようもない。)
(実際、訴えたところでお酒が入って覚えていませんとか酒の席の話ですというに違いない、そして、盗み聞きしていたこっちを攻めるだろう。やつらは、そういう人間だ。)
『ピコーン』
どうしようかと考えていたところに着信が来た。新司からだ。
『おい、天斗、明日の卒論に関する資料のレポートできたか?できてるよな。よかったら、参考にさせてくれ。』
「・・・すっかり忘れてた。」「というか、資料を研究室においたままにしてたんだった。ヤベー今から行くのか。」
ここから、大学まで自転車で15分そこから、家に帰るとなるとさらに10分かかる。
「徹夜かなあ~」
試験勉強で徹夜には慣れているとはいえ、今日はそんな気分ではなかった。
「とりあえず、新司には断っておかないとな」
『よくないので、参考にはさせられません』
「っとこれでよし。さて、そろそろ休憩時間も終わるし戻ると・・するか」
「お先でした。」
「ああ、天斗君。もうお客さん全員帰ったから、閉店準備に取り掛かってくれるか?」
少し安心した。
「わかりました。じゃあ、閉店準備します。」
「上がらせてもらいます。お疲れ様でした。」
そういって僕は店を出る。
「ふう~なんとか終わった。金石さんも手際良くなってたし、おかげで早く上がることができた。」
そういって、自転車を飛ばす。目的地は夜の学校だ。
「夜の学校ってなんか響きがいかがわしいな」
なんて、新司みたいだと思って、少し嫌になった。そんなことを考えながら、大学に入っていった。
「ん?」
ふと、今キャンパスに入っていった人が瑞希に見えた。
「そんなわけないよな。」
あいつは、僕たちのような変わり者と付き合っている割には、常識人だ。学内成績優秀者に選ばれている、文字通りの優等生である。
「まあ、良いや。もし、あいつなら中で会うかもしれないし。」
そういって、キャンパス内を進んでいく。大学内にまだ、残っている教授もいるのか電気はついているし、正直ドキドキの気持ちはすっかり萎えてしまった。
「あった」研究室で目当てのものを手に入れることができた。
帰ろうとした時不意に何かが教室に入っていくのが見えた。
「瑞希か?」
夜の学校に対する好奇心が戻ってくるのを感じた。
「行ってみるか」
影の後を追う。すると、昼間、ガイダンスがあった教室に来てしまった。この教室だけは大学内で唯一配置の都合上中でなにをしているのかわからない。
「なんだここか。忘れ物か何かかな?」
驚かせるために入ってみようという気持ちとさっさと帰りたいという気持ちが天秤にかかっている。
「入ってみるか。」
せっかくわざわざここまで来たのだからという気持ちが強かった。
「失礼しま~す」
誰かいるだろうと思って、ドアを開ける。
すると───────誰もいなかったのである。
「は?」
そこ暗く何もない闇が広がっていた。
────どういうことだ。確かに人影、いや何かが入っていったはずだ。
恐る恐る教室に入っていく。電気が点きっぱなしなのが逆に気味が悪い。ついさっきまで誰かがここにいたということに他ならない。何か何かあったのか?ここで・・・
緊張が高まる、心臓が早くなるのを感じる。
「ガシャン」「ビービー」
「!!!」部屋の電気が全て消える。雷でブレーカーが落ちたのか。
まったく、驚かせやがって。
スマホを見る。時刻はちょうど0時になったばかりだった。
うん?なんだ、画面が暗転して・・・メール?
題名が「おめでとう!救世主に選ばれました!」なんとも胡散臭いメールだが、
とりあえず、メールを開いてみるか?いや、フィッシングメールだろ。削除削除っと
「っっ!」勝手にアプリがインストールされてる。
そう、これが全ての始まりだったんだ。このアプリSaving World との出逢いが・・・・
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