W Ⅰ-Ep1−Feather 12 ଓ 会合 〜meeting of revelation〜
W Ⅰ-Ep1−Feather 12 ―The first part ―
その後、エリンシェはグレイムに連れられて、彼の私室へ案内された。ゼルグとの戦いの場所にいたアリィーシュやジェイト、あの場に駆けつけたガイセル、ミリア、カルドも一緒だった。
私室に着くなり、グレイムは杖を振りながら、部屋の隅々まで歩き回っていた。そして、ガイセルはそんな彼を気にしながら、お茶を準備していた。
案内されたソファーに腰掛けながら、エリンシェもそんなグレイムをじっと見つめていた。……先程感じた〝気〟はまだ、彼の側に在る。一体何者なのだろうか?
「……ねぇ、エリン。 その……女のひと、誰?」
ふと、隣に座るミリアが遠慮がちに、エリンシェの近くで佇んでいたアリィーシュを見ながら、そんな質問を小声でする。言われて初めて、エリンシェははっと息を呑んだ。……うっかりしていた。アリィーシュのことを知っているのはガイセルだけで、ジェイト、ミリア、カルドには逢ったことすらなかったのだ。
〝アリィーシュよ。 テレスファイラの守護神〟
エリンシェが言葉に詰まっていると、アリィーシュがミリア達を振り返った。そして、微笑みながら、自己紹介をする。
「えっ、神様なの?」
面喰らったミリアが、カルドと顔を見合わせている。ふたりに比べて、ゼルグとの戦いに首を突っ込んでいるジェイトは、納得している様子だった。
アリィーシュが名乗ったことをきっかけに、エリンシェはジェイト、ミリア、カルドに事情を説明した。
――飛行学での一件でのこと。三人にはまだ詳しく話していなかったので、より詳しく説明をした。あの時、エリンシェは【闇】の中を彷徨い、そこから脱出するために、アリィーシュが手助けしてくれたこと。その後、意識を取り戻した時に、アリィーシュに初めて逢ったこと。そして、アリィーシュにより、エリンシェが「予言」を受けて誕生したことを教えられたこと。また、テレスファイラと天界の関係も教わったことも説明した。最後には、エリンシェが大きな〝力〟を持つことにより、邪神――ゼルグから狙われていることを言及した。それから、エリンシェは戦う決意をしたことも三人に話した。
「なんで、そんな大事なことを言わないかな、エリンシェは」
説明を聞くなり、ミリアが怒ったようにそう切り出した。エリンシェは思わず飛び上がり、黙って彼女の話に聞き入る。
「昔から、いつもそうなんだから。 ――何かあるとすぐに独りで抱えようとして、誰かを頼ったりしないんだから。 そういう時、いつも『あたしがいるから』って言って来たでしょ、忘れたの?」
エリンシェが小さく「でも……」とこぼすと、すぐさまミリアから反論される。
「でも、じゃない! そりゃ、あたし――いや、あたしたち、戦えないかもしれないけど……。 エリンシェの『力』にはなりたいんだよ」
「ミリアの言う通りだ。 〝力〟があったって、エリンシェは俺達の友達なんだ」
「――だからせめて、側にはいたいんだ」
ミリアの反論に、カルドとジェイトが続く。
三人の気持ちが嬉しく思えて、エリンシェは何も言い返せなくなった。
「……ありがとう。 なるべく、独りで抱え込まないよう、気を付けるね。 できるだけ、何かあったら相談もする」
そう話しながら、エリンシェは一層、三人を守りたいというおもいがより強くなった気がしていた。
「――よく言った。 三人とも、エリンを頼んだよ」
そこに、お茶を用意し終えたガイセルが割って入った。ジェイトがまじまじとガイセルを見つめて、ぽつりと質問する。
「先生知ってたの?」
ガイセルが「――まあね」とうなずきながら、席に着く。……それを聞いたジェイトは、どこか複雑そうな表情を浮かべた。
「だけど、僕だけじゃどうにもならないこともあるからね。 ……それに、君たちの方がエリンにとっては大切な存在だと思うから」
なんてことない顔をして、ガイセルがそんなことを言ってのける。すぐさまエリンシェが否定しようとするも、グレイムがガイセルの隣に座ろうとやって来たので、その機会を逃してしまう。ガイセルの横顔を見つめながら、エリンシェは胸が締め付けられそうになった。
「……さてと。 ――どこから話そうか?」
席に着くなり、グレイムがそう切り出す。最初に、声を上げたのはジェイトだった。
「あの、エリンシェに付きまとっていた彼は……?」
――ジェイトが聞いたのはヴィルドのことだった。ヴィルドからエリンシェを二度かばっていたジェイトだったが、彼自身は名前を聞いたことはなかったのだ。それより、エリンシェは彼の身に何が起こっているのか、気になっていた。
「彼の名前はヴィルド・バルクス。 元々、学舎での生活に積極的ではなかったようだが……。 どういう
残念そうに、グレイムが答える。彼の様子を見ていたアリィーシュが難しい顔を浮かべた。アリィーシュなら、ヴィルドに何があったのかを答えられると踏んで、エリンシェは「ねぇ、アリィ」と声を掛ける。
「ヴィルドには一体、何があったの? 途中から姿が見えなくなって、ゼルグが現れたじゃない? あれも何か関係があるの?」
アリィーシュはうなずくと、難しい顔を浮かべたまま、説明をした。
〝ゼルグはヴィルドと何か取り引きをして、身体を利用することを彼に承諾させたの。 ――邪神はヒトと契約することで、実体になることができるの。 そして、何でも最後には、ヒトの身体を乗っ取ることができるとか……。 それに、この方法を使えば【力】も増幅できるらしいの。 おまけに、ヴィルドは【邪】の心もいくらか持っていたようだし、それがよりゼルグを強くしているみたいで、余計たちが悪い〟
「そのヴィルドってヤツは、エリンに
眉間にしわを寄せ、ミリアが言い放つ。アリィーシュも否定はできないようで、〝そうかもしれない〟と相づちをうつ。
「それほど【力】が強いとなると……」
ぽつりとつぶやいて、グレイムが唸りながら、何やら考え始める。時々、小さな声で「問題は
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